表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/27

episode7―hope―

「直樹くん、今日はちょっと長くなるかもしれないですけどいいですか?」


「ああ、別に構わないけど」


いつも通り階段を上るが、いつも通りでないこともある。

まぁ、教室が一つ吹き飛んだ校舎もそうだけど、沙耶の様子がおかしい。

いつも通り振舞っているつもりだろうが、顔色は悪いし、足取りが不安定だった。


「じゃあ始めます」


光りだす沙耶の手。


ああ、やっぱ綺麗だな―――


でも……


「なぁ」


「はい?」


「体調悪いんじゃないか?」


「……やっぱり分かります?」


沙耶は苦笑いしながらこちらを向く。

その顔はやっぱり青白く、元気のないものだった。


「今日は休んだらどうだ?」


「駄目ですよー。もう悠長なことは言ってられなくなってきましたから」


まぁ、この校舎の一件もあるが……


「でも、沙耶が倒れたら意味ないだろう?」


「……。……そう、ですね。少し休みます、か……っ……ぁ」


魔法を止めた沙耶は急にガクン、と崩れ落ちた。


「沙耶っ!?」


※※※


「ぅ……」


「気がついたか?」


「……直樹くん?ここは……?」


沙耶は弱々しく上体を持ち上げた。


「ここは保健室だ」


沙耶が倒れた後、そのままにしておくわけにもいかないので保健室に担いできた。

……あれだな。

女子を担ぐときは、重さに耐えるより、理性を保つほうが何倍も辛い。


「すみません……。いつも手伝ってもらってるのに……」


「何を今更」


というか、飯までたかりに来てるだろ。


「もう、直樹くんの力を借りても無理かも知れません……」


「おいおい、いつもの元気はどうした?」


こんな弱気な沙耶は初めて見た。

表情を伺うも、疲れているだけではないのがよく分かった。


「もう……」


沙耶は、下を向いて掛け布団を握りしめている。

その掛け布団を小さな雫が何回も何回も濡らしていた。


「……。……俺に何かできることないか?」


「!?」


もう、ただ見てるのはきつい。

できることは本当に小さいことかも知れないけど。


「直樹くん……」


「その魔法はできないけど、それ以外ならできるかも知れないだろ?」


「じゃあ、関係ないお願いですけど……」


沙耶は涙を拭って、真っ直ぐと俺を見る。


「ずっと、私のそばにいてくれますか?」


「……」


「私を……好きになってくれますか?」


「ああ、そういうことか」


「えっ?」


「簡単すぎるんだよ、お前のお願いは」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ