episode6―parallel―
いつも通りの通学だと思っていた。
「おいおい……」
学校につくとその異変はすぐにわかった。
校舎の一部がまるで爆撃を受けたように削り取られていた。
「一教室丸々吹き飛んでんじゃねぇか……」
生徒はもちろん、先生等も警察を待っている状況だった。
幸い、登校前に起こったらしいので、けが人はいないみたいだ。
「直樹くん。すぐに魔法を使います」
「……?もしかして深刻な状況?」
「ですね。今は人目があるので、丘に行きましょう」
「お、おお」
※※※
丘の頂上。
沙耶はすぐさまに魔法を行使する。
「あれって……」
「たぶん魔法です」
「あんな魔法使えるやついるのか?」
「んー、詳しく言うとこちらに召喚された事象、ですかね」
「……わかんないんだが」
「例えばですね、世界は分岐するとか、異世界とか、そんな話は聞いたことはありますか?」
「ああ、漫画とかゲームでよく使われるやつだろ?」
「私の魔法は、その世界の混在を抑制してるんですよ。まあ、異世界は言い過ぎましたけど」
「は?」
「実際に世界というものは数多く存在しています。もしこうだったら、こうしていたらっていう世界が。そしてその世界が混ざらないようにしているのが私です」
「一気にすごい話になったな……」
この世界以外にも数多くの分岐世界がある。
そして、その多世界を混ざらないようにしているのが沙耶ってことか。
「確かに、いきなり言われると信じれない話ですよね」
魔法を終え、沙耶が俺の横に座る。
「今日はちょっと長かったな」
「はい、頑張りました!!」
声は元気だ。
見るからに疲れてるけど。
「で、話の続きなんですが、この世界、おかしいとは思いませんか?」
「い、いや、おかしいって何が?」
「魔法……。今じゃ普通にみんな使ってますが、おかしいとは思いませんか?」
「おかしい……?普通じゃないのか?」
「そもそも魔法が使われ始めたのは20年くらい前からです。なぜ魔法というものが存在し始めたのか」
確かに、魔法の歴史はかなり浅い。
俺の父さん、母さんが若い時に発見された物らしいけど。
「この、魔法という物もまた、世界が混在してこちら側に来てしまった代物なんです」
「は!?ということは、もともとこの世界に魔法なんて存在しないのか!?」
「そうです。母の時代に魔法というものがこちらの世界に混ざったんです」
「なんか壮大なことに巻き込まれてるような気が……」
「はい。巻き込んでます」
即答ですか。
沙耶はにっこりとこっちを見てる。
今更断らないよねと、目で訴えられてるようだ。
「まぁ暇だし、いいけどさ……」
「ありがとうございますっ」
まったく、未だに何者かよくわからんよ。
新聞に出すなら、一人の少女が世界を救う!!みたいな感じだろ。
ほとんどの人は信じてくれないだろうけど。
「直樹くん……」
「ん?」
「肩借りますね」
「は?」
こてっ。
俺の肩に沙耶の頭が乗る。
「お、おい」
「今日、は……なんだか疲れまし……た」
寝ちまった。
なんか死亡フラグみたいな台詞だな、おい。
「あ!!学校!!」
沙耶の寝顔を見る。
ぐっすりっすね……
「……サボろ」