episode4―morning―
近頃新しいウィルスが発見されたとか嫌なニュースが飛び交っている。
そんなニュースをリアルタイムで見ている俺。
どんなに科学が進歩しても所詮人間は人間なんだと実感をしていた矢先に、はぁ、もうちょっと頑張れば防げたかなぁ、なんて言いやがる少女が一人。
「お前、頑張ればこのウィルスなんとかできたのか…?」
「まぁ、無理ではないですね」
簡単に言ってくれる。
「あの魔法でか?」
「ですねー」
沙耶は軽くそう言うとおかずを口に運ぶ。
「で、今なにしてる」
「ご飯食べてます」
「そうじゃなくて!!なんで俺の部屋にきてんだよ!!」
「鍵開いてましたから」
答えになってない。
「あのなぁ、先に学校行って待ってればいいだろ」
「ご飯まだだったんですよ。あ、このエビフライひねくれてますねー」
曲がっているエビフライを箸でつかみ、眺める沙耶。
この方は、本当にコミュニティを拒絶していた人なんでしょうか。
何?このずうずうしさ。
「そういや沙耶の家は?」
「ごく普通の一般家庭ですよ。神野の血とかそういうのを除けば」
「家系以外は普通か…」
「それが一番やっかいなんですけどね」
親から子へと引き継がれる罪の連鎖。
沙耶は皮肉そうにそう言った。
「…」
俺は話を流したように見せながら味噌汁をすする。
「そういえば何でこんなに料理できるんですか?」
「いや、本とか見ながら作ったら覚えたけど…」
「…」
「何だその無言は!!似合わないってか!?」
「い、いやそんなことはっ」
沙耶は無理に誤魔化すがもう遅い。
「いいんだ、もう慣れてるから…」
調理実習のたび女子はそんな反応をする。
意外だねーとか、似合わないーとか。
知ったことかバカヤロー。
「ん?」
沙耶を見るとベランダを覗こうとしていた。
「ちょっ、待てっ!!」
「…猫、ですか?」
俺のベランダの隅に猫がちょこんと座っている。
「………管理人さんには黙っててくれ…」