episode3―blood―
翌日、沙耶が魔法を使うそうなので屋上にやってきた。
結構頻繁にするらしい。
「で、実際はどうすればいいわけ?」
「魔法を使うとき、近くにいてくれるだけでいいですよ」
「それだけ?」
なんかあっけない。
「俺、意味あんのか?」
「はい。ありますよ」
「そーすかー」
うん、意味がわからない。
沙耶は手をかざしはじめる。
ほんとに俺は意味ないんじゃないか?
「今から10メートル以上離れないでくださいね」
「10メートル?」
「はい。それくらいが限界ですね」
「まあここらへんにいればいいんだよな?」
俺はその場に座り込む。
「じゃあ少し待っててくださいね」
――
沙耶は魔法を発動させた。
また眩しい光が散り出す。
「何回見てもすごいな…」
「今見れるのは私と直樹くんだけですよ」
「はは、独占だなこりゃ…」
※※※※※※※※
「おつかれ」
「ありがとうございます」
俺は買ってきたジュースを投げて渡す。
「で、俺はあそこにいて意味あるの?」
「直球ですね…」
父親はちょっと奥手なんだけどな。
「まぁ簡単に言うなら私の魔法にブーストをかけているんですよ」
「ブースト?」
「はい。出力を上げている、って言ったほうが簡単でしょうか?」
「俺なんかで大丈夫なのか?魔法あんまり得意じゃないぞ」
「いえ、あなたの体質ですよ」
「体質?」
体質といわれてもあんまり実感はない。
どこを検査しても普通の人と同じだし、学力・身体能力は並。
平凡すぎる…
「直樹くんのお父さんとお母さんの名前教えてくれますか?」
「父さんが優樹で母さんが美緒」
「姓は?」
「父親のほうだけど…」
「母方は?」
「神野…だっけかな…」
「やっぱりですね…」
沙耶は回答を受けると何かを考え込むように口に手を当てる。
「…なんか関係あったりするのか?」
「はい。まずはですね…、かなり離れていますが私とあなたは少し血が繋がってますね」
「は!?」
「いや、かなり遠いんで親戚とも全然いえないですよ。心配しないでください」
「そうか…」
つか心配ってなんの心配だよ…
「おそらく母親の方が神野の遠い家系だったんだと思います」
「で、その血を引いている人間しか手伝えないと、そういうわけだな」
「そのとおりです」
俺の母さんがねぇ。
あの年中バカップル夫婦にそんな秘密があったとは…
「直樹くんのお父さんとお母さんも何か辛い経験があったかもしれませんね」
まぁだからこそのバカップルか。