episode2―wish―
うむ。
緊張する。
女の子に誘われるなんて今まであっただろうか。
未来は……
あ、あいつは昔からの腐れ縁ってことで例外にしておこう。
まぁ教室に戻ってきたはいいけども、声を掛けられるまでがドキドキしてたまらない。
おぼつかない手つきで鞄の道具を確認する。
「直樹くんっ」
「!?」
沙耶が声をかけてきた。
名前を呼んできたのにもびっくりしたけど、まさか教室でこんな大きな声で話しかけてくるとは。
実際に他のみんなは、
「神野が楽しそうなの初めてみた…」とか、
「あの2人ってどんな関係?」とか話している。
ま、何言われたって関係ないけどね。
「じゃあ行きますか♪」
沙耶が言う。
「お、おう」
※※※
「じゃあここらへんでいいかなぁ……」
「?」
俺が沙耶に連れられてきた場所は花畑。一面きれいな黄と緑が広がっている。
「ここ……」
「はい、私のお気に入りの場所です♪」
いや知らないけど。
でも沙耶はとても満足そうに話してくる。
「初めてです…。この場所に他の人連れて来れたの……」
「……」
「あの……、お願いがあります」
急に改まった態度になる。
おそらく、その頼み事が、俺を呼んだ理由なんだろう。
「お願い??」
「はい。……あの、これから先、私の近くにいてくれませんか……?」
「……はぁ!?」
今なんて言った?
これってあれか?
巷でよく言う告るってやつか!?
しかも俺!!?
ありえねぇぇええ!!!!!
「あ、今のは告白じゃないですよ」
「……やっぱり?」
そりゃそんな甘い話あるわけない。
でも、あんな頬赤くして言われたら勘違いしちまうよ。
「で、詳しくはどういったご用件で?」
「率直に言うと、私の仕事を手伝って欲しいんです」
「仕事?」
おぉ…
一気にリアルな相談になってきたな。
「はい。さっき…私、屋上で魔法を使ってましたよね」
「あぁ、あの光ってたやつだろ?」
「………やっぱり見えたんですね……」
沙耶は嬉しいのか悲しいのか、複雑そうな顔を見せた。
「実は……」
※※※
それから20分くらい話を聞かされたが、まとめると次のようになった。
まず、何をすればいいのかわからないけど、あの魔法の手伝いをする。
あれは、沙耶しかできないものらしく、手伝うことができる人間も決まっているらしい。
なので、できるだけそばにいるようにしたいとのことだった。