episode1―light―
「は?」
突拍子もない……
人に触っただけで死ぬわけないだろう…。
「ま、俺もそんなん信じないけどねぇ」
「……そうだよな」
ぶっきらぼうな賢の言葉が俺を安心させる。
だけど教室は嫌な雰囲気のままだ。
彼女は席を指定され、ゆっくりと席に向かっていく。
俺の斜め後ろの席みたいだ。
視線を向けるがあちらは気にしてない様子だった。
というか無視に近い。
本当に昨日の子と同一人物か?
※※※※※※※※
ホームルームが終わり、みんなが一斉に話を始めた。
内容はもちろん沙耶。
沙耶はそんなことは気にせずに本を開いた。
「……?」
本の題名……世界の終わり方と終わらせ方。
「……誰があんなの書いたんだよ」
俺は席を立って沙耶の方に寄った。
元々仲がいい奴は少ないので周りの目は気にしない。
「……よ」
「……」
おいおい、少しは反応してくれよ。
これじゃただの恥ずかしい奴じゃねぇか。
「昨日はどうもな」
「……」
痛い……
痛すぎるっ!!!!
いくら周りの目を気にしないって言ったって……
これじゃ俺、変なやつじゃん!!
「あの……」
沙耶は俺にだけ聞こえる様に囁く。
「昨日、言いましたよね……。かかわらないほうがいいって……」
「……冗談じゃなかったの??」
「なんでそんな冗談言わなくちゃいけないんですか……」
「……」
そりゃあそうか…
「でも、理由がわかんないだけど」
「噂通りですよ……」
「えぇー……。そんなおとぎ話みたいなことあんのかよ…」
「あります」
即答。
「もういいですか?」
「えっ」
沙耶はいそいそと廊下に出ていった。
「あらら…」
本当に昨日とは別人だな…
※※※※※※※※
授業も終わり、生徒たちもバラバラと帰り始める。
「さて、俺も帰るかな」
教科書とノートが一冊ずつだけ入った鞄を持つ。
今日の家での課題。
真面目というわけではないが、怒られない程度の勉強はしているつもりだ。
今日も家帰って、魔法の練習でもすっかなー………
そう思って階段を降りようとしたら沙耶を見つけた。
沙耶は屋上に向かって階段を上っている。
今、俺にラッキーなことがあったのは秘密。
「屋上か…」
風強いってのに……
ガチャ
風が入口に吹き込んでくる。
「!?」
強い光。
閃光とはこのことをいうのだろうか?
いや、そんなことより驚くべき所がある。
その光は沙耶の手の先から放たれていたのだ。
光は屋上からの景色をすべて埋め尽くしていた。
「鴻上くん!?」
沙耶は俺に気付くと光を放つのを止めた。
「今、何してたんだ?」
「な、何もっ」
「いや、明らかに光ってただろ」
「!!?」
「沙耶?」
沙耶は目を見開いて驚いている。
なんか驚くようなこと言ったかな…………
「……えたんですか?」
「は?」
「光、見えたんですかっ!?」
「っ!?……ああ、見えたけど…」
びっくりした。
かなり動揺してるようだけど、どうしたんだろう?
「あの、鴻上くん……。帰りに少し付き合ってくれませんか………?」
「え??」
「ダメでしょうか……?」
「い、いや全然オッケーさ!!!」
テンパった。
「???……了承してくれたってことでいいんですね?……じゃあ放課後に声かけるんで」
沙耶は先に戻っていった。
昨日のキャラに戻ったな…
それにしてもおかしい。
…あんなに強い光を放つ魔法なんてないはずだ。
まぁ何にせよ放課後に聞けばいいか……