episode22―risk―
「で、何で俺の家に来るんだ……」
話の後、アリアは俺の家に来た。
「え、だってお金払って泊まるのも勿体無いし。あと、近くにいた方が便利じゃない?」
正論っちゃあ正論だけども……
アリアは荷物をリビングの隅に置き、ソファーに勢い良く座った。
そんな彼女を見ると、どう考えても普通の女の子にしか映らない。
テレビのリモコンを持つ仕草も、表情も。
「そういえば、沙耶はもう帰しちゃってよかったのか?」
沙耶は、アリアに『もう今日は何もないよ』と言われ家に帰って行った。
「いいのいいの」
「はぁ、そうすか」
俺は、キッチンに向かい、晩御飯の準備をすることにした。
冷蔵庫の中身を見ると、野菜が多く残っていたので野菜炒めを作ることにする。
「もう少しかかるから適当にくつろいでてくれ」
「はーい」
※※※
「ごちそうさまー」
「はいよー。あ、そこの皿をとってくれ」
晩飯は結構好評だった。
特にご飯自体をあんまり食べたことがなく、4杯食べるくらい気に入ったみたいだ。
「さて」
アリアは体勢を直し、皿洗いをしている俺を見据えた。
「能力の話をしましょうか」
「お、やっときたか」
俺は皿洗いを中止しテーブルに着く。
「でもさ、それなら沙耶がいた時に話した方がよかったんじゃないか?」
俺がそう聞くと、アリアが首を横に振った。
「?」
「この話しをする場合、沙耶ちゃんは邪魔なだけだよ」
アリアはあくまで冷静に言った。
「どういう……」
「能力付加。何の代償もなしにできるとでも思ってた?」
「!?」
ゆっくりとアリアは手をテーブルの上に移動させる。
「実は、沙耶ちゃんが行っていた魔法はかなり高位なものなの」
干渉系第一級。
他世界では使用できる人間はほぼ皆無。
種類は多く存在するが、もはや魔術とは呼べず、『奇跡の結晶』とも呼ばれる代物だそうだ。
「ブーストの3倍の負担。それが魔法の使用中に君の体に襲い掛かる」
「……」
「正直、あまり進めたくはないけどそれしかないの」
「それだけ?」
「ふぇ?」
アリアから素っ頓狂な声が漏れた。
「そ、それだけって!3倍だよ、3倍!今度こそ死んじゃうかも知れないんだよ!?」
「でも、それでみんな助かるんだろう?それに沙耶のためだ」
「……はぁ」
「なんだよ、ため息なんかついて」
「本当に沙耶ちゃんにベタ惚れだよね」
アリアは半ば呆れ気味にそう言うとテレビを見始めた。
アリアの言うとおり、沙耶がこの場にいないのは確かに正解だった。
沙耶は優しいから。