episode21―skill―
「っ!?」
沙耶と喫茶店でくつろいでいる時だった。
携帯の着信音が耳に入る。
「アリアだ……」
ポケットから携帯を取り、着信ディスプレイに目をやると『アリア』と出ていた。
「はい」
「あ、直樹くん?アリアです」
電話口からの声に軽く安心感を得る。
「ごめんね、遅くなっちゃって。でも、けっこう調べることができたよ」
アリアの口調はとても明るいものだった。
達成感のような、満足感のような。
「で。もう少しでそっちに着くから駅で待っていてくれない?直接話したいの」
「じゃあ、駅で待ってる」
俺は最後に軽く挨拶をして、携帯電話の電源ボタンを押した。
※※※
沙耶と駅で待つ事15分。
アナウンスが聞こえ、アリアを乗せた列車がやって来た。
「おまたせっ」
アリアは大きな鞄と共にやってきた。
いや、鞄というよりはジェラルミンケースだろうか。
「持とうか?」
「あ、じゃあお願いしようかな。悪いねー」
そのまま駅のベンチに3人で座る。
「で、何か分かったんですか?」
沙耶はすぐに核心をつく質問をした。
アリアは少し驚いたような顔を見せるが、すぐに笑顔を作ってジェラルミンケースに手を伸ばした。
「まったく……せっかちだねー」
そして、アリアは一枚の紙を取り出した。
「……これは?」
紙を見ると、星が降る絵が描いてあった。
地上に向かっている星は地球そのものだった。
「予知」
「予知?」
「というより確実に当たる予測かな」
「じゃ、じゃあ……」
再び紙に目を戻す。
「そう。世界が混ざり合う中でも最悪な事態が起こる」
「最悪の事態って何なんですか?」
「世界そのものがぶつかり合うの。この世界の場合、地球と地球が」
「な!?」
アリアは紙をゆっくりと折り、横に置いてあるケースにしまった。
「だから、それを防ぐために君達がいるんだよ」
「……でも俺達は」
ブーストをかけて現状維持が限界。
定期的に災害が起きてしまう。
しかも、それ以前に俺がくたばっちまうと思う。
「そこで私の出番!」
アリアは胸を張って立ち上がる。
「直樹くんを魔法が使える人間にしてあげる」
「お、俺!?」
「直樹くんにだって神野の血は少し流れてるし、ブーストまで出来てたから大丈夫だよ」
「そうなのか?」
沙耶と同じかそれに近い能力があれば確かに沙耶の力になれる。
「だ、大丈夫なんですか?ブーストだけでボロボロだったのに」
沙耶はこの前のこともあってかアリアにそんな質問をした。
「大丈夫だよ。完璧に能力を付加させてみせる」
自信を持って答えるアリアを見て俺達は安心できた。
今まで実質2人だけで行動してきたからかも知れないが、俺と沙耶にとってはそれだけで嬉しかった。