episode18―side―
やっと登場しました。
主人公と古い付き合いの人物。
茶が少し混じった、肩甲骨あたりまでの黒髪ストレートが特徴的。
いろんなものに興味を示す、お節介ガール。
それが目の前にいる幼なじみ、木崎未来だ。
お節介とは言っても入院中の身なので、かなり限られるが。
「もうっ、月一くらいは顔出しなさいって言ってたでしょ」
「悪い。ちょっと色々あってな」
「ふーん……。というかさ……」
「?」
未来が俺の後ろにいる人物を見る。
「どちら様?」
「あっ、えっと……」
沙耶はオドオドしながらも自己紹介を始めた。
「こ、神野沙耶ですっ。直樹くんとはクラスメイトでして……」
「はじめまして、木崎未来です。私は直樹の幼なじみってとこかな?」
未来もベッドの上ではあるが体を起こして挨拶をした。
「でだ。まず未来に報告がある」
「え、何?」
横にいた沙耶を俺の前に引っ張り、未来と向き合わせる。
「こいつ、俺の彼女だ」
「……ふぇっ?」
未来は俺と沙耶を交互に見て、そして……
「ぇぇえええええええええええええ!!!!」
叫んだ。
「な、直樹くんっ!?」
沙耶も何がなんだか分からずに赤面している。
「なっ、直樹に彼女!?こ、こんな馬鹿で、阿呆で、無愛想で、ぶっきらぼうで、人でなしな直樹にっ!?」
「いくら何でも言い過ぎじゃないか!?」
こいつ酷い!
「ほ、本当に彼女?」
「本当だ」
「そ、そんな……。直樹にこんな可愛い彼女ができるなんて……」
「可愛いだろ?」
「な、直樹くんっ!?さっきから何言ってるんですか!?」
沙耶がツっこんだ!?
少し惚気過ぎたか。
「まさか直樹にねぇ……。あたしも学校に通えたら普通に恋愛できたかなぁ」
「お前だったらどこだって恋愛できるだろ」
ルックスいいし。
進んで厄介事に関わるし。
「沙耶さんだっけ?」
「は、はい」
「直樹をよろしくね……。直樹、大事なこと自分で背負いこむタイプだからさ」
「確かにそうですね」
即答!?
確かに最近無茶してたけど!
「もしかして未来さん……」
「あ、別に直樹に気があるわけじゃないから大丈夫よ。ただ昔からほっとけなくてね、私ってお節介だしさ」
「そ、そうですか」
苦笑いをする未来を見た沙耶は、戸惑ったように視線を下に向けた。
あんまり人と接したことがなかった沙耶にとって、未来のような奴は初めてだったのかも知れない。
下を向いてる沙耶の顔を見ると、今まで見たことがないくらい照れているのが分かった。
「……直樹、変わったね」
「そうか?」
適当に答えると、未来は『そうだよ』と静かに答えた。
「何かに夢中になってる顔だよ」
「まぁ……、それなりにな」
夢中っていうか、何とかしなきゃやばいっていうか。
「私のことは気にしなくていいんだからね?」
「……それは無理だ」
「強情だなーもう……。その結果が今の友達の少なさだよねー」
「う……」
そう言われると言い返せない自分がいる。
でも、無理なものは無理なのだ。
「でもさ、今頑張ってる事はあるんでしょ?」
「まーな」
「……頑張りなよ?」
未来はまるで全てを見透かしたかの様に言うと俺達を見て微笑んだ。