episode16―you―
久しぶり……とまではいかないが、数日ぶりの登校だった。
先生に休んだ理由やら、その他諸々問い詰められたが何とか誤魔化した。
※※※
朝の喧騒。
その中を掻い潜りながら自分の席に着く。
「おい」
「ん?」
賢に話しかけられた。
というか俺に話しかけてくる奴はだいたい限られてくるが。
「お前、なんで休んだんだ?」
「プチ旅行」
「マジ!?」
嘘ではない。
「沙耶ちゃんと?」
「へっ!?な、なんで沙耶が出てくるんだよ!?」
つーか『沙耶ちゃん』って……。どこぞの催眠術師かよ。
「だって2人とも同じ日に休んでるし……。しかも沙耶ちゃんも旅行って言ってたぞ?」
「えっ?あいつに教えてもらえたのか?」
「しつこく聞いてたら教えてくれた」
こいつ空気読めない男だな。
つーか逆にすげぇ。
「ま、深くは追及はしないけど、後で上手くいってるかくらい教えてくれよ?」
「……分かったよ」
と、賢と話を終えたところで沙耶の方を見る。
やっぱり他の人から浮いている。
沙耶の一つ一つの動作に拒絶の意思が感じられる。
「やっぱり巻き込みたくないからなんだろうな……」
※※※
チャイムが鳴り、昼飯の時間となった。
ほとんどの生徒は購買に向かうため、すぐに散っていった。
「直樹くん」
「ん?おぉ」
沙耶に話しかけられ、一緒に屋上へと向かう。
手にはもちろん弁当だ。
屋上に着くと、人が1人もいない空間が広がっていた。
俺達は街が見えるフェンスの近くで弁当を広げた。
「少しは元気出たか?」
「はい。昨日はキスもしましたからね……」
「ぶっ!?」
吹き出した!
いきなりか!?
いきなりそんなこと切り出してくるのか!?
「ふぁ、ふぁふぁふぁーすときすですよね!?」
「なんかすごく読みにくそうな言い方だな!」
しかも照れるなら言うなよ!
「確かに元気は出ました。でも」
「でも?」
「でも、やっぱりまだ自分が許せてないです……」
「お前のせいじゃないって何回言えばいいんだよ?」
「じゃあ直樹くん、あなたのせいです!」
「俺か!」
ビシッと沙耶は俺に指を指した。
でも、すぐにその指が力なく下がっていった。
「言ってくれればよかったのに……」
「悪い……」
そう言われると謝ることしかできない。
実際に沙耶を傷つけたのは体調のことを黙ってた俺だし。
「直樹くん……」
沙耶は弁当の箸を置き、俺の肩に身を寄せてきた。
そして力なく呟く。
「いなくならないで下さいね……」
「いなくならねーよ」
俺はできるだけ力強く答える。
そうしないと沙耶には伝わらないから。
沙耶は微笑むと俺の顔を覗き込んできた。
「ど、どうした!?」
「午後はサボりましょうか」
まさか。
沙耶がサボりを提案してくるとは。
でも、俺としてとては嬉しいサプライズだ。
「願ってもない。一緒に学校サボるなんて青春じゃないか」
「そう言ってくれると信じてました」
沙耶はより一層顔を近づけてきた。
「では……。直樹くんは『卵焼き味』と、『唐揚げ味』どっちがいいですか?」