表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/27

episode16―you―

久しぶり……とまではいかないが、数日ぶりの登校だった。

先生に休んだ理由やら、その他諸々問い詰められたが何とか誤魔化した。


※※※


朝の喧騒。

その中を掻い潜りながら自分の席に着く。


「おい」


「ん?」


賢に話しかけられた。

というか俺に話しかけてくる奴はだいたい限られてくるが。


「お前、なんで休んだんだ?」


「プチ旅行」


「マジ!?」


嘘ではない。


「沙耶ちゃんと?」


「へっ!?な、なんで沙耶が出てくるんだよ!?」


つーか『沙耶ちゃん』って……。どこぞの催眠術師かよ。


「だって2人とも同じ日に休んでるし……。しかも沙耶ちゃんも旅行って言ってたぞ?」


「えっ?あいつに教えてもらえたのか?」


「しつこく聞いてたら教えてくれた」


こいつ空気読めない男だな。

つーか逆にすげぇ。


「ま、深くは追及はしないけど、後で上手くいってるかくらい教えてくれよ?」


「……分かったよ」


と、賢と話を終えたところで沙耶の方を見る。

やっぱり他の人から浮いている。

沙耶の一つ一つの動作に拒絶の意思が感じられる。


「やっぱり巻き込みたくないからなんだろうな……」


※※※



チャイムが鳴り、昼飯の時間となった。

ほとんどの生徒は購買に向かうため、すぐに散っていった。


「直樹くん」


「ん?おぉ」


沙耶に話しかけられ、一緒に屋上へと向かう。

手にはもちろん弁当だ。

屋上に着くと、人が1人もいない空間が広がっていた。


俺達は街が見えるフェンスの近くで弁当を広げた。


「少しは元気出たか?」


「はい。昨日はキスもしましたからね……」


「ぶっ!?」


吹き出した!

いきなりか!?

いきなりそんなこと切り出してくるのか!?


「ふぁ、ふぁふぁふぁーすときすですよね!?」


「なんかすごく読みにくそうな言い方だな!」


しかも照れるなら言うなよ!


「確かに元気は出ました。でも」


「でも?」


「でも、やっぱりまだ自分が許せてないです……」


「お前のせいじゃないって何回言えばいいんだよ?」


「じゃあ直樹くん、あなたのせいです!」


「俺か!」


ビシッと沙耶は俺に指を指した。

でも、すぐにその指が力なく下がっていった。


「言ってくれればよかったのに……」


「悪い……」


そう言われると謝ることしかできない。

実際に沙耶を傷つけたのは体調のことを黙ってた俺だし。


「直樹くん……」


沙耶は弁当の箸を置き、俺の肩に身を寄せてきた。

そして力なく呟く。


「いなくならないで下さいね……」


「いなくならねーよ」


俺はできるだけ力強く答える。

そうしないと沙耶には伝わらないから。

沙耶は微笑むと俺の顔を覗き込んできた。


「ど、どうした!?」


「午後はサボりましょうか」


まさか。

沙耶がサボりを提案してくるとは。

でも、俺としてとては嬉しいサプライズだ。


「願ってもない。一緒に学校サボるなんて青春じゃないか」


「そう言ってくれると信じてました」



沙耶はより一層顔を近づけてきた。



「では……。直樹くんは『卵焼き味』と、『唐揚げ味』どっちがいいですか?」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ