episode14―select―
<とある平行世界>
多くの人々にとって、それは突然だった。
放たれた魔法。
もはや魔術とは言えない、強力な魔法だった。
それは時間を逆流させ、空間を切り裂き、一瞬で多くの生命を奪う程のものだった。
さらに、災厄はその世界だけに留まらなかった。
時空と空間が歪み、多くの世界へと影響を及ぼしていく。
これが現代にまで引き継がれる『呪い』だ。
※※※
「……」
俺と沙耶は聞き入っていた。
信憑性はともかくとして、ことの重大さが再認識できた。
「ついてこれてる?」
「は、はい」
かなり突拍子もない話だけども。
「……で、でも、なんで沙耶?」
それでも、俺には沙耶が辛い思いをする理由が分からない。
「……それは世界の混在を防ぐ能力を受け継いでいるからだよ。その家系全員がね」
「……」
「世界の混在を防ぐため、『世界』そのものが実行した『プログラム』」
――世界は『そのままの状態を維持する』傾向にある。
――そのために、世界の混在を拒否した。
――世界の混在を防ぐ能力を1人の人間に与え、受け継がせていく。
――その『血』によって。
「そんな……。それじゃあ」
「先祖様の運が悪かったとしか言えないの……。世界は全人類の中から『神野』を選定した」
アリアは何故か自分のしたことのように申し訳なさそうな顔をした。
「でも……」
沙耶がゆっくりと重い口を開く。
その声は当たり前のように震えていた。
「私の魔法じゃもう無理です……。もう……防げない」
既に沙耶の力では抑えきれなくなっている。
頑張っても現状維持。
定期的に災厄は訪れてしまう。
「そう……。ここに来た本当の理由はそこね?」
「……はい」
「まあ、魔法が弱くなってる原因は簡単だよ?」
「えっ?」
「その先祖様の代から現代まで、ずーっと純血ってのは難しいでしょ?だから、ただ単に先祖様の血が薄まっただけなの」
「……」
確かに。
家族間なんて考えられん……
「で、対応策なんだけど……、少しだけ時間をくれないかな?」
「え?」
「ちょっと調べてみたいの」
「じゃあっ……」
「うん。この『アリア』があなたたちの力になってあげる」
アリアは胸を張って言った。
「あ、ありがとうございます!」
「でも、その間に魔法は使っちゃ駄目だよ?」
!?
「ど、どうして!?」
「そこの問題は、直樹くん、あなただよ」
アリアは俺に指を指しながら言った。
「は?お、俺?」
「明らかに、魔法ブーストの影響が出てる。かなり無理をしてるね」
「え……、な、直樹くん?」
沙耶の視線がアリアから俺へと変わった。
「そ、そんなわけないだろ。体調はかなりいいし」
誤魔化そうとした。
でも、アリアには通じなかった。
「それは嘘。そんな体じゃ、沙耶ちゃんが何回か魔法を使っただけで死んじゃうよ?」
「な、直樹くん……、体調が?わ、私が……」
沙耶はショックを受けた顔をしていた。
顔が一瞬で真っ青になるくらいだから相当なものだろう。
「私ができるだけ早く対処法を見つけるから、その間は体を休めといて」
「わかりました……」
俺はやるせない気持ちで答えた。
今回も詰め込み過ぎちゃってごちゃごちゃしてましたね……