episode12―blue―
「ん……」
朝日が差していることに気付いて目が覚める。
「あ、お目覚めですか?」
沙耶はすでに起きていて、布団を畳んでいた。
「ちゃんと眠れましたか?」
「んー、微妙だったな」
やっぱり寝床が変わると寝づらいな。
それに、昨夜の吐血の件もあるし。
「ご馳走様でした」
「……は?何が?」
急に何だ?
「……」
沙耶はゆっくりと自分の指を持ち上げる。
そして、指が止まった場所は唇。
「……おい、まさか寝てる間に」
「だって初めての旅行だったんですよっ!?」
キレた!
「もう、ほら、こういう場合って普通は襲って来るもんじゃないんですか!?」
「知るかっ!!」
つーか具合悪くてそれどころじゃなかったし!
「私、3時くらいまで起きてたんですよ!?」
一途過ぎる!
※※※
朝飯を食べ、捜索を開始する。
一度駅まで戻り、そこから地図を頼りに探すことにした。
「そこを右ですね」
俺は沙耶の指示に従いながらついて行く。
こうして景色を見ていると、俺たちの町より田舎の様な気がする。
川も整備されていないし、道路も所々に畦道が見当たった。
その、初めて見るであろう光景に違和感を覚える。
自分でもよく分からない感覚。
何故だろうか……
――とても懐かしい気がする
この風景……、昔に見た様な……
「あ、あれじゃないですか?」
駅から30分程歩いた頃だった。
少し疲れが見え始めていた沙耶が前方に向かって指を差した。
「確かに……。滅茶苦茶怪しすぎるな」
目の前に小さめの家。
門には看板が置いてあり、『催眠やってます』と書いてあった。
胡散臭過ぎる。
「大丈夫かよ?」
「大丈夫ですよ」
少しは疑うってことも知ってくれ。
「じゃあ入りましょうか」
沙耶が玄関のチャイムを鳴らす。
すると奥の方から『ドタドタ』と走る音が近づいてきた。
〈バンッ〉
「いらっしゃい!」
「え!?」
驚いた。
いや、急に出てきたから驚いたというわけではない。
ドアの向こうから現れたのが、明らかに同年代程の容姿をしていた女の子だったからだ。