表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/27

episode11―limit―

しばらく電車に揺られているうちに目的地に着いた。

駅から出ると大きな川が南北へと伸びていた。


「綺麗な場所ですね?」


「だな……」


川の周りに並んでいる木々は、ほど良く赤と黄に染まっていた。


「で、宿はどこなんだ?」


「宿はここからすぐですよ」


沙耶は川をはさんだ向こう岸を指差す。

そこには大きな文字で『おいでやす』と書いてある建物があった。


『おいでやす』って……


「じゃあいきましょうか」


※※※


「あ、いらっしゃーい。宿泊ですか?」


旅館に入ると女将らしき人が迎えてくれた。

奥の方には何人かの宿泊客がお土産を買っている。


沙耶は女将さんの所に行って宿泊の手続きを始めた。


「一泊でお願いします」


「かしこまりました。部屋は一つでよろしいですね?」


「はい。できるだけ狭い部屋でお願いします」


沙耶!?なんで!?


「うふふ、とっておきの部屋をご用意しますよ、お客様……」


お、女将さん!?

初対面だよね、あなたたち!?


※※※


指定された部屋に入ると、畳特有のいい匂いがしている。

窓からは駅の近くに流れていた川も見えた。


「いい部屋ですね」


俺は部屋に着いた途端、急に疲れがきてすぐに座り込んでいた。


「……?直樹くん、顔色が良くないですよ?」


「い、いや、大丈夫。旅行が楽しみで眠れなかっただけだから」


「そうですか?具合が悪い時は言ってくださいね?」


「おぅ。あ、俺ちょっとトイレに行ってくる」


俺は立ち上がって部屋から出た。


「……っ」


足を速める。

最初は歩いていた足がすでに全力疾走まで歩を速めていた。


トイレの洗面台に来てすぐに自分の状況が分かった。


「吐血……」


口から血が流れていた。


「っ!……かはっ!」


吐血が洗面台に飛び散り、『ビチャッ』っと嫌な音が耳に入る。


限界だった。

沙耶じゃなく『俺』が。


最初の頃はなんともなかったが、少しずつ俺の体に影響が出てきていた。

沙耶が魔法を使う時、体中に裂けるような痛みが走る。

回を重ねる毎に痛みが増して、遂にここまできてしまった。


「まさか吐血までするとはな……」


口元を拭う。


「まだ……、まだ大丈夫だ……」


そう自分に言い聞かせて部屋へと戻った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ