episode8―feel―
沙耶が倒れた日の翌日。
沙耶は俺の家に朝飯を食べに来ていた。
「なぁ、ほんとに俺のこと好きか?」
「はい。むぐ……、大好き……です……あむ」
「なんで食いながら!?」
目線すらあってない。
「で、体調は大丈夫か?」
「あ、はい。大分回復しました。まぁ風邪ってわけでもなかったですし」
「そうか……」
確かに、この食欲を見ればね。
「そういや、前から思ってたんだけどさ……」
「はい?」
「なんでお前敬語なんだ?」
「敬語、ですか?……それといって理由はないですけど、今まではあまり他の人と話す機会がなかったからだと思います。友達っていう人もいませんでしたし」
沙耶はあまり悲しそうにも見えない顔で話す。
誰とも話さない。
それが沙耶にとっては普通だったのだろう。
「……じゃあ、今日から敬語禁止!」
「え……?ぇええええっ!?な、何でですか!?」
朝飯に夢中だった沙耶が急にこちらを見る。
逆に俺がびっくりしたりする。
「い、いやー、実は俺、同年代に敬語で話されるの抵抗があったんだよねー」
「今更、驚愕の事実を知らされましたよ!」
「ほら!もう敬語はだめだ!」
「う……。……うん、わかったよ、直樹くん」
「……」
こ、これは……
敬語をやめる。
それだけのことなのに、予想以上に強力だった。
「直樹くん?」
「な、なんだ?」
「今日も屋上で魔法使うけど、いいかな?」
「あ、ああ。無理しなきゃいいぞ」
「ありがとう、直樹くん!」
「……。敬語に戻そうか……」