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prolog1―ether―

少女は言った。


世界は神様が造った物語だと。


誰が死んで息絶えたとしても、それはもう決まっていたことだと。


運命とか必然とか未来のことじゃない。



もう決まっていた。

過去形にして完成なんだと。






そんな話を俺は聞いた。






少女はつくった笑顔をしていた。




――私が神様の咎を受けよう


――誰も悪くはないんだから


――だから私の分までみんなは幸せに


まるで小さな頃に聞くようなおとぎ話。


ただ、矛盾で構築された世界の中で少女は弱く笑っていた









※※※



「!?」


目が覚める。


「ん…。寝ちまってたか…」


夕陽が差す教室。

時計は五時丁度を示している。

周りを見渡すが、みんなは帰ったのかもういなかった。


「5時だから当たり前か…ってあれ?」


俺の背中に制服の上着がかかっていた。


誰だ?

確かにこの時期は寒い。


「でも、今は持主の方が寒いんじゃないか……?」



しょうがない、と席を立った瞬間だった。


「あ、目が覚めましたか?」


教室に女子生徒が入ってきた。

その生徒は明らかに薄着。

一目で背中にかかっている制服の持ち主だとわかった。


「悪い……。これ君のだろ?」


背中の制服を丁寧にたたんで渡した。


「ありがとうございます。やっぱり少し寒かったんで……」


女子生徒は苦笑い。


「いや、本当に悪かった…」


俺は深々と頭を下げた。


「そ、そんなにかしこまらないでください。クラスメートですよ?」


「クラスメート?」


はて…?

こんな子いたっけか?


「知らなくても無理ないですね。明日から、私だけこのクラスに変わるんですから」


「え?君だけ?」


「はい。前のクラスでうまくいってなかったんです…。たぶんこのクラスでも……」



いじめか?

容姿や性格を見る限り、いじめられるような奴じゃないが……


「……」


「す、すいませんっ!重っ苦しい話して…」


「あ、いや……」


気まずい……




「お、俺は鴻上直樹(こうがみなおき)っていうんだけど……、名前は?」


「……明日まで秘密です」


「そっか…」


「じゃ、私はこれで…」


女子生徒は上着を着るとドアの方へ向かっていった。


「………」


「あ!言い忘れてました!」


「っ!!」


女子生徒が急に声を出すので驚いてしまった。



「な、何?」


「明日から私に関わらない方がいいですよ。というか関わらないでくださいね?」


「は?」


「あと、おまじないをさせて下さい……」


「……?」



女子生徒は手を俺にかざす。


「簡易魔法くらいなら自分でできるけど……」


たぶんここの生徒でも10人に一人くらいはできる。


「このおまじないは私がやらないと意味ないんですよ」


「へぇ」


人を選ぶまじないなんて聞いたことがないが、深く追求しないでおく。


「それじゃあいきますよ……」


いつでもどうぞ、と頷く。


すると女子生徒の手が光を纏う。



ether(エーテル)………」



女子生徒がそう呟くと、光が舞い散った。






「……終わり?」



「はい」


ずいぶん簡単なまじないだったな……

でもエーテルって……


「…なぁ、エーテルって……おいっ!!?」


気付くとその生徒はドアの所まで移動していた。


「さようなら、鴻上直樹くん」


「ちょっ……」


その女子生徒は笑顔で出て行った。


俺は、その笑顔がどうしようもなく怖かった。

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