ニャン・キホーテ
かなり短いですがどうぞよろしくお願いします。
吾輩は誉れ高き騎士である。
毎日を生きるための糧だけを報酬に国を守る護国の騎士である。
吾輩には仕えている主がいる。主は一国の王だ。
この主、仕えている吾輩が言うのもなんだがとても、とても不甲斐ないのである。
国を己の意のままに出来る筈であるのに后や姫の言いなりなのである。
女性を大事にする精神を持ち合わせていることは関心なのである。
れでぃーふぁーすと、というやつだったはず。
それはとても大事なものなのである。
吾輩もいつか素敵な女性を妻に迎え、幸せな家庭を築きたいものである。
……話がずれたのである。
話を元に戻さなくては。
言いなりにばかりなっているのはどうかと吾輩は思うのだ。
仮にも一国の王であろう?もう少し威厳を持ってほしいものである。
そんな主も腐っても王、そして吾輩は騎士である。
一度仕えると決めたのであるならばそれを貫き通すのが騎士道というものだ。
主は良く国を空ける。
王のくせに国を空けるとは何事かと思われるがそれは心配ないのである。
主は国の中では情けないがその真の姿は偉大なる戦士なのである。
吾輩が使えるこの国には田畑が無い。
それはつまり自分たちだけでは食べ物を賄うことができないのだ。
主は日々国の外で戦い、生きるのに必要なものを勝ち取っているのである。
主の戦いでは吾輩は無力。
そのことが吾輩には少し悔しいのである。
それでも吾輩は騎士である。
王がいない間も国を、王の后や姫を守ることこそ我が役目。
そのために吾輩は今日もまた、己の剣を研ぎ、
不埒者が入ってこぬように国の内外を見張るのである。
何度目かの冬が来た。
また吾輩は立ち向かわなければならない。あの恐ろしき獣に。
その獣は必ず冬にやってくる。
頭は無く、四つの足と体は常に分厚い毛皮で隠され、
吾輩の体より長さがある尾を持ち、背中に平たい甲羅を備えている。
またその体の内は常に熱く、おそらくは奴の胃袋なのだろう。
そこに獲物を引きずり込むのである。
吾輩はかつてその恐ろしき獣に立ち向かい、
危うく食われそうになったのである。
もうだめかと思ったのである。
そう思ったのは吾輩を狂乱へと導かんとした魔性の香との闘い以来であった。
とある朝、吾輩が起きると、その獣は早速この国に入り込んでいた。
吾輩が寝ていた間の隙を狙って来るとは狡賢いやつである。
戦士でもある国の主を探してみたがどうやらすでに戦いに出かけ、
戦えるものは吾輩だけのようであった。
まず吾輩は奴の背中にある甲羅に飛び乗り、
その甲羅を砕かんとわが剣を突き立てたが、
わずかばかりの傷を残すだけで奴はびくともしない。
体の中に入り込み暴れることも考えたが、
喰われかけた苦い思い出が吾輩の頭をよぎる。
どうする物かと思案しているうちになんと姫が喰われてしまったのだ。
姫は体の半分を食われてしまっていたのである。
幸いというべきかこの獣は獲物を消化するのに物凄く時間がかかるらしく、
姫が溶かされる心配はないのである。
だが悠長にしてはいられない。姫には大事なお役目があるのである。
がっこう、という他国の姫や王子たちが集まる社交場で色々なことを
学ばなければいけないのだ。
吾輩は急いで姫をこの獣から助けるべくその尾に我が身に宿す杭を突き立てた。
すると獣は徐々に冷たくなった。尾が奴の弱点だったのである。
吾輩はこの恐ろしき獣を見事打ち倒し、姫を救い出したのだ。
この後后に何故か怒られることになるのが解せぬのであるが、
めでたしめでたしなのである。
吾輩の名前はにゃん太郎。誉れ高き騎士である。
お読みいただきありがとうございました。