63話 王国の裏側で
遅くなってすみません……
「素晴らしい人材が現れました!!」
これは分身体の体験してる事だ。勇者達の訓練を見ながら分身体の五感と本体の五感をリンクさせてこれを見ている。
「ほう……どのような者だ?」
勘違い野郎をぶっ飛ばしたあとに訓練場から出ていった奴らに分身体であとをつけた。すると、三人のうちの一人が語る。
「はっ!一人の少女にございます!!」
……見た目がこれだからな、もうなんか慣れたけど俺は男なんだよなあ……。慣れたけど悲しいもんなは悲しいわ。
「…………貴様…なめているのか……?我々がこれからなにを成そうとしているのか忘れた訳ではあるまいな…?」
それまでのどこか上機嫌な空気は消え去り、一瞬で剣呑な空気に変わった。狼狽えながらも兵士の一人が言葉を絞り出す。
「その少女はあの雷の勇者を殴り飛ばしていました!!雷の勇者は雷を纏い、全力で魔力を放出していました!!それに対して少女も雷魔法を纏い応戦しました!しかし、魔力を察知することはできませんでした!魔力を全く察知できず、それほどに弱いのかと思っていたところ、雷の勇者よりも素早く移動し、雷の勇者を訓練場の高くへ打ち上げました!」
兵士のその説明を聞くと、それまで話を聞いていた男………いや、男の子は興味を示したようで、機嫌を少し直したようだ。
「そのものについての詳しいことは?」
「まだわかっておりません!!」
少し考えたあとに男の子は兵士達の方へ向き直り、指示を出す。
「その少女について調べろ。恐らくだが冒険者ギルドが関係しているだろうから王都の冒険者ギルドのギルドマスターに聞きに行け」
「はっ!!!」
「お前達、くれぐれもあの屑王には悟られないように注意するのだぞ」
「はっ!!!全てはユグノス殿下の御心のままに!!!」
男の子――――ユグノス殿下は三人の兵士が部屋から出ていったのを確認してから、兵士達は気づいていなかった後ろに控える執事の男性とメイドの女性二人に問いかける。
「アグノス、ハーリン。お前らはどう思う?」
「あの三人の話が本当だとするのならば、即座に配下に取り入れるべきかと。あの雷の勇者は私も容易く相手できる者では御座いません」
執事の男性―――アグノスが答える。雷の勇者を相手に出来るという事は、少なからず彼も只者ではない。そして、メイドの女性も………
「アグノス様の仰られる通りかと。ここにいる限りでは、雷の勇者らしき魔力が突然膨れ上がり、突然消えたのは察知しておりますが、その少女の魔力は一切察知出来ておりません。雷の勇者を相手にしながら我々に魔力を察知させないものなど、只者ではありません」
「………荒野の覇王と漆黒の暗殺姫がそう言うのならばそうなのであろう。調査の結界が届き次第、俺自らそやつに会いに行こう」
……何やらこの国はとんでもないことが起きているらしいな。とりあえず分身体をこいつにつけたままにして訓練場に意識を戻すか。
訓練場では勇者達が訓練をしている。勘違い野郎はどこかに運ばれて行ったようだ。
どうやら兵士達が隅の方でこそこそと話をしているようだ。だがしかし!!ふっ…五感強化を持っている俺にはその距離での隠し事は無理だぜ!!!
「お、おい、あいつなにもんだよ……。団長も適わないんじゃないか?」
「馬鹿野郎!!お前!団長は竜狩りだぞ!?その団長が負けるわけねえだろうが」
なるほど………団長は相当な実力者のようだな。一回だけ会ってみたいな。
「団長が帰って来たぞぉおおおおおおお!!!」
うん、なんだか馬鹿みたいに大きい魔力が城に近付いてるから警戒してたけどまさか団長だったとはね。
「ただいま!ただいま!!」
するとガラガラと何かを引きずって黒髪の細マッチョなお兄さんが訓練場にやってきた。魔力の反応からしてこのお兄さんがどうやら団長のようだ。
「いやあ、今回の竜は強かったよ。まあ、でもだからこそ前よりも強くなれたんだけどね!」
とか言いつつ大きな傷は見当たらないんだが?ふむ、勇者の倍の魔力を感じるな。いや?これはあちらの世界の勇者達に匹敵するな…?それに龍を屠る程の技術。よし!鑑定!
『ステータス』
名前:ジークフリート
種族:人種竜族
年齢:27歳
職業:大剣士
Lv:85/100
生命力:更新中……
魔力:95470
物攻:154780
物防:更新中………
魔攻:123450
魔防:更新中………
知力:70
俊敏:98455
器用:74955
幸運:70
称号:竜狩り、合体者
ユニークスキル:同化
種族スキル:竜人化
ノーマルスキル:火魔法Lv7、風魔法Lv8、生命感知Lv3、魔力支配Lv2
エクストラスキル:状態異常無効
……なるほど。この同化というスキルだが、別々のものを同化させるらしい。ステータスから察するに……こいつは何体もの竜と同化している。だって今引きずって来ているのも角だけなのだ。
それにしても竜?龍じゃないのか?
『竜』
龍の下位種。龍よりは格下の存在だが、人種よりは種族としては格上の存在。
お!鑑定さんが鑑定してくれた。なるほど…俺って龍には会ったことがあるのに竜にはあったことないよな?竜にも会ってみたい。
「ん?そこの少女は……。魔力を感じないな?まあ、元気に生きているようだから問題はないんだろう」
「団長!そんなことよりこんなところで油売ってていいんですか?」
「あ!そうだった!王に帰還したことをお伝えしなければ!!それでは!!さらばだ!」
団長が王に報告へ向かったあと、俺はアロウズ達に気になっていた事を言った。
「……勇者達は攻撃する際に魔力を使っていませんね?」
普通なら攻撃をする際に魔力を武器や身体に魔力を通すことで、武器や身体を強化するのだ。そうして戦ううちに魔力操作や身体強化魔法を覚え、スキルレベルをあげるのだ。
彼らは勇者召喚で呼び出された者達。普通の人間よりも成長速度は速く、スキル取得は容易なはずだ。それが全くない。
「ん?どういうことだ?」
話をしたところ、どうやらアロウズ達もそんなことは知らないようだ。なんてことだ。しかし、説明すると、アロウズ達は訓練にそれを取り入れた。
「ウルフはすごい」
アーリーさんに褒められて頭を撫でられた。嬉しいです!その話は置いといて。兎にも角にも勇者達は修行を始めた。
魔法系のステータスが高い子には何個か魔法を見せた。すると、何個かは取得出来たようだ。他の子達も数日あれば取得出来るだろう。さすがは勇者と言ったところか。
「あ!そうだった!アロウズさん!すみません!!図書館に行く予定があるんでした!失礼します!!」
忘れてた!とりあえずダッシュだ!
図書館の場所がわからない。こんな裏道に来てしまった。こんなところに図書館があるはずがない。どうしようか。
「そこの少女。止まりなさい」
「どちらに行くのですかな?」
ん?この人達は殿下と一緒にいた人達じゃないか?
「図書館ですけど……道がわからなくて…」
あー、そういえば勧誘する的なこと言ってたな。今がその時?
「SSランク冒険者の実力……」
「確かめさせて頂きますぞ?」
執事の人は武器を持たず、メイドの人は短剣を手に。二人でこちらに……え!?なんで!?とりあえず上にジャンプ!!
「逃しません!!」
短剣投げてこないで!!全部避けるけど!!
「はぁあああ!!せい!」
ぬあ!執事の人の気配感じないと思ったらいつの間にか後ろに!なんだこの人!!魔力全く感じないんだけど!?
「!私の一撃を受け止めますか……おもしろい!!はぁあああ!!!!!」
「!!アロウズ様!?いけません!」
むむ!?人種とも魔人種とも違う感覚のこの魔力は…??どこかで………




