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災いの爪  作者: 豆粒
学園生活編
67/75

56話 体育部門での波乱


 体育部門はクラスごとに勝ち抜き方式で戦っていく。ソウタ達のクラスはどことあたるのか。上級生クラスじゃないのを祈るばかりだ。アナウンスが聞こえる


『一回戦は一年B組と三年C組です。準備してください』


 どうやら上級生のクラスと当たってしまったようだ。だがしかし、ソウタがいれば負けはないのである。


 一回戦でぶつかる相手のクラスを見ると、なんと!ゴンゾがいた!一回戦の相手はゴンゾのクラスのようだ。


 まず最初はナタリーが出る。と言った。ナタリーは相手のクラスの二人を病院送りにした。粉砕を使って。


「へへへ、ナタリーちゃあん!可愛がってあげるよおお!!」


「結構ですわ」


 ゴンゾはクラスメイト二人が病院送りにされたのを全く気にもとめず、ナタリーをニヤニヤしながら見ていた。


 試合が始まる。ナタリーが距離を詰める。この間見た限りでは、ゴンゾはパワータイプのようなのでスピードで翻弄すれば問題はないように見えた。ナタリーもそう考えたのだろう。


 ナタリーはゴンゾの目の前に移動したあと、ゴンゾの目の前から消え、ゴンゾの背後に移動した。ナタリーの攻撃が当たる寸前。ゴンゾは笑顔で振り返る。


 異常な反応を見せたゴンゾはナタリーを蹴り飛ばした。その後、ナタリーが地面につく前に蹴りあげる。蹴り上げられたナタリーを殴る。殴る。殴る。


「ナタリーちゃあん!俺と仲良くしようぜぇぇぇえ!!!!!」


 ナタリーが意識を失ってもそれは続き、先生達の声でゴンゾは殴るのをやめ、選手席に戻って行った。先生達は回復魔術を唱えたが、傷は治らない。ナタリーの息は荒々しい。


「許さねえ!!!!!あの野郎!女の顔に一生残る傷を付けやがってぇえええ!!おい!ソウタ!!お前さっきから黙って!悔しくねえのか!?」


 バー二が怒りをあらわにしているなか、ソウタは黙って座っていた。そう、座っていたはずなのだ。数秒前までは確かにソウタが座っていたそこにはもう何もなく、まるで最初から誰も座っていなかったかのような気になる。


 バー二がナタリーに目を戻すとナタリーの側にはソウタがいた。ソウタは誰の目にも止まらぬ速さでナタリーの横に移動し、回復魔術を唱えた。先生達が唱えた時の魔方陣を完璧に再現して。


 先生達とソウタの魔力の総量も、操作も桁が違うために、結果も違うものとなる。ナタリーの傷はみるみる治り、完治した。ナタリーは穏やかに息をたてている。


 ソウタはバー二の元に戻り、静かに告げた。


「次は俺が出る」


 そして、二回戦が始まる。試合開始の声が聞こえる前に空から巨大な反応が迫っていた。それがソウタとゴンゾの間に着地する。


「よお……この間ぶりだなあ……ガキ!」


 そこにおりたったのはベルゼブブ。暴食の魔王。先生達は臆せずに魔術を唱える。暴食の魔王は魔力支配を使う。その場にある全ての魔力を支配。


 不意に魔力支配を使われ、ソウタは変身がとけ、本来の姿を晒されるソウタ。注目が集まる。ザワつく会場。魔力支配で即座に変身をかけ直す。


「あぁん?なんだあ?今の姿は……?」


「どいてくれ。俺はそいつをぶっ飛ばす」


「こんな雑魚ほっといて俺とやろうぜ?」


「ゴンゾ様を無視するなあ!!!!!!!」


 不意にゴンゾが喚き散らす。ベルゼブブとソウタはそちらに目を向ける。


「んん?てめえ…なんか懐かしい感じがするなあ?誰かから力借りてんのか?」


「俺は邪神様から力を借りている!!負けはない!!!」


 邪神教。遂に生徒達までにも広がっていた。この会場のどこかにもまだいるのかもしれない。それは教師なのか、生徒なのかはわからない。


「うるせえよ」


 ベルゼブブはゴンゾの背後に移動し、貫く。血を吸い尽くして魔術で体を切り刻む。


「うるせえのが消えたから俺とやろうぜ?」


 ソウタは魔力支配で支配権を取った魔術をまとめてベルゼブブにぶつけた。


「あっぶねえ!俺が魔法吸収持ってなかったら怪我してたぞ!?」


「してないんだからいいだろ」


「まあ、それもそうか。おっと!そうだった!忘れてた!俺の名前はベルゼブブってんだ。暴食の魔王って呼ばれてる」


「知ってるさ。俺はソウタだ」


「そうか……この間はすまなかったな。本気を出せなくて。上に帰って来いって言われちまってな。だが、今日は上からの命令だ。今度は…全力で…!!」


 ベルゼブブの姿が掻き消える。そしてソウタの目前に現れる。まわりの人間にはこう見えていただろう。しかし、ソウタには丸見えの状況である。受け止める。


「クククッ…やっぱりお前いいなあ!!全力で行くぜぇえええ!!!」


 ベルゼブブは風を纏う。空に稲妻が迸る。


「嵐を纏ってんだ!この状態だと雷も操れる!まあ、全盛期の八分の一ってとこか。全く力は戻ってねえからなあ。そらよお!」


 ベルゼブブはソウタに雷を落とす。会場全体が息を呑む。砂煙が舞い上がり、会場が見えなくなる。


「はぁあああああ!!!!!」


 ソウタが魔力を解放すると砂煙が一瞬で吹き飛び、砂煙がなくなったそこには雷を纏ったソウタがいた。


「お前もやっぱり纏うことが出来んのか!!こりゃいいや!だがなあ、俺には魔力吸収があるんだぜ?」


 殴り合う。殴り合う度にベルゼブブの纏っている嵐は勢いを増していく。ソウタがベルゼブブを空に蹴りあげる。


「会場のガキ共の心配したのか?優しいこった………なあ!!!なんだこの魔力はああ!!!」


 ソウタは更に魔力を解放し、手を掲げ、魔方陣を展開した。放つは雷撃。目標は暴食の魔王。


「だが、俺には魔力吸収がある!!!」


「残念だがな、魔力吸収には欠点がある」


「欠点、だと!?」


「上限がある事だ」


「なんだと!?上限などあるはずが!」


「吸収してるんだぞ?お前の容量を超えたら吸収できないだろ?」


「その程度の魔力じゃ俺のたった今消費している魔力を考えれば吸収しきれる量だ!!」


「ベルゼブブ……俺はまだ十分の一も魔力を解放していないぞ?」


 雷撃に体を呑み込まれるベルゼブブ。吸収しきれずに体は崩壊をはじめる。ベルゼブブはこの間の玉を潰した。


「逃がすかぁああああ!!」


 ソウタが飛ぶ。それを最後に会場には静寂が訪れ、ベルゼブブとソウタは消え、ゴンゾの肉片だけが散らばっていた。

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