閑話 世界記録と記憶
ふふふ、ふはは、ははは
これは世界の記録であり、記憶でもある。この記録は過去、誰にも見られず、語られぬものであった。今回は召喚された勇者達、ではなく、その他の一人の生徒と、二人の教師の記録をここに書き写そう。
一人の生徒は二つの魔法陣の重なったところにいた。つまり、二つの国から呼ばれたのである。彼の秘めたる巨大な力を呼んだのである。周りの者達などもはやおまけでしかない。
しかし、その生徒は、二つの大いなる力に同時に引っ張られた。この世界にまだ適応していない体で二つの大いなる力に同時に引っ張られた結果、彼の体は負荷に耐えられず消滅。魂だけの存在となった。
通常、魂だけの存在になると、状態を保っていられず、一日で消え去る。文字通り。消滅するのである。
しかし、彼の魂は幸運にも、魔の大森林の魔力溜まりにぶつかり、実体化に必要な魔力を取り込んだ。取り込んだ魔力を元に、体を構築。それだけでは飽き足らず、自分の強化に使ったのである。
彼の秘めたる巨大な力は、魂に刻まれた代物である。彼の魂はそれに耐えうる体を作り上げた。それを融合。人間の体を作り上げたかったが、人間の体では、耐えることが出来ない。
仮に、彼が他の生徒達と一緒に召喚されていたとしても、その力は諸刃の剣となっていたかもしれない。その点を踏まえても、彼は幸運だったのかもしれない。
二人の教師は魔法陣の中に入ることが出来ていなかった。しかし、一人の教師はヒューマ聖国の勇者召喚に引っ張られた。
別の世界からこの世界に紛れ込んだ者達は、魂、肉体の両方が強化される。次元を渡る時に、それに耐えようとして自然に強くなるのである。
魔法陣で呼ばれたわけではないので、負荷がかかり、生徒達よりも強化されていた。それに加えて勇者の称号。あの強さは必然なのである。
もう一人の教師は、ただ一人、次元の狭間に取り残される。次元の狭間は、彼を外に飛ばす、彼はノイド大陸の西、群衆国家ビートに飛ばした。ビートとは、獣族達の住む大陸にある国である。大陸の名前はビート。
大陸と共にある。そういう意味を込めて、国の名前をビートにしたのだ。さて、獣族達は人族のことは嫌いではない。交易も行っているし、冒険者ギルドの支部もたくさんビート大陸にはある。
しかし、中には獣族よりも力の弱い人族を見下すものもいる。この世界では、人種の中で、獣族が力が強く、魔族が魔力が強く、人族は両方がバランスよく高まる。そのため、獣族の中には、人族を見下す者もいるのである。
彼が落ちたのは群衆国家の南。ジャイアントホーク、パワードイーグルの縄張りである。通常の人種なら、まず近寄らない場所だが、彼なら問題ない。
因みに、この世界は中央に人族のノイド大陸。北には魔族や魔人の魔大陸。西にはビート大陸。東には魔物達の楽園。モンス大陸がある。この大陸は魔物だらけなのである。そのため、人族達は別の方向から開拓を試みている。
南には雪の大陸がある。生き物は住むことが出来ない。よって、死霊系や精神生命体の魔物はここに集まっている。
世界は記録し、記憶し続ける。世界が崩れ、滅び去るその時まで。
ふう……やりきった。




