第16話(72話) 真実
割れた仮面の上に赤い雫が落ちる。
スペクターの顔を伝う血液はまるで涙の様に流れ落ちる。
ティノンは、エリスは、スペクターの素顔を見た。
「あ…………あぁ…………!?」
エリスはその場に座り込む。
「な、なん…………で…………!?」
ティノンは呆然と立ち尽くす。
スペクターの素顔は、かつて2人と共に戦い、そして、ティノンが生命を終わらせた人のもの。
ソウレン・ビャクヤ。
「あぁ……見られちゃった、か」
スペクターはクスリと笑う。悪戯がバレてしまった子供の様にあどけない笑顔で。
かつて黒かった髪は銀色の髪が混ざり、瞳は銀色とコバルトグリーンのオッドアイ。以前よりも肌は白い。
「ふふ……初めまして、かな。2人とも」
「な、何で…………だって、私が、私が…………」
頭が混乱する。
ティノンは頭の中であの時のことを思い出す。確かに死体を見たわけではない。葬儀の時、頑なに医師が見せるのを拒否したためだ。
だがあの状態から、誰が、どうやって。
「書類上でしか死んでないからね。だから墓には誰も入ってない」
「だったらどうして!? どうして私達の所に戻らないんだ!? どうしてあの時私達の部隊と戦ったんだ!?」
「…………まぁ、話してもいいか。丁度良い機会だし、君達になら」
スペクターは静かに頷き、そして改めて2人に向き直る。左肩から流れる血は、既に止まっていた。
「まずは質問に答えようか。何故君達と戦ったか、何故第一特務機動部隊に戻らないか。答えは簡単だ。俺が、ソウレン・ビャクヤじゃないから」
彼の口から出た答えを、ティノンは理解出来なかった。
何故なら目の前の彼の容姿、声、どちらもビャクヤのものだからだ。雰囲気は少し違うが、間違える筈がない。
「馬鹿な事言うなっ!! お前はビャクヤだろ!?」
「あぁ、確かに以前はソウレン・ビャクヤだった。だが今の俺は違うんだ」
スペクターは虚無を湛えた目をティノンへ向ける。
「2年前、俺の中にはアリアという人格があった。ビャクヤとは全く違う考え方、記憶を持つ人格。いつか君達の前にも現れていた筈だ」
ティノンは過去の記憶を思い出す。
あの日、グリモアールでゼロエンドの様子がおかしくなった時、ビャクヤの声、話し方がいつもと違っていた。話し方が安定せず、時折女性の声が混ざっていた事を。
「グリモアールでの戦いで、俺は瀕死の重傷を負った。普通なら死んでいてもおかしくない程の。その時、アリアは記憶と人格を全て俺に託して消えた。……本来なら消えるべきだったのはビャクヤだったのに」
「だったらおかしいだろ、何故お前は、自分がビャクヤじゃないと言った? お前が言ったことが本当なら、今残っているのはビャクヤの人格の筈……」
「元々あった人格と記憶に、全く違う人間の人格と記憶が融合する。……どうなるかくらい想像できるよね?」
その時ティノンはやっと理解した。
全く空っぽの、マネキンや空のディスクに読み込ませる事とは訳が違う。
ビャクヤには、ビャクヤとしての記憶、人格がある。そんな中に他人の記憶や人格が割り込んできたら。
人間の頭脳には限界がある。許容量がある。1人の人間の頭脳に、2人分の記憶と人格は入らない。
「結果的に、俺の元となった2人の人格は無理矢理統合された。記憶は幸い2人のものを引き継げたようだが……俺からすれば全て、他人の記憶だ」
「なら私を庇ったのは……」
「さぁね。多分、ビャクヤの時の記憶がそうさせたんだよ。…………そうさ、ゼロエンドを追っているのも、彼女を探しているのも、全部……2人の意思だ。それを継いだ俺には、それを叶える義務がある」
言葉を聞いたティノンはその場に崩れ落ちた。涙が溢れでる。
出会う事が出来たのに。目の前にいる彼は、初めて自分が愛した彼ではない。
全くの別人。
「そんな事……関係無いですよ……!!」
その時、背後からエリスが歩み寄る。覚束ない足取りで、手には銃が握られていて、顔は涙で濡れていた。
「貴方の中身なんかどうでもいいんです……貴方が今まで何をして来て、そして今誰かだなんて関係無いんですよ!!!」
スペクターの胸を、半ば寄りかかるようにして掴み、ガタガタと震える手で銃口を当てる。
「私達の、所に、帰って来て下さいよ……!! ツキミさんの足の事、謝って、償って下さいよ!!! 皆待ってるから……私達が、待ってますからぁ!! ビャクヤさぁん!!!」
スペクターは銃口を握り、下に下げた。
そして右腕で彼女を抱きしめた。
「冷たいだろ、俺の右手は。もう、君達とは違う世界で生きているんだ」
「あっ…………」
そのまま当身を受け、エリスは意識を失う。
力無く倒れ込む彼女を地面に寝かせた。
「……俺から話すことはもう無い。君に渡した情報の中に全てが入っている。そっちは任せたよ」
「ま、待って!!」
ティノンが駆け出そうとした時、空から突風が吹き荒れた。見上げるとそこには、小型の機動兵器輸送艦が降下していた。
ディスドレッドの手の上に立ち、スペクターの姿が離れていく。
「待ってビャクヤ!! 私は、私はお前に……!!」
必死に伸ばした手。愛する人の名を叫び、ティノンは止めようとする。
スペクターはそれを悲しげに見つめ、それを誤魔化すように笑ってみせた。
「さようなら、ティノン」
輸送艦が空を横切ったその時、既にディスドレッドの姿は無くなっていた。
数日後。
エリスが医務室の扉をノックすると、中から「どうぞ」という声が響く。
中に入るとそこでは、エリスの来訪を嬉しそうに待ってい姿があった。
ベッドで横になっていたツキミの上半身が起き上がる。
「ゼナさんは?」
「ガルディオンの調整で呼ばれました。それまで私の面倒見てもらってましたし、気分転換にも良いですね」
「そう、ですか」
花瓶の水を取り替え、新たに買って来た花束を差す。
「はい、差し入れのお菓子です」
「あ、ありがとうございます! わぁ、プリン!」
ツキミは子供のようにはしゃぐと、プリンを夢中で頬張り始める。
「美味しい! 何処で売ってたんですか!?」
「私の手作りです」
「え、手作、えぇ!? 凄いです! 今度作り方を教えてください!」
「はい、必ず……」
明るい表情のツキミとは対照的に、エリスの表情は浮かなかった。
その視線は、包帯を巻かれた右足を向いていた。
「具合はどうですか?」
「まだ安静にしてなきゃいけませんけど、大丈夫ですよ」
「大丈夫…………ですか」
そんな筈は無い。
彼女の右足は太腿の半ばから先が無かった。骨の半ばから断ち切られていた為、義足の作成にも時間がかかるらしい。
生命は助かっても、心は深く傷ついているに違いない。
「ごめんなさい、ツキミさん」
「ど、どうして副隊長が謝るんですか!? これは、これは私の実力不足のせいですよ。……確かに最初は辛かったですよ。痛かったし、見るのも嫌だった。でもゼナちゃんやエリス副隊長、ティノン隊長達もお見舞いに来てくれて……もう皆に心配かけられないってなっちゃって! ほら、私がへこんでたら、その、皆も暗くなっちゃうかなって……えへへ」
「……」
エリスはツキミの言葉に仕切りに頷く。そして彼女の笑みが見えた瞬間、思い切り自らの胸に抱いた。
「えぇっ!? ちょ、エリス副隊長!?」
「貴女のそういうところが羨ましい…………貴女のそういうところが、大好きです……!!」
忘れていた、この気持ち。
誰かを愛していなければ生まれない気持ち、愛しているものの為に戦う覚悟。憎しみや復讐に翻弄されていた自分に、彼女はもう一度取り戻させてくれた。
今のエリスの笑みは、かつての太陽のような輝きを取り戻していた。
「…………よっと! はーい、ガルディオンの調整終了!! ゼナちゃん、ありがとー!!」
ハッチが開き、ガルディオンの中からゼナが姿を現した。整備橋の上に降り立ち、今一度カスタマイズを受けた自分の機体を観察する。
背部に増設されたバックパックブースター、サイドアーマーに移植されたガルディオンの脚部スラスター、頭部、胸部、脚部の増加装甲。そしてその背には、ツキミ機のロケットランチャーが懸架されている。
その姿は、かつてのグリフィアBM型に通ずるものがあった。
「ごめんね。時間もないからニコイチカスタマイズになっちゃって」
「構わないわ。……むしろ、ありがとう」
ゼナはミーシャに一礼する。
「いつの間にか仲良しになったんだね」
「最初は……正直な話、見下してた。でもあの子は私を助けてくれた。恩義には、報いたいから」
「えへー。良いと思うよ。じゃあツッキも連れて行ってあげな!」
肩をバンバンと叩かれ、ゼナは慌てて整備橋の手すりに捕まる。迷惑そうな視線を向けられ、ミーシャは舌を出して謝罪した。
暗い自室。
ティノンは新たな任務を確認する。
ゼロエンドの回収。極秘任務につき、第一特務機動部隊のみで行う事。増援や支援は認めない。
ここ数日間、ティノンは様々な場所を引っ張り回されていた。何の事はない。ゼロエンドが行方不明になった経緯、そして前回の輸送任務についての説明。ガウェル大佐の釈明に付き合わされ、口車を合わせて事態の隠蔽の手伝いをさせられていた。
今回の任務は詰まる所、ガウェルの身の潔白を示す為のものだ。
ティノンは端末を開き、スペクターから譲渡されたファイルを次々と開いていく。
そこには傭兵部隊、グリモアール、それらを経由してグシオスに横流しされていた資材、機動兵器、情報ファイルの履歴が入っていた。ご丁寧に傭兵部隊との取引履歴の中に、取引相手のIDまで含まれている。
これらを突きつければガウェルを告発する事は可能だ。だが万が一シラを切られた場合の、トドメの一撃が必要になる。
「もっと、決定的な何かが…………ん?」
ファイルの中に、不自然な名前のメッセージのファイルが紛れ込んでいた。
「遺言……? 何かのバグか?」
訝しみながらも、ティノンはファイルを開いた。
するとファイルの中には一本の動画。自動的に開かれると、そこには彼の姿が映し出された。
右腕は肩から先が無く、両足も膝から先を失ったビャクヤの姿。回復はしているようだが、依然その目は虚ろな銀色だった。
[なんて、言えば、良いのかな……? まぁ、いいや。これはね、文字通り、僕の遺言だよ。うん、ソウレン・ビャクヤとしての、最期だ。だからさ、つまらない話だとは思うけど……聞いて、欲しいな]
ティノンは、彼の最期の言葉に聞き入っていた。証拠探しも忘れ、ただ、聞き入っていた。
しばらくして動画は終わった。再生が終わった瞬間、動画はファイルごと消失した。二度と会う事はない、と言わんばかりに。
「…………あ、あああぁぁぁ…………う、く…………ううぅぅぅ…………あぁ……!!!]
静かに、彼女の慟哭が響く。
涙は雨のように机に降り注ぐ。しばらく止む事はなかった。
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「おいスペクター、仮面のスペア出来たぜ」
ベレッタは壁に寄りかかり天井を見つめるスペクターに仮面を投げ込む。仮面は彼の肩にぶつかり、床を転がった。
「いらないのか?」
「化けの皮が剥がされちゃったら、もう意味は無いよね」
「もっと言えば俺とゼオンのおっさん、後はウォーロック達には意味ねえな。マックス艦長とマクシィさんから隠すには必要か」
「その意味は無い」
すると廊下の奥から、マックスが歩いてきた。その後ろにはマクシィの姿もある。
「まさか、お前さんだったとはなぁ、ビャクヤ少尉」
「俺はスペクターです。ビャクヤ少尉は戦死した筈では?」
「……ハハ、本当に別人みたいだなぁ。顔はそっくりなのに」
マックスは懐かしむように、それでいて悲しむ様に笑った。後ろにいるマクシィは全てを察したのか、目を伏せ、一礼した。
「ビャクヤ少尉の事は、マックス艦長からお聞きした事があります。…………ですが貴方は、別人なのですね?」
「えぇ、その通りです。今後も変わらぬお付き合いをお願いします」
複雑な笑みを浮かべながら、マクシィは去って行った。マックスもそれを見ると、またな、と言うように片手を上げ去った。
「スペクター」
と、入れ替わりに声が響いた。
そこにはウォーロックの姿があった。その後ろではリムジーとノルンが心配そうな表情を浮かべていた。
「しばらく見ないと思ったら、何だ、仮装ごっこはやめたのか?」
「おいウォーロック! 何いきなり挑発してんだよ!」
「黙ってろリムジー」
ウォーロックがスペクターに詰め寄り、2人の距離が縮まる。
「俺なりに、お前に言われた事について考えた。……俺には自分の罪を背負いながら、それでも目的の為に戦い続ける事の難しさが分からなかった。あぁ、分からなかった…………だから」
スペクターの瞳を真っ直ぐに見据える。仮面で隠れていた目が、ウォーロックを見つめている。
「俺は戦う事の罪を受け止める!! 例えどんな事が待っていようと、もう自分を偽らねぇ! 自分の罪から逃げねぇ!! 馬鹿な俺に出来んのは、こんな当たり前の事だけだ」
「充分な進歩じゃないか」
「あぁ。でも、お前も仮面で俺達を欺いてただろ? 互いに、自分のけじめはつけなきゃな?」
「うん、分かってる……さ!!」
次の瞬間、2人は互いの左拳を、互いの頬に打ち込んだ。
「ちょっと!?」
「何してんのよ馬鹿!!」
リムジーとノルンがウォーロックを、ベレッタがスペクターを受け止めた。2人の頬には赤い跡と、笑みが刻まれていた。
「これでチャラ……って事で依存はない?」
「あぁ、満足だ……スッキリしたぜ」
今まで見た事ない様な快活な笑みを浮かべ、ウォーロックは去って行った。去り際、リムジーとノルンがぺこぺこ頭を下げながら。
「全く、痛いなぁ」
「ハハ、化けの皮が剥がれたんだ。そのくらいで済んで良かったな、ビャクヤ」
「…………だから俺は」
「誰がお前に言ったよ。俺が言ったのはお前の中にいるビャクヤだ」
スペクターとベレッタは笑い合う。形は違えど、2年前と同じように。
「……はぁあ。こんな状況で出て行ったらおじさん、クウキヨメネー奴になっちまうか」
廊下の曲がり角。ゼオンはニヤつきながらその場を後にした。
正体バラしてどうすんだ、と説教の一つでも垂れようかと目論んでいたが、あの様子なら言った所で無駄だろう。
ソウレン・ビャクヤが生きている。このことを知られて困るのはグシオス側だ。グシオスには奴、トリックフェイスがいる。スペクター、もといビャクヤはバイオレストア、及びEA計画の根源ともなっている、アンブロシア計画の生き残りであり、唯一の成功例。
奴の手に渡れば、世界の倫理も法則も捻じ曲げられる。
もう二度とクラウソラス家の様な悲劇を生み出してはいけないのだ。
それが自分や総司令官の様に、計画に加担した者達の義務、約束なのだから。
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頭部が破壊された死神ーー機体コード、デュランハデスがガラディール鉱山内にある格納庫に移送された。
「あぁ……何と痛ましい姿に…………よよ…………」
トリックフェイスは身体をくねらせながら地面に伏せる。咽び泣く様に研究員達が困惑していると、今度は飛び上がる様に立ち上がった。
「ま、セカンドブレインシステムのおかげで頭取っ替えればいいだけだもんね! 何の問題もないかぁ!!ってそんなことよりもだよ〜ん!!」
カサカサと走り寄り、中にいるパイロットに対してまくし立てる。
「あのさぁ! 足がタンクの砲撃機にやられるとか恥ずかしくないぃ!? 君の戦闘技術は素晴らしかった様な気がするんだけどぉ!?」
「……」
「あ、余計な事喋らない様に脳味噌弄ったんだった。でもそれ私が言ってる事、余計な事扱いされてるってことじゃん!! き〜っ!!」
「何遊んでんのさおっさん!」
デュランハデスのパイロットと戯れるトリックフェイスに、業を煮やした様に少女が叫ぶ。
その少女は白髪を三つ編みにしているが、2年前とは違い1つだけ。身長や体格はそこまで変わっていないものの、その灰色の瞳を宿した顔立ちは以前よりも落ち着いたものになっていた。
「死体とお話しなんて悪趣味やってないで仕事しろよ! とっととヴォイドリベリオンの改造終わらせろ!!」
「あぁんもう! 遊んでるのは貴女でしょうフブキちゃん!! シラキ博士の監視はどうしたのよん!?」
「嫌よあんな陰険博士の監視なんて! グチグチ意味分かんない事ばっか言ってるしさ、それに彼奴いるから余計嫌だ!!」
「仲良くしなさいな!! 少佐の妹さんよ!? コネ作れば昇進出来るかもよ?」
「興味ねーし。ったくさぁ……」
フブキは三つ編みを弄りながら、吐き捨てる様に呟いた。
「何で前に殺しあった奴と仲良くしなきゃなんないのさ。意味分かんない」
パソコンのキーボードを叩く音が部屋に反響する。
シラキは出来る限り背後を振り返らない様にする。油断なく自らに銃口を向ける、無表情な監視者がいる為だ。
自分は余計な事を考えず、彼らに協力していればいいのだ。出来る限り遅延し、助けが来るまで。
「あれ? この辺の回路が……だったら……」
そう、こうして迷っているふりをして。尚且つ業を煮やして彼らに始末されない様に。
「……ねぇ、休憩がてらお話でもーー」
重い金属音、銃を鳴らして彼女は返答する。
「なら、独り言でも話そうかな……」
シラキはわざわざ前置きするとキーボードを叩く指を止め、まるで昔話をする様に話し始めた。
「楽しかったなぁ、あの時は。クラウソラス先生にソウレン先生。2人の師匠とその子供達、それと……アリアさん。クラウソラス先生の妹さんなだけあってさ、とっても頭が良かった。彼女はパイロットだったけど」
「…………」
監視者は相槌を打つ事も、黙らせようともせず、黙って耳を傾けている。銃口は油断なく向けられているが、引き金を引く様子はなかった。
「……でもあの日、天翼が舞い降りたあの実験以来、全てがバラバラになった。貴女も、まさかアルギネアにいただなんて知らなかった。挙げ句、私と同じアクトニウム研究機関にいたなんて……」
「…………」
「ねぇ、どうして? どうして貴女は今、グシオスにいるの? 一体何がーー」
「独り言じゃ、なかったの?」
いつの間にか近づいていた監視者は、シラキの頭に銃を突きつけていた。撃鉄を上げる音、次いで引き金に指をかける音が鳴る。
「……う、うん。独り言よ、これは」
「そう。なら早く作業に戻りなさい」
冷酷な言葉と共に銃口は下げられた。
グシオスの国旗が刻まれた、特殊部隊の制服。蒼銀の髪、コバルトグリーンの瞳。シラキが知る昔より、美しく、大人びた女性に成長した姿。
「エルシディア……どうして……?」
続く
次回、Ambrosia Knight 〜遠き日の約束〜
「奪還任務」
取り戻せ、己が過去を、栄光を。




