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第5話 エヴォルヴ・アーマー

「おいベレッタ、結局パイロットはどうなったんだよ」

「怖い怖いティノン中尉に引っ張られて医務室送りだよ。てかガロットのおっさん、今更なんだけどよ」


 先ほどビャクヤとティノンを見送った若者、ベレッタは針山のような頭をガシガシと掻きながら尋ねる。

「これ、ただの機動兵器じゃねえだろ?なんか上の連中から聞いてねえのか?」

「んなもん俺が知るわきゃねえだろうよ」


 ガロットは、その老体とは思えない筋骨隆々とした身体をデータベースに向かわせたまま答える。


「あぁ、またダメか‼︎ 完全にブラックだな、こいつは」

「俺も手伝うか?猫の手も借りてえだろ?」

「テメェの手なんざハムスターの手より使えねぇやい」

「んだとこの筋肉ダルマジジイ‼︎」

 整備橋から落ちそうになる程身を乗り出して怒声を上げるベレッタを無視して作業をしようとした時だった。


「ガロットさ〜ん、総司令部から何か届いてますよ〜」

 整備班の一人が紙束を手にガロットの元へ駆け寄る。

「おう、お疲れさん」


 ガロットはそれを受け取ると、大きな手のせいでかなりめくりずらそうにしながらも、じっくり読み進める。



  と、ガロットはピタリとその手を止めた。



「おっさん、なんて書いてんだ?」

「ふ……ふ…」

「どうした、とうとう老眼が来ちまったか?」


 ベレッタの茶化しにも応じず、ガロットはただ肩をワナワナと震わせてばかり。


 だが、すぐに火山は噴火した。



「ふざけるなあああああああああぁぁぁ‼︎」



「おわぁっ⁉︎ 何だよ、ってうお!落ちる落ちる落ち……うわあああああ」


 ガロットがクシャクシャにしてしまった紙にはこう書かれていた。


  《EA計画の要項について》

 整備班は本部に着き次第、試作型EAの開発に取り掛かってもらいます。

 本部に着く前までに、収容した機動兵器の解析をできる限り進めてください。

 

   開発の期限は、三ヶ月です。





 医務室内の雰囲気は妙だった。

 ビャクヤの傷を顔をしかめて診る医師。

 ビャクヤのことを警戒した面持ちで睨むティノン。

 そして、ガタガタと震えて蒼ざめているビャクヤ。


「あ、あの、どうなんですか?僕の腕…」

「傷口は塞がってるんだかね。んん、何だろう、この跡は…」


 医師が首を傾げていると、突然ティノンはビャクヤの服の襟を鷲掴みにした。


「中尉…彼は患者だぞ?そんな手荒に…」

「傷が塞がってるならもういいだろ。いくぞ」

「くうう、首がぁ…」


 引き止める医師を置いてけぼりにし、ビャクヤは引きずられるように医務室を出た。


 苦しさの余り足をバタバタさせると、ティノンはパッと手を離す。手が使えないおかげで、地面に尻餅をついた。


「痛っ⁉︎ 何でこんな……」

「まだ記憶喪失のフリか。いい加減認めろ」

「だから何を……」

「あの機動兵器を使って、グシオスを駆逐したことだ!軍人以外が機動兵器に搭乗するのは軍法上固く禁じられている。一般常識だろうが!」

「やってないよ!…それに…」


 ビャクヤは地面に伏せたまま、声を絞り出した。


「フラムシティを襲ったグシオスは…軍法を守っていたの…⁉︎」


「っ‼︎」

 ティノンは言葉に詰まる。

 口を固く結び、拳はそれ以上に固く握り締めていた。

「全部見たんだ…グシオスのせいで、みんな…」



 瞬間、バチリとビャクヤの脳内に痛みが走った。



 全部見ていたのよ…‼︎

 あなた達のせいでこの街は…ビャクヤは…‼︎



 思い出した。


 いや、正確には記憶の共有が始まったのだ。


 と同時に、


「そんなこと…分かってるに決まってるだろ‼︎」


 ティノンは慟哭に近い声を発し、倒れたビャクヤに馬乗りになって肩を押さえつける。


「あぁ、そうだよ‼︎全部、全部グシオスが悪いんだ!あの機動兵器一機の為だけに民間人を巻き込んだグシオスが…」


 彼女が自身の想いを吐露している間にも、アリアの記憶はビャクヤの記憶と結合していく。


「だけど…間に合わなかった私達にだって…責任は……」


 ティノンは力なくビャクヤの肩を握る。

 その時だけ、表情は壊れてしまいそうなほど弱々しい少女のものに戻っていた。


 だが、ビャクヤは知っている。


 君達は悪くない。

 そう口にしようとした時だった。


「ティノン、何をしているの?」

「…!エル…」


 その姿を見た時、最後の記憶が結びついた。


「エル…シディア」


 そのコバルトグリーンの瞳と、ビャクヤの銀色の瞳が交錯した。







 ガロットは頭を抱えていた。


 あの指令書を見てすぐ、整備班全員を総動員して例のEA(エヴォルヴ・アーマー)とかいう機動兵器の解析を始めたのだが。


「ベレッタ、テメェどう思うよ?」

「どうって…」


 ボロボロの身体を引きずって現場に立っていたベレッタは、すっぱりと言い切った。

「ありえねえだろ」


 と、二人の背後からある人物が姿を現した。


「ほう…これが例の…」

「か、艦長⁉︎」

「マックス…テメェ何しに来たんだ」


 ベレッタの慌てようと、ガロットの冷たいあしらいに苦笑した男、マックス・アドミル。


 ガロットと違い、ほっそりとした身体に顎に蓄えた白髭という姿は、本職の艦長というより恰幅のいい老紳士だ。


「そういうなガロット。私も気になってね。艦を預かる身として、艦載する機動兵器は把握しておかねばならんだろう?」

「マックス、なら覚悟しとけよ。こいつは曰く付きなんてレベルじゃあねえ」


 ガロットは一部の装甲が剥がされ、フレームが露出したゼロエンドを見上げて実態を告げた。



「……どういう、ことだね…⁉︎」

 そういうマックスの顔は蒼白だった。



「つまり、こいつは現代を上回る技術で作られた、十五年前の機動兵器なんだよ」





  続く

な、なんだってー!


ということで5話です。今回は主役ロボット、EAについて少し触れた回でした。…の割には今回で一個しかわかってねぇじゃん!うがあああああああ!っと一人発狂しかけていたのは秘密です。


次回はやっとビャクヤとエルシディア、二人のターンです。もちろんティノンも、そして他のメンバーもちょっと出るかな?

そしてEAの具体的な秘密も少しわかるかも……?


それでは、今回も拙い小説と長〜い後書きを読んでくださり、ありがとうございました

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