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しがない支援者の英雄譚  作者: 叢雲@ぬらきも
第一章 英雄の足跡
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ニーナ・パナケイア

 ニーナ・パナケイア。それが私の名前。職種クラス僧侶クレリック見習い。家系の影響でそれしかなれなかったと言うこともある。

 私の家系はユークリッド王家に使える王宮治癒魔法士。でも私にはお父様やお母様のような、素晴らしい治癒魔法士にはなれない。

 厳しい言い付けを守り、これまで必死に努力しても結果は変わらなかった。

 私はパナケイア家の恥なんだ。幼い頃からずっと魔法の練習をしてきたにも関わらず、使えるのは初級治癒魔法と解毒魔法だけ。

 両親は早々に私を見限り、妹を溺愛した。妹は私と違って才能に満ち溢れていた。

 

 今では王宮治癒魔法士筆頭として、母の後継として期待されている私とは大違いの妹。

 ある日、子供には余る大金を持たされ、パナケイア家から事実上の絶縁を申し渡された。

 僅か14歳の子供がたった一人で生きていくと言うのは、あまりにも過酷な現実だった。

 そんな時、ユーリ君に出会った。彼はお世辞にも善人とは程遠い外見をしていた。

 目つきは怖いし、口も悪いし、なによりめんどくさがりやだった。


 それでも、彼は私を救ってくれたんだ。

 自分自身、今日の食事すら危うい生活をしているというのに、世間知らずの私にあれこれ世話を焼いてくれた。


「せっかく魔法使えるんだから、冒険者になったら?」


 そんな彼の一言で、私は冒険者になった。

 別にお金なんて欲しくなかった。地位や名声なんて欲しくなかった。

 私はただ、いつも傷だらけの彼の支えになりたかった。

 それだけだったのに―――。


「はぁ? いくらなんでもこれはないだろ?」

「魔法もダメ、剣もダメ。ただの荷物持ちなんていらないでしょ」


 こんな私をパーティーに誘ってくれた戦士ファイターのジグ君と魔法使い(ウィザード)のダリア君。

 とても優しくて、いい人だと思っていた。だからユーリ君もパーティーに誘おうと紹介したんだけど、彼を見た二人の第一声は侮辱の言葉だった。

 少しでもユーリ君の支えになれればと思って紹介したことが裏目に出た。

 その時私は、サポーターがどんな扱いを受けているか知らなかった。


「なんだよ。お前も結局一緒か」


 あの時の言葉と、ユーリ君の目は忘れる事が出来ない。

 全てを諦めたような、何も感情の映っていない冷たい目。

 違うと否定した。私は本当にユーリ君の力になりたかった。

 

「仲間が出来たんなら良かったじゃん。俺みたいな役立たず(・・・・)と組んでくれてありがとう、ニーナ・パーシバルさん。お世話になりました」


 それからユーリ君は一言も喋ってくれなくなった。

 目も合わせてくれなくなった。

 話しかけようとするとすぐにいなくなってしまうようになった。



 私はただ―――謝りたかっただけなのに。


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