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在る男の再生、あるいは転換――  作者: ゆきのいつき
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2 状況

目が覚めた時まず感じたのは体がまったく動かないってことと、そもそも目もおかしくなったのか? あたりの様子すら満足に窺うことが出来なかったってことだ。どうやらどこかに寝かされているようではあるが、何らかの機器が動いている音がかすかに聞こえて来るくらいで、どこに……どう寝かされてるかすら分からず……、なんとも落ち着かない。

 体は動かないというよりは、そもそも感覚がほとんど感じられず動かすどころの話じゃなかったし、目は光は感じとれるもののおぼろげにしか見えず、声を出して人を呼ぼうにもかすれた……空気がひゅーひゅー鳴るような音が出るだけでまともな声にすらならない。唯一耳だけは機能しているようだがそれだけでは何の意味もなさない。


 まったく自分は一体どうなってしまったのか?


 そして何より短い周期で襲ってくる全身を駆け巡るかのような痛烈な痛み。声が出たら間違いなく泣き叫んでいただろう、そんななんとも最悪な痛みが繰り返し俺を襲っていた。

 断続的に続く痛みに耐えられるわけもなく、せっかく戻った俺の意識だったが、すぐまた朦朧とし出しさっさとその意識を手放した――。




 二度目に目が覚めた時は前回よりは少しましになっていた。二度目……だよな? いまいち自信はないが再び目を覚ました俺はすかさず自分の状況を確認しようと努力を始めた。

 苦しいばかりだった全身を襲う痛みはなりを潜め、どうやら俺にも穏やかな時間を送ることが出来そうな感じだ。視界のほうも多少改善の兆しが見えて来てて、天井の模様がおぼろげながら見えるようになった。声も風が抜けるような音じゃなく、多少ガラガラ、かすれた感じではあるものの、人が出してる……声ってわかるものになってきた。まぁちょっとやけに高い……、まるで子供みたいな声に聞こえてしまうのはまだしっかりと喉が治ってないんだろうと思うことにして、問題を先送りにした。ちなみに体の方は相変わらずぴくりとも動かないから自分の体の様子を窺うなんてことは全く不可能だ。


 治ってない……なんて思ったのは、自分自身がどうやら実験中に不測の事故にあって死にそうな目に合ったに違いないとの認識に至ったからに他ならない。俺が覚えているのは加速器の中のサンプルが急に光を発して、それに飲み込まれたってところまでだが……、あれが原因で今の状況に陥っているのはまず間違いない事実だろう。ま、そもそも体が動かないんだから事故に合ったって考えるのは当然の帰結とも言える。

 あの光が俺にどんな影響を与えたのかは知る由もないが、現状から鑑み、どこかの医療施設の……さしずめ集中治療室にでも放り込まれてるってところじゃないのか? と想定している。死ぬような目にあったと思うのは、おぼろげながらも覚えているあの最悪な痛みを経験したって事実から考えたにすぎないが実際のところはどうなのか? 早く真相を確認したいものだがまともに喋れない、動けない状態の俺ではどうしようもない。そもそもこの部屋というか病室? で人に会ったことがない。俺が寝ている間に来ているのかもしれないが……、少なくとも二度、こうして俺が目を覚ましていることは管理者側は間違いなく把握しているはずで、そうであればすぐ何らかの対応をしにきてもいいはずなのにそれもない。


 解せない。

 俺の灰色の脳細胞をもってしても……、まったくもって解らないことだらけだ。


 くそっ、また眠くなってきた。長考したのがいけなかったのか、まだまだ体力が回復出来てないのか……、俺の体はまたもやあっさりとその意識を手放した――。





 雫石チーフエンジニアが率いていた研究チームの突然の事故から一ヶ月が経とうとしていた。

 あの事故は今をもって原因がはっきりしない……、でもこの施設の中で起きた事故としては最悪の結果を招いた事故だった。雫石チームのメンバー17名の内、その時生き残ったのはわずか三人。残りの一四人はすでに死亡しているって状況だった。しかも数日後、三人の内、二人は収容先の医療施設で残念ながら死亡が確認され、結果的にはたった一人しか生き残らなかったことになる。

 敷地内の複数ある監視カメラで捉えた映像を見ると、一瞬のうちに光が発生し何らかの爆発のように見える現象が起きていたのは間違いないけど、実際の事故現場に入って見れば研究室内は整然とし、爆発なんて微塵も起こった様子はなかった。まぁ光が発生していた際も周囲に衝撃や爆音は届いておらず、もちろん火災なんてものも発生していなかったのは分っているからある意味当然なのだけど。


 そうであればなぜ最悪の結果と言えるのか。

 十四人の人命を亡くしたというのはもちろんだけど、何しろその死に方が異様だったからに他ならない。


 十四人の死体は無残という言葉が陳腐に思えるほど酷い有様になっていた。

 全員、誰が誰やら判別することはまず不可能。というよりそもそも人間の姿をしていない被害者がほとんどで、人の姿を留めていたとしても……体の部位の少なくない箇所が……人間以外のモノへと変わり果てていた。


 噛み砕いて言えば、獣や鳥、爬虫類や両生類のような……多種多様な生き物と混じり合った状態になったモノに変わり果てていた。中には見たことも聞いたこともないような生き物の姿もあった。そんな人と獣が入り混じった生々しい様子と、見た目のグロテスクさも相まって、最初に現場に突入した人たちの中には気分を悪くした人が多数出たようだ。


 更に不思議なことに被害者はみな成人男性や女性だったにもかかわらず、そのサイズがやたら小さかったり、逆に異様に大きかったりして、どうしてそんなことになったのか……、まさに解らないことだらけの現場であったようで、皆早くその場から立ち去りたいとの一心で相当早くの遺体収容作業となったようだ。


 うん、映像を見てるだけでも吐きそうなんだもの、現場の人たちにとってはトラウマもの……、マジお気の毒様としか言いようがないわ。


 でも、そんな悲惨な状態だった十四人にくらべ、こっちに収容された三人は見た目は人間といえる状態だった。生き残った三人の内一人はリーダーだった雫石チーフだ。残り二人の内一人はチーフと一緒に粒子加速器のそばで作業をしていて、もう一人もそのそばで倒れていたらしく……、どうやら光の発生源近くに居た人ほど人に近い形でその状態を維持出来ているようで、事故の検証をしているチームからの報告を見てもそれで間違いないのではという見解が多数を占めている。

 ただ雫石チーフ以外の二人は結局亡くなってしまったわけだけど……、その姿はいささか他の十四人とは違っていて、なんというか……その、ファンタジー?


 何をバカなって思われるかも知れないけど、獣人(先に亡くなった十四名は要は獣人っぽい姿になったといえば言えるよね。まぁほとんど獣の方だったけど)が居ればエルフやドワーフが居たっておかしくないわよね? ね? 私ファンタジー小説読むの結構好きなのよね。


 っと、話戻すと結局亡くなったとはいえ二人は見た目小説や映画で出てくるエルフのような姿になってて、体毛は日本人では在り得ない金髪、目の色はグリーン、肌の色は真っ白で止めに耳は尖がってるときた。どうこれ、エルフって言ってもいいよね?

 更に二人それぞれで違いもあって、これは他の十四人でもあったことだけど、体のサイズに差があることだった。一人は幼稚園児、もう一人は小学生の高学年くらい。共通してるのはどちらも小さくなったってことだろう。(これって若返ったって言えない?) 更におかしなことがある。くだんの被害者二人の身元ははっきりしてて二人とも成人男性、一人は二十八歳、そしてもう一人は三十四歳。どちらもいい年した男であった。それが子供サイズになっただけでももちろん驚きなのだが更に! 更にである、なんというか一人は性別まで変わっていた。男(XY)から女(XX)に変化していたのである! これが驚かずにいられようか。


 若返りに性転換。更には外見の変貌!


 もう私の頭はいっぱいいっぱいである。


 しかしそれにしても残念だ。そんな生きたサンプ……、あ、いや、患者さんが亡くなってしまっただなんて……。やはり急激な体の変化に耐えられなかったのか? それとも他に要因があるのか?


 まぁ、体組織のサンプルは大量にあるんだから今後の実験材料には困らないし……、



 なにより、ふふっ。



 生きたサンプルはまだ一人残ってる。

 それも完璧なのが。



 ああ、これからがすっごく楽しみだわ。



 ふふっ。


 うふふっ――。



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