月光
明りを消した部屋に青白い月光がキラキラとまるで音を立てているように差し込んでいる。
月光は全ての輪郭をぼやかし幻想的に見せていく。
それは今この部屋も例外ではなく僕は幻想的に揺れる彼女の白い肌に釘付けになっていた。
髪が綺麗に束ねられたうなじは、白く月光に照らされ僕の心に突き刺さる。
「流星群見れるといいね。」
月光に照らされ優しく微笑む彼女に僕は只々見とれていた。赤い唇でさえ淡くほのかな色気をまとっている。
「どうしたの?」
不思議そうに小首を傾げて見せる仕草も僕を惑わせるには十分な材料だった。
卑しい僕の心は今すぐにでも彼女を僕の薄汚れた暗黒で汚してしまいたいほど、欲望という青白い炎で燃えている。
そしてそれは月光でより煽られどうにかなってしまいそうな程、胸を焼き尽くしていた。
言葉にしてしまったら彼女はどう思うのだろう。
君に触れたい。その髪を撫でたい。そっと抱きしめて・・・
邪な感情が頭をもたげる。
「あ!」
不意に彼女が声を上げた。
「今、流れ星が・・・」
僕は視線を空に向けた。
半月の月が明るくあまり星が見えない。それでも目を凝らす光の線が天に描かれる。
(何をお願いする?)
さっき彼女が聞いたセリフを思い出す。
僕が願うこと・・・それは深く暗い青白い炎の感情。それを消してしまうこと?
いや。今すぐ君を小鳥のように籠に閉じ込め僕の愛を教えてあげること・・・
目を伏せる。
むくむくと燃え上がり出す炎は僕を焦がしていく。
彼女が欲しい。他には何もいらない。
人を愛することがこんなに苦しく切ないとは誰も教えてはくれなかった。
無邪気に星を見ている彼女を僕の感情はいつか汚してしまうのか?
いっそ、ここに閉じ込め誰の目にも触れないようにしてしまいたい。
狂気にも似た僕の願いは月の光でもっと、もっと深く澱んでいく。
「あのね・・・・」
彼女がゆっくり僕の方に振り向いた。
それは思いもしなかった行為だった。
ゆっくりと彼女の顔が近づく。
僕の耳元に優しく囁きかける。
「月には魔力があるんだって。」
そう囁いた彼女の顔は月光に照らされ、妖艶な色気を纏っていた。
「え・・・」
時間の止まった瞬間だった。僕たちは月の魔力に照らされ。ふわふわと幻想の世界を漂い始めた。
願いは・・・・・
月だけが知っている。