笑う者が幸せになる。
笑う者が幸せになる。
by メアリー・ぺティボーン・プール
第一区 軍事施設 大門前
道の端に目をやると、男が落としていったナイフが落ちていた。
ポケットからハンカチを取り出し、雷斗はそれを拾い上げる。
「ん?何か落ちてたっすか?」
「いや」
獒に見えないように素早くハンカチで包んだナイフを懐にしまう。
「『いや』って、今絶対、何か隠したっすよね!?」
「それより、今、何時だ」
「うっわ、話題そらした」
「な、ん、じ、だ」
雷斗が睨むと、獒は慌てて腕時計を見た。
「えっっと、9時ちょっと過ぎた位っす」
「・・・・・・そうか」
いやな夢をみて、見知らぬ男に刺され、スーツに穴をあけられた後の会議だ。
憂鬱極まりない。
「てか、さっきの奴どうするっすか?逃げちゃったじゃないっすか」
「あぁ・・・」
胸ポケットから「iPad」を取り出すと、雷斗は獒に画面を見せた。
「最新のiPadじゃないっすか!!・・・自慢っすか?」
「馬鹿め、ちゃんと見ろ」
画面の中では地図の上で赤い点が点滅し、ゆっくりと動いている。
「ジョークっすよ、ちゃんと見なくてもわかるっす、発信器いつ付けたんすか」
「刺された時あいつのポケットにいれてやった、どこかで見た顔だと思ったらあいつ、最近、話題になってる不良チームのリーダーだ」
「なんか、ニュースになってたっすよね、名前は・・・くら・・・・・倉島!」
雷斗は黙って頷いた。
「人を刺しといてびびったり、ナイフを捨てて逃げてくような奴だ、自分をかくまってくれる仲間の所に逃げるだろう」
今まで淡々と言葉を紡いでいた雷斗は急に口角を上げ、笑った。
「馬鹿が」