ハングリーであれ。馬鹿であれ。
ハングリーであれ。馬鹿であれ。
byスティーブン・ジョブズ
第一区 軍事施設 大門前
倉島は雷斗の右胸に刺さったナイフを、抜いた。
吐き気を必死に抑え、おぼつかない足取りで後ろに数歩さがった。
刺した時のイヤな感覚は倉島の手にまだのこっている。
―やややややややゃゃゃ・・・・・・やっちまったぁああああ!
やっと、自分が何をしでかしたか気づいた倉島。
冷や汗が滝の様にあふれる。
手が震えだし、持っていたナイフをみた。
―血がつき、汚れたナイフ
「うぅっううわあああああっっっ!!!!」
ナイフを道の端にぶん投げ、雷斗を見た。
「・・・・・・・・・・あれ?」
場に合わない、声を上げ倉島は目を丸くした。
そこにいた雷斗は刺されたというのに、苦しがる様子もなく、それどころか倉島より正常なくらいだ。
「・・・・・・はあ」
雷斗は嘆息し、ツカツカと、倉島に歩み寄った。
「ひっひいいいいえええええっっっっっ!!!!いだぁっ!」
後ろへ下がろうとすると足がもつれ、背中から倒れた。
起き上がろうとしている今も、雷斗は近づいてきている。
「まままま、、、、まってくれっ!違うんだっっ!俺はこんなこと本当はっしたくなかっったんだよぉぉおおお!!!」
上体を起こし、両手を前に出し、必死に弁解する。
聞いているのか、いないのか、雷斗は相変わらず冷たい視線を倉島に向けている。
雷斗が目の前まで迫って、倉島は気づいた。
「血が・・・・止まっ・・・・」
全てを言う前に、雷斗は倉島の服をつかみ半ば強引に立たせる。
「ち、違う!俺は本当に、無実だ!!助けてくれ!!!!」
「・・・・・なら、誰かの指示なのか?」
「うっ・・・」
雷斗の質問に言葉を詰まらせた。
「羽黒の指示だ!」そう言えればなんて、楽なのだろうか。
自分も捕まるが、羽黒も捕まる、おまけに刑務所の中はある意味、安全だ。
―だが、刑務所からでたらどうなる?
―羽黒達の仲間から何をされるかわからないぞ
―第一、本当に刑務所は安全なのか?あいつらなら、ムショの中に忍び込むくらい・・・
「誰の指示だ?」
「う゛ぅ、、、、うおおおおおおおお!!!!!!」
「!!」
突如、倉島は体をひねり雷斗の手から逃れると、脱兎の勢いで逃げた。
みるまに倉島の姿は見えなくなる。
「なんだ、あいつ」
スーツをみると、右胸に穴があき、血で汚れている。
振り返り、施設の中に戻ろうとすると、大門の前で獒は口をぽかーんとあけている。
―まあ、ナイフで刺されてこんな元気だったら驚くか。
「獒、今見た事は―」
「総隊長・・・流石っすね!こんな事態も考えて防弾チョッキ的な物をつけているとは!!!」
獒は目をキラキラさせながら、戦隊ヒーローを見る子供のように言う。
呆れたように、雷斗は空気を吐き出した。
獒は馬鹿です。