BOOTSEY
BOOTSEY
意味:時代遅れの・ダサイ・うざい・いらいらさせる
昨夜 とある廃ビル前にて
時間が時間だけあり、少年達がたむろする廃ビルは異様な雰囲気に包まれていた。
更にこの空気を異様とさせているのは、たむろしている少年達は皆身動きひとつせず、直立不動で一点を見つめているということだ。
その、視線の先にいる男こそが「倉島 秀」である。
鉄パイプをごつごつと地面にぶつけながら、周りを見渡す。
―どいつもこいつも、期待した目で見やがって・・・
冷や汗が出そうなほど、プレッシャーを感じながら、倉島は口を開いた。
「てめぇらも知ってるとおり、仲間が一人昨日、ぼこられた」
倉島の言葉で少年達の殺気がふくれあがる。
額の汗を拭い、言葉を紡ぐ。
「犯人は分かってる、羽黒だ」
羽黒という名前が出たとたん、少年達がざわめき始めた。
ある不良チームをまとめるリーダー「羽黒」
滅多に喧嘩に参加しないことから、超人的な噂が流れている。
「片手で力士をもった」や、「実は女」や「人間じゃない」とか、どれもこれも胡散臭い噂ばかりだ。
しかし、最終的にはこの結論で落ち着く。
「まあ、あいつは最強だよ」
そんな奴に倉島は喧嘩を売ろうというのだ。
ざわめく少年達を見つめながら、倉島は鉄パイプで肩をたたく
「仲間ぁ、一人やられて黙ってるわけにもいかねぇ、よぉ てめぇらぁ・・・―」
鉄パイプを勢いよく振り下ろす。
「反撃といこうや」
最後にニヤリと笑うと少年達は叫びだす。
「うおらああぁぁぁぁぁぁ!!!!」「やってやろおおおぜぇっっ!!」「いぃくぞおおお!!!!!」
―うっわ、チョロいw
心中で倉島はほくそ笑んだ
―こういうガキ共は、仲間だぁ、反撃だぁ喧嘩だぁ、言っときゃあ、闘る気だすんだからよぉ
「ぅっし!じゃあ行ってこぉい!」
「「「「シャアアっっっ!!!」」」」
少年達がいなくなるとビルの陰からユラリユラリと人影が現れる。
手が震えだすのを必死に抑え、倉島は振り返った。
「こっ・・・・・これで、いいんですよね?」
先ほどの男とは思えない口ぶりで、倉島は人影に問いかける。
「ね?羽黒・・・・・さん・・・・」
羽黒は馬鹿にしたような笑みを、顔面に貼り付け倉島を褒めた
「倉島さんも、いやな奴ですねぇ、自分がまとめられなくなってきたからって、チームの壊滅を別のチームに頼むって・・・・ほんと、ゲス」
「いやぁ・・・すみません」
「てか、自分で解散させるなり、チーム継がせるなりしたらいいでしょ」
「すんません」
「どーせあれでしょ、有終の美的なやつでしょ、最後までかっこつけるのって俺的にどうかと思うけど」
「いやぁ・・・・」
倉島の方が年上なのだが、立場は羽黒が優位らしい。
へらへらしながら、頭を下げる倉島の調子の良さに羽黒は軽蔑の眼差しを向け、ぼそりと呟いた。
「どーせ、ガキなんかチョロいとかおもってんだろ」
「そそそそそそそそんなことっないですよぉ!!」
手を左右に振りながら、羽黒の言葉に明らかに狼狽する倉島。
羽黒は顔を思い切りしかめ、倉島にローキックを軽くいれた。
「チッ・・・・まあ、任せてくださいよ」
羽黒はビルを見上げながら黒笑を静かにうかべる
「全てはうまくいきますから」
こうして、羽黒の計画は始まった。