Second round
Second round.
意味:第2ラウンド
第一区 廃ビル
立ち入り禁止のテープを破り捨て、昨夜、行くことが出来なかった場所に八木達は立っていた。
床には、仲間達のものと思われる血がそのまま残されていた。
八木は「ゼブラから奪った携帯」を、血がしみこんだ床に落とし、踏みつけた。
かしゃっ!
携帯は頑丈で、八木が踏んだだけでは塗装がはがれるくらいで終わる。
八木はそれを、つま先で蹴り、フロアの隅にシュートした。
その行為自体になんら意味は無い。
ただ、その場にいた仲間達の間に羽黒達への殺気がふくれあがったのは事実だ。
がちゃ
入り口が開かれる音がし、仲間達が一斉に振り返る。
八木も一瞬、「警察か」と、思ったが違うようだ。
「よお、跳馬」
「・・・・・・・こんなとこで何してんだお前ら」
跳馬はバニーをかつぎ、驚いたように突っ立っている。
八木はへらりと笑った。
「一瞬、警察かと思ったぜ、この前の抗争でここら辺も、見回り強化してるってさ」
幽霊団地で八木達を待っていると、跳馬の元へ八木から《この前の廃ビルに全員いる。早く来い》というメールが来た。
どこか、切羽詰まったような内容に留守番組と共に急いで来てみたが、八木達に変わった様子は無い。
―変わった様子は無い・・・・よな?
八木はいつも通り―――いつも以上にへらへらしている。
跳馬はそれに違和感を感じながら、バニーを床に下ろし寝かせる。
「・・・んで、何の用で呼び出したんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・これ、だーれだ」
八木はにやにやしながら、携帯をつきだした。
その携帯は、なぜか八木のものでは無い。
そんな事よりも、跳馬の目はその携帯の画面に釘付けとなった。
壁に寄りかかって座り込んでいる少年。
額と口、鼻からは血が流れ、ぐったりとしている。
服は泥だらけで、片手には携帯が力なく握られている。
「これ・・・・」
この少年には見覚えがある、カラオケの時にいたあの音痴だ。
―なんで、こいつらが、この・・・写真を・・・?
写真を見ても咄嗟に言葉が出てこない。
口をぱくつかせていると、八木が携帯をしまった。
「これ・・・お前がやったのか?」
「何驚いてるんだよ、ははっ、羽黒のチームだから警戒して大人数でかかってみたはいいが、案外ちょろかったぜ?」
雄弁に語る八木。
八木の何かが違う、それは再会したときから感じている違和感。
その正体を突き止めることが出来ないまま、だらだらと取り返しの付かない所まで来てしまった。
―もっと、はやく八木に何かを言えていれば・・・!
自責の念にかられ、跳馬は八木から目をそらした。
強く握った拳は震え、言葉も出ない。
そんな跳馬を八木は心底不思議そうに見ている。
「・・・・あぁ?跳馬、びびったのか?大丈夫だろ、俺らにはお前がいるんだからな!」
「~~~~~ッッッ!!!」
『お前がいるから大丈夫』
いつもなら、頼られて嬉しい言葉だったはずなのに、今は重い、重い、プレッシャーでしか無い。
八木にかける言葉は、もう、跳馬には見当たらなかった。
ガァァァァンッッッ!!!!
あの時と同じようにドアが開けられた。
違う点を上げるとすれば、羽黒達が顔を隠していないことだ。
後から聞いた話だが、顔を隠していたのは仲間が報復されるのを避けるための手段だったそうだ。
ならばなぜ今、顔を隠していないのか。
それは、今、ここで、全てを終わらせるからだ。
報復もさせないほどに、仲間に手を出したことを後悔させてやる。
羽黒の行動にはそんな意味が込められていた。
「君達が、俺の仲間に手を出したって解釈して良いんだよね?」
「だったら、なんだよ」
挑発する八木から羽黒は跳馬に視線を移した。
「やあ跳馬っち、君は結局、どっちに来るんだい?今ならこっちに戻っても許してあげるよ」
羽黒はつまり、仲間達の前で裏切れと言っているのだ。
最後までこいつは、食えない奴だった。
「戻るわけ・・・・ねえだろ」
跳馬の答えに羽黒は満足げに笑った。
「そう言ってくれないと始まらないよ、まっ、戻るって言っても許すつもりは無かったけどね」
部屋に充満する殺気に耐えかねた、跳馬側の一人が吠えた。
「うおおおおおおおおっっっっ!!!!!!!!!」
それに合わせ、跳馬側が羽黒達に暴力を振りかざしかけだす。
少年が、覚悟を決める暇も無く、第2ラウンドが始まった。
春休みに入ったっていうのに、この忙しさ・・・
以上だああ!!地球温暖化だああ!!不景気のせいだああ!!
(地球温暖化や不景気は、忙しさに全く関係ありません。宿題をさぼっていただけです)




