Gosh!
Gosh!
意味:まぁ!・なんてこった!
某カラオケ店
昨夜の出来事を思い出すが、カラスには跳馬の言ってる意味が分からない。
「おい、何の事だ」
羽黒はなるほどと言うように、手を「ぽんっ」と打った。
「カラスはあの時、どっか、買い物行ってたよねー、そりゃ、分からないわけだ」
肩をすくめ「ざんねん」と羽黒は笑う。
いちいち羽黒の態度は、かんに障る、今頃「なおせ」と言っても手遅れなのだろうが。
「そうだねーカラスがいないときだから・・・45分位前かー」
45分前
すさまじい騒音で跳馬は目を覚ました。
誰かがジャイ〇ン並の音痴のくせに声高らかに歌っているのだ。
―なんで・・・こんなとこに・・・・
昨日の出来事が早送りで再生され、全て思いだし、勢いよく上体を起こした。
「―ッ!いってぇ・・・・」
殴られた後頭部がジンジンと痛む。
「ぼえ゛ーーー!!!ぼお゛おおおおおえええ゛ええええ!!!」
―音痴の正体はテーブルに乗っているあのハゲか・・・
―・・・誰だこいつら
跳馬は自分が寝ていたソファーから横のテーブルを見る。
そこにあったのは、堆く積み上げられた、覆面やお面
「これ!!!」
「お?」「あ、起きてた」「気づかなかった(笑)」「お前の声でおきたんじゃね?」「小鳥のさえずり的な」「ばーか音痴が」
―じゃあ、こいつら全員・・・!!
冷や汗が跳馬の頰を伝う。
ここにいる全員が昨日の羽黒のチームだとしたら、どう考えても跳馬は絶対絶命だった。
だが、少年達は声をかけた後、何をしてくる訳でもなく、自分たちの世界に戻る。
それどころか、少年達に何人か混じっていた女子が跳馬を心配し始める始末だ。
「お腹すいてたら、なんかテキトーに注文しな」「頭、だいじょうぶ?」「いたそー」
顔が緩みそうになるのを我慢し、少女達の手を払いのけた時―。
「やあ、跳馬っち、モテ期ってやつじゃない?」
羽黒が、跳馬の前に立った。
「てめぇ・・・!!」
「これこれ、怖い顔をするでないよ」
おちょくったように笑いながら羽黒はテーブルにあったグラスを割った。
がしゃんっ!
そして、割れたグラスを跳馬の顔に向けた。
羽黒が手を突き出せば、グラスは顔に突き刺さる。
「それに、この状況、君わかってないなぁ、俺が指示出せば、ここにいる奴らで君を集団リンチなんて事も、できちゃうんだよねー」
「誰もそんな事しねーし」「誰も言うこと聞かねーし」「集団リンチとかざっこ!」「いじめ、駄目、ぜったい」
「なっ、お前らそんな事言うなよ!!台無しじゃんか!」
赤面する羽黒に威厳とか、威圧は感じられない。
慌てて仲間達に弁解する羽黒は隙だらけだ。
―今なら!
ソファーから立ち上がる勢いでそのまま、羽黒の腹にキックをした。
喧嘩慣れしてる跳馬の蹴りだ、まともにくらった羽黒は声をあげる暇なく、背中からテーブルにぶつかり、テーブルごと吹っ飛ぶ。
「ぐぅっ・・・・」
苦しそうに呻く羽黒は、手に持っていた割れたグラスを振り上げ―
自らの手の甲を切った。
「!!」
―何してんだこいつ
動揺を隠せない跳馬に対し、羽黒は涙目になりながらもヘラヘラ笑っている。
「うわ、いってーマジ痛ぇ、泣きそー」
血を手の甲から流しながら、羽黒はテーブルに手をかけ、立ち上がる。
「ほら、来なよ、まさか・・・ビビった?」
「うぜえ!」
挑発にいとも簡単に跳馬はのり、羽黒に殴りかかる。
「あ、でも羽黒さんと喧嘩すんのは、オススメしないぜ」
音痴ハゲの警告を無視して、跳馬は羽黒の手の届く距離に入ってしまった。
ザクッッ
跳馬はゆっくりと視線を下にやった。
脇腹に痛みというより、熱が広がる、刺さっていたのは―
「・・・・ッツ・・・グッ・・・・・・・」
血で真っ赤に染まった羽黒の手だった。