第40話. 面接試験
絶対的な敗北のどん底。全てを失い、焼け跡に残されたのは一足遅れの絶望だけかと思われました。
しかし、ハン・ユンジェは諦めていませんでした。師であり宿敵であるチェ・ジンヒョクの完璧な仮面の下に隠された、わずか一秒の「震え」。
その震えが指し示す、怪物のさらに後ろに潜む真の黒幕。
新たな反撃の狼煙が上がる第40話、お届けします。
[D-84 / 03:15:00]
カビの臭いが鼻をついた。
湿った壁紙の隙間に染み込んだ湿気が、肺の奥深くまで張り付くような感覚だった。
ソウル郊外の再開発予定地、崩れかけの安宿の一室。
蛍光灯が一つ、瞬きを繰り返しながら、狭い部屋を蒼白く照らしていた。
昨日までユンジェがいた最先端サーバー室の青い光とはあまりに違う、絶望の色だった。
「うっ……」
ベッドの隅でうずくまるB-07が苦悶の声を漏らした。
肩の傷を急いで巻いた包帯の上に、赤い血が滲み出していた。
まともな薬品も、治療道具もなかった。
ソヨンは眠っているスアの背中を、機械的にトントンと叩いていた。
子供は悪夢を見ているのか、時折体を震わせた。
ソヨンの瞳は焦点を失い、虚空を彷徨っていた。昨日目撃した暴力と逃走の恐怖が、彼女の魂を削り取ってしまったかのようだった。
そしてユンジェは、冷たい床に座り、液晶の割れたスマートフォンを見つめていた。
画面の中では、昨日の出馬式の場面が無限に繰り返されていた。
降り注ぐ紙吹雪、熱狂する支持者たち、そしてその中心で救世主のように堂々と手を振るチェ・ジンヒョク。
[速報:チェ・ジンヒョク候補、支持率40%突破……「大勢論」固まる]
[分析:危機をチャンスに変えた勝負師の気質、中道層の心を掴む]
完璧な敗北だった。
数ヶ月かけて準備した『ブーメラン』は虚しく折れ、すべてのデータが収められていた隠れ家は灰となった。
ユンジェに残されたのは、この湿っぽい一間と傷ついた仲間たち、そして以前より遥かに巨大になった怪物だけだった。
「検事さん……少し休んだほうが……」
ソヨンがかすれた声で慎重に声をかけたが、ユンジェには聞こえていないようだった。
彼の目は充血し、唇はカサカサに乾いていた。
彼はもう一度、再生ボタンを押した。
チェ・ジンヒョクが演説を終え、決然とした表情で拳を握りしめるその瞬間。
ユンジェが画面を静止させた。
そして、震える指でその部分を拡大した。
蜘蛛の巣のようにひび割れた液晶越しに、チェ・ジンヒョクの固く握られた右手の拳が現れた。
極めて微かな、しかし確かに存在する、小指の痙攣。
ユンジェは一晩中、この一秒の瞬間を数百回も繰り返して見ていた。
あたかもその震えの中に、この地獄から抜け出す唯一の非常口が隠されているかのように。
「奴は、恐れている」
ユンジェの口から漏れた最初の一言は、一晩中煮詰められた怒りと疑念が混じった、しわがれた声だった。
「検事さん、その映像をずっと見ていたのは……何か見つけたのですか?」
B-07の問いに、ユンジェが初めて顔を上げた。
充血した瞳の中に、異様なほど鋭い光が宿っていた。
「20年前、俺はチェ・ジンヒョクと共に夜を明かした。数え切れないほどな」
突然の過去の回想に、B-07とソヨンの視線がユンジェに集まった。
「ソウル中央地検特捜部。チェ・ジンヒョクは俺の直属の上司であり、俺は彼の影だった。奴が煙草を一本当吸う間に、俺は書類を十枚検討した。奴がコーヒーを一杯飲む間に、俺は証人三人を追い詰めた。そうして俺たちは、大韓民国で最も恐ろしい検事チームになったんだ」
ユンジェは一度言葉を切った。
彼の指が割れた画面の上をなぞった。
「だが、俺は知っていた。奴には、数十年の間に身に染み付いた習慣が一つあったことを」
「習慣、ですか?」
「小指だ」
ユンジェが自分の右手を掲げて見せた。
「奴はどんなに強いふりをしても、自分の制御を超えた相手に出会った時……いや、正確には、自分より遥か上の存在から押し潰されるような圧力を感じた時にだけ、この指が微かに震える。本人も気づいていない、無意識の信号だったんだ」
ソヨンが慎重に尋ねた。
「では……昨日の出馬式でも、その震えを見たというのですか?」
「ああ」
ユンジェが画面を二人に見せた。
チェ・ジンヒョクが拳を握った瞬間の静止画。
「これが妙なんだ。奴は完璧に勝った。俺の攻撃を予見し、それを逆手に取って支持率まで上げた。それなのに、なぜ震えた?」
B-07が首を傾げた。
「単に緊張していただけ、ではないのですか? 出馬式という大舞台ですから……」
「いや」
ユンジェの声は断固としていた。
「奴は緊張で震えるような人間じゃない。むしろ圧迫が強いほど冷酷になるタイプだ。だが昨日、勝利の瞬間に震えた。それはつまり……」
ユンジェが立ち上がった。
丸まっていた背筋が伸び、彼のシルエットが蛍光灯の下で長く伸びた。
「奴が恐れたのは、俺でも、俺の報告書でもなかった。あの報告書が、触れてはならないさらに巨大な何かと繋がっているからだ。俺がその繋がりまで把握したのではないかと、一瞬の恐怖を感じたんだ」
沈黙が流れた後、ソヨンが震える声で尋ねた。
「それって……何なんですか? チェ・ジンヒョクより巨大なものなんて……」
ユンジェは窓に歩み寄り、夜空を見上げた。
再開発予定地の低い建物の向こうに、江南の摩天楼が遠くで輝いていた。
「1998年のH大事件。俺はあれを単純な性犯罪の隠蔽だと思っていた。だが今思えば……」
彼はゆっくりと振り返った。
「あれは、面接試験だったんだ」
「面接……試験?」
「ああ。チェ・ジンヒョクが『AS』という巨大なカルテルの『管理者』として抜擢されるためのテストだった。Sグループの会長の息子の犯罪を綺麗に葬り、証拠を隠滅し、被害者が死んでも動じないかどうかを確認するための……」
ユンジェの声が次第に低くなった。
「合格したんだよ。そうして奴は20年間、奴らの忠実な犬となった。権力層の子供たちの犯罪を埋め、ASでその経歴を洗浄しながら」
「じゃあ……その面接試験を行った者たちが……」
「奴らが真の主人だ」
ユンジェが言い切った。
「チェ・ジンヒョクはどんなに強く見えても、結局は雇われた管理者に過ぎない。そして、雇用主が最も嫌うものは何だ? 使い物にならなくなった従業員だ」
「でも……データはすべて燃えてしまったのに、どうやって……?」
B-07の問いに、ユンジェはこめかみを指先でトントンと叩いた。
「ここにある。俺はあの報告書を数百回検討した」
彼は再び座り、目を閉じた。
焼失したサーバー内のデータを頭の中で復元し始めた。
欠番となった受付証。
被害者の供述書。
Sグループの顧問料振込内訳。
Sグループ。
12億ウォン。
1998年12月から2005年まで。
ユンジェのまぶたが微かに震えた。
その振込内訳書の下部。
小さな文字で書かれた、一つのメモ。
当時はただの会計上の参照事項だと思っていた。
だが今、チェ・ジンヒョクの震えと繋げると……。
ユンジェの目がカッと見開かれた。
「南山P」
「え?」
「Sグループの顧問料振込内訳書の下の方に、小さな文字で書かれていた。『南山P 承認完了』とな」
ソヨンとB-07が顔を見合わせた。
「南山……P?」
「ああ。俺はただの内部決済コードだと思っていた。だが、今ならわかる。そうじゃない」
ユンジェが壁に寄りかかり、天井を見上げた。
「南山。韓国であの名が意味するものは何だ?」
沈黙。
B-07が慎重に口を開いた。
「かつて……情報機関があった場所……」
「そして今もなお、権力の深層部だ」
ユンジェの声が低く沈んだ。
「Sグループはチェ・ジンヒョクに12億を渡した。だが、その金を渡す前に、誰かの『承認』が必要だったんだ。南山にいる、Pという名の……」
「そのPが誰なのか、突き止められるでしょうか?」
ソヨンの問いに、B-07が旧型のノートパソコンを開いた。
「装備があまりに貧弱で……深く掘り下げるのは難しいですが……」
彼はキーボードを叩き始めた。
「南山……P……1990年代後半……」
検索結果が出ては消えるのを繰り返した。
「財団? プロジェクト? それとも人物?」
B-07が呟きながら検索を続けたが、明確な答えは出なかった。
「おかしいですね。南山に関連するPで始まる組織や人物は、公開データベースにはほとんどありません。まるで……」
「意図的に消されたかのように?」
ユンジェが言葉を継いだ。
「その通りでしょう。これほど徹底しているとなると……」
B-07が言葉を濁した。
ユンジェは再び窓の外を眺めた。
夜明けの空が少しずつ明るくなり始めていた。
「20年前、チェ・ジンヒョクは面接を受けた。そして合格した。だが、面接官が誰なのか、採点表がどこにあるのかは知らなかったんだ」
彼はゆっくりと向き直った。
「五番目の毒薬はこれだ。チェ・ジンヒョクを直接倒すのではなく、奴を雇った者たちに、奴を解雇させる」
「どうやって?」
ソヨンが尋ねた。
ユンジェの口元に、冷たい笑みが浮かんだ。
「簡単だ。チェ・ジンヒョクを使い物にならなくすればいい。これ以上秘密を守れない、むしろ爆弾となってしまった管理者にな」
彼はB-07に歩み寄った。
「『南山P』を探し出さなければならない。奴らが誰なのか知ってこそ、奴らを利用できる」
「でも、どうやって……?」
「ASの内部協力者だ」
ユンジェが断言した。
「チョン・ウジンは死んだが、ASにはまだ数十人の職員がいる。そのうちの誰かは知っているはずだ。『南山P』が何なのかを」
彼は拳を握った。
「B-07、ASの内部ネットワークにアクセス可能か?」
「装備は足りませんが……試してみる価値はあります」
「よし。ソヨンさんはスアの保護を。俺はASの職員のうち、誰に弱みがあるかリストを作る」
ユンジェの瞳に再び火が灯った。
「戦争は終わっていない。これから俺たちは、チェ・ジンヒョクを狩るのではなく、奴の首輪を握っている者たちを探すんだ」
窓の外では夜が明けていた。
絶望の安宿から、新たな戦争が始まった。
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第40話、いかがでしたでしょうか。
すべてを失ったかのような絶望の中で見出した、師のわずかな「震え」。
その震えから「面接試験」という概念を導き出し、背後の真の主人「南山P」に辿り着くユンジェの冷徹な洞察力が光る回でした。
新たな謎、そしてチョン・ウジンが密かに託していた「最後の保険」の存在。
物語はチェ・ジンヒョクという個人の打倒を超え、国家の深層に根を張る巨大な影との戦いへとスケールを広げていきます。
次回の第41話、ついに現れる内部告発者。ユンジェは彼女に辿り着けるのか。
明日もこの場所でお会いしましょう。




