第29話. 見えない協力者
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「罠は見事ですが、七番目の毒の変数が露骨すぎます」
孤独な戦場だと思っていた「論文工場」のシステム内。
ユンジェの仕掛けた罠に、密かに修正を加える「見えない手」が現れます。
その正体は、無気力なライターの一人、D-33でした。
一方、ソヨンが突き止めたのは「死んだはずの男」の名義で動く不審な資金の流れ。
ネットカフェの片隅から発信される信号を辿り、二人の戦いはついに広場へと引きずり出されます。
崩壊まであと100日。共闘の幕が上がります。
窓の外の闇が晴れる前、ユンジェは再びノートパソコンの前に座った。
目を閉じても「0」と「1」の数値が網膜を掠めていく感覚だった。
D-100。
カレンダーの数字はもはや単なる期限ではなく、ユンジェの首を絞める絞首刑の縄の直径だった。
だが、奇妙なことが起きた。
自分が埋設した罠の一つである、脚注十四番の数式の横に、これまで見たことのない微細な「点」が一つ打たれていた。
ユンジェは本能的にマウスを動かし、その部分をドラッグした。
すると、背景色に隠されていた白い文字が徐々に姿を現した。
[罠は見事です。ですが、七番目の毒の変数設定が露骨すぎます。
奴らがフォレンジックをかければ、即座に露呈するでしょう。私が少し細工しておきましたので、確認してください]
ユンジェの心臓が凍りつくようだった。内部の協力者だ。
奴らの目を盗んで自分の文章を読み、さらには自分の意図まで完璧に把握している存在。
ユンジェは震える手で返信を書こうとして、踏みとどまった。奴らの監視網はリアルタイムだ。
代わりに、彼は修正履歴を調べた。
IDは「D-33」。
参考文献を整理していた、あの無気力そうに見えた男のコードだった。
「あの男なのか? 煙草の煙にまみれて締め切りに追われるだけだった、あの男が?」
ユンジェは鳥肌が立った。
奴らが構築したこの完璧なシステムの中にも、自分と同じように息を殺して機会を狙う「幽霊」が他にもいたのだ。
その日の午後、ユンジェはソヨンからの連絡を受け、古い大学図書館の裏手で彼女と会った。
数日前の激しい衝突の痕跡は、ソヨンのやつれた顔に色濃く残っていた。
しかし、その瞳だけは記者の鋭さを失っていなかった。
「仲直りしに来たわけじゃありません。やるべきことが残っているだけです」
ソヨンはノートパソコンを開き、三千八百七十人の名簿の横に、新しい図表を表示させた。
「兄の記録を調べていた時、不審な送金履歴を見つけました。この組織が定期的に金を送っている口座ですが、受取人がすべて『幽霊』なんです。
すでに死亡しているか、海外に移住した人々の名義です。
ですが、その幽霊口座が最近になって再び動き始めました」
ソヨンが指し示した場所には「チョン・ウジン」という名が記されていた。かつてライターたちの間で、拒絶して消されたと噂になっていたあの名前だった。
「チョン・ウジンさんが生きている可能性があるということですか?」
「いいえ。誰かが彼の名義を借りて組織内部の資金を横領しています。そして、その資金が流れていく先……。
あなたが今いる下宿先からわずか二ブロック先にあるネットカフェです」
ユンジェの背筋に冷たい戦慄が走った。
誰かが至近距離で自分を見守り、システムを撹乱し、自分に信号を送っている。
「D-100。奴らが私たちを消し去る前に、私たちが先にシステムの『心臓』を見つけなければなりません。
ハン・ユンジェさん、あなたが仕込んだ毒を広めるには媒体が必要でしょう? 私がその通路を見つけました」
ソヨンが差し出したのは、二〇一九年の大英メディカルの承認審査委員の名簿だった。
そこには、ユンジェとソヨンが必ず対峙しなければならない、もう一人の「顧客」の名が記されていた。
暗闇の中で、見えない手たちが固く結ばれた。
内部の幽霊D-33、執拗な追跡者ソヨン、そして設計者ユンジェ。
孤立した部屋から始まった戦いが、奴らが構築した巨大な広場へと躍り出るための準備を終えた。
D-100。戦争はもはや、一人きりのものではなかった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「D-33」という予想外の援軍、そして「チョン・ウジン」という名の幽霊口座。
点と点が繋がり、一つの巨大な包囲網が形成されつつあります。
しかし、ユンジェの動きを察知したA-12の魔の手がすぐそこまで迫っています。
果たして、ユンジェは「現場実査」という名の尋問を切り抜けることができるのか。
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