第27話 見えない侵入者
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「消す術を教えたのはお前たちだが、残す術を学んだのは俺の意志だ」
冷たい嘲笑を残して去ったソヨン。
ユンジェは自らの罪を刻み込み、ついに反撃の狼煙を上げます。
A-12から下された新たな指令「プロジェクト3870-112」。
それは、かつてソジュンを死に追いやった「大英メディカル」の案件でした。
完璧な隠蔽の中に仕込まれた、わずか12個の「毒」。
106日後に迫る崩壊へのカウントダウンが、今始まります。
ソヨンが去った後には、冷気だけが漂っていた。
彼女が残していった冷たい嘲笑。兄の警告を一千五百万ウォンで覆したという、あの鋭い非難が幻聴のように耳元で繰り返された。
ユンジェはベッドの端に腰掛け、イ・ソジュンの研究ノートを見つめた。二〇一九年二月二十七日の記録。
自分がASに合流した直後、何も知らずに犯したあの文章操作の代償は、あまりにも惨酷だった。
五年前、正義を叫んでいた検事ハン・ユンジェは死に、
今ここに残っているのは、真実を鮮やかに洗浄する「専門ライター」に過ぎなかった。
ピコン。
午前三時十分。静まり返った部屋に、ノートパソコンのアラーム音が鋭く響いた。
メッセンジャー『シグナル』を通じて、A-12からのメッセージが届いた。
[A-12:ソヨンさんとの面会は整理できましたか? 感情に振り回されている時間はありません。メインプロジェクトを始めましょう]
ユンジェの背筋に冷たい戦慄が走った。
あの男は知っていた。ソヨンがここに来たことも、二人がどのような会話を交わしたのかも。
[A-12:ローデータ(Raw Data)を送ります。プロジェクトコード 3870-112。「大英メディカル」の新型ステントの臨床論文です。イ・ソジュン氏が最後に手掛けたプロジェクトの後続作ですよ]
大英メディカル。イ・ソジュンを死に追いやり、ユンジェを共犯者に仕立て上げたあの名前。これは偶然ではなかった。
ASはユンジェの忠誠心を確認するために、最も過酷な「復習課題」を投げつけてきたのだ。
[A-12:今回は修正ではなく「再構築」です。臨床結果における副作用の数値を、統計的に無意味なものにしてください]
ユンジェはファイルを開いた。数千人の患者データが羅列されたエクセルシート。検事時代に培ったデータ分析能力が、本能的に蠢いた。
「数値をいじれば露呈する」
AS内部の検証システムは緻密だった。単純に数字を書き換えるのは、素人のすることだ。
ユンジェは「ライター」の仮面を被った。
依頼人の要求通りに副作用を隠蔽する流麗な文章を書きながらも、その中に「論理的毒薬」を仕込む作業。
ユンジェは文章を書き換えた。
『本機器が血管内膜に及ぼす影響は軽微である』
指先がキーボードの上を走った。
『本機器の生体適合性は統計的有意性の範囲内で観察されており、血管内膜の変化の可能性を排除するには十分である』
平凡な文章だった。乾燥した受動態と、適切な専門用語 service の配置。
誰が見ても、徹夜作業に疲弊した専攻医が書いたような、完璧に退屈で学術的な文体だった。
その無機質な文章の中に、致命的な毒を混ぜ込んだとは、誰も想像できないほどに。
だが、ユンジェは知っていた。「排除するには十分である」という表現の背後に、微細な罠を隠したことを。
後日、このデータが歪曲されたものであることを証明できる、自分だけが解読可能な「言語的DNA」だった。
ユンジェはこのようにして、論文全体に「十二個の毒」を仕込んだ。作業を終えた時刻は、午前五時四十五分。
ユンジェは送信ボタンを押す前に、イ・ソジュンのノートを閉じた。
「消す方法を教えたのはお前たちだが」
ユンジェの目に、冷徹な狂気が宿った。
「残す方法を学んだのは、俺の意志だ」
クリック。ファイルが送信された。
しばらくして、待ち構えていたかのようにA-12から返信が来た。
[A-12:素晴らしい。やはり期待を裏切りませんね。次の段階へ進みましょう。これで、あなたのお父様は安全です]
ユンジェはノートパソコンを閉じた。窓の外から、青白い夜明けの光が差し込んでいた。
彼はカレンダーの横のメモ帳に、複雑な日付を書き連ねていった。
ASのサーバー交換周期と、大英メディカルの承認日程. 緻密に計算された数値が、一つの数字へと収束した。
ユンジェはカレンダーを見た。百六日。
ASを崩壊させるために残された時間.
ようやく、最初の伏線が敷かれた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「消す術を教えたのはお前たちだが、残す術を学んだのは俺の意志だ」
ついにユンジェが、自身の武器である「文章」を使って反撃を開始しました。
ASの緻密な検証システムを欺き、仕込まれた12個の毒薬。
106日という期限の中で、ユンジェはどのような結末を描くのでしょうか。
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