第25話 第一の門の背後で
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「72時間以内に書き上げろ。さもなければ報酬はない」
華やかな都会の裏側、古びた雑居ビルの一室。
そこには、学問の誇りを捨て、機械のように論文を量産する「ライター」たちがいました。
明かされる兄・ソジュンの過去。
彼はなぜこの場所への招待を拒絶したのか。
そして、ユンジェが「整理」してきた文章の正体が、ついに牙を剥きます。
二日が過ぎた。
名刺に記された番号に連絡した後、ユンジェとソヨンは指定された住所へと向かった。
江南のど真ん中ではなく、九老区にある古いオフィステルだった。
エレベーターさえない五階建てのビル。
「ここで合っていますか?」ソヨンが尋ねた。
「A-12が教えた場所はここです」
廊下の突き当たり、五〇三号室の前で立ち止まった。チャイムの代わりにメッセージが届いた。
『お入りください。鍵は開いています ― B-07』
ユンジェがドアノブを回した。
扉を開けると……
煙草の煙とコーヒーの匂いが混じった空気が押し寄せてきた。
窓は閉め切られ、蛍光灯だけが点灯していた。
部屋の中に五人の姿が見えた。
それぞれノートパソコンに向かい、「タカタカ」とキーボードを叩いている。
誰も顔を上げなかった。
一人の男が煙草を口にくわえたまま立ち上がった。
三十代半바... 三十代半ばほど、髭を剃っていない顔。
「ハン・ユンジェさんですね? A-12から聞いています」
彼が空いている椅子を二つ指差した。
「座ってください。私はB-07です」
ソヨンが辺りを見渡した。
壁に貼られたモニターの数字が目に飛び込んできた。
[3870-2891 締め切り:14時間37分]
[3870-2903 締め切り:41時間12分]
[3870-2917 締め切り:68時間03分]
リアルタイムで減っていく数字。締め切りまでの残り時間。
「あれは何ですか?」ソヨンが尋ねた。
「俺たちの命綱ですよ」B-07が笑いながら言った。
「七十二時間以内に終わらせなければ、入金はされません」
ユンジェはノートパソコンの画面を拾い読みした。
一人の女性が医療用語を素早くタイピングしており、別の男は参考文献の目録を整理していた。
「ここが第一段階(ステップ1)ですか?」
「ええ。ライターたちがいる場所です」B-07が答えた。
「七十二時間で百ページ。主題は上で決められ、参考資料も送られてくる」
彼が自分の画面を見せた。
[タイトル:医療機器の生体適合性評価の論理的アプローチ]
[進行度:98/100ページ]
[残り時間:14時間21分]
「一人で書くのですか?」ユンジェが尋ねた。
「いいえ。複数人で分担して作成します」B-07が他の人々を指差して言った。
「俺が本文を書き、C-21がデータを作り、D-33が参考文献を整理する。組立ライン(ライン)ですよ」
「第二段階(ステップ2)は?」
「ハン・ユンジェさんのような方たちです」
B-07が燃え尽きた煙草の灰を落とした。
「俺たちが作成した内容を整える人たち。その過程が適切になされなければ、論文らしくは見えませんから」
ソヨンが割って入った。
「ですが、なぜこのようなことをしているのですか?」
B-07の手がしばし止まった。
「なぜって……金のためですよ」
休憩時間になった。他の人々もノートパソコンから目を離し、煙草を吸ったりコーヒーを飲んだりしている。
B-07が缶コーヒーを二つ持ってきた。「どうぞ」
ユンジェはコーヒーを受け取りながら、彼の目を見据えた。
「気になることがあります」
「何なりと」
「なぜこんな仕事をしているのですか? 偽の論文を書いていると分かっていながら」
B-07が笑った。
「偽物だなんて。すべて本物の研究データですよ。ただ……誰が書いたかだけが違うんです」
「それが偽物ではありませんか」
「さあね」
B-07が煙草に火をつけた。
「俺は大学の講師でした。非常勤として五年間、毎年契約を更新してきた。そして結局、解雇された」
彼が煙を長く吐き出した。
「子供が二人います。小学二年生と幼稚園児。妻は糖尿病の合併症で働けない。だからここに来た」
「一編で五百万ウォン。一ヶ月に四編書けば二千万ウォン。講義を十個受け持つより早い」
ユンジェはその数字を聞きながら、自分の通帳を思い浮かべた。
一千五百万ウォン。一千万ウォン。自分も金のために始めていた。
「それでも……」ユンジェが言った。
「これは犯罪ではありませんか」
「犯罪?」B-07が聞き返した。
「ハン・ユンジェさん、検事だったんでしょう? なら法的に何が問題なんですか? 代筆は不法ですか? 論文を書くことが犯罪ですか?」
ユンジェは答えることができなかった。
「グレーゾーンですよ。明確に不法でもなく、明確に合法でもない。だから皆、ここで生き残るんです」
C-21と紹介された女性が近づいてきた。四十代初めほど、眼鏡をかけていた。
「イ・ソヨンさんですね?」
ソヨンが顔を上げた。「はい」
「記者だと聞きました。何を調べに来たんですか?」
「取材ではなく……」
ソヨンが言葉を止めた。「兄を探しています」
「お兄さん?」
「イ・ソジュンという名を聞いたことはありませんか?」
C-21の表情が凍りつき、彼女は煙草を消して席に座った。
「……どこでそれを聞きましたか?」
「私の兄です」
ソヨンが静かに答えた。
短い沈黙の後、B-07が視線を移した。
「イ・ソジュン研究員……」
C-21がぽつりぽつりと話し始めた。
「ここに来るかもしれなかった、という話を聞いたことがあります」
ソヨンの手が震え出した。
「どういう意味ですか?」
「確かではありません。ですが……」
C-21が周囲を見渡した。
「ASが提案したという噂がありました。二〇一九年頃に」
「なぜそれを知っているのですか?」
「ここいらでは皆知っています。拒絶すればどうなるか……そんな話」
ユンジェが身を乗り出した。
「どうなるというのですか?」
C-21が煙草を再び取り出した。
「ASは拒絶を受け入れません。一度目をつけた相手には、受け入れるまで付きまといます」
「でなければ?」
「……さもなければ、消されるか」
ソヨンの顔がこわばった。
「お兄さん……」C-21が慎重に尋ねた。
「何かあったのですか?」
「亡くなりました」
「いつ?」
「二〇一九年十二月」
C-21が煙草を落としそうになった。
「……なら、本当だったんだ」
ソヨンがノートパソコンを取り出した。
「3870-09。これを知っていますか?」
画面を見た後、C-21の顔がさらに青ざめた。
「そのケース……知っています」
「どうして?」
「私が関与しました」
その瞬間、ソヨンは息をすることさえままならなかった。
「どういう意味ですか?」
「二〇一九年三月でした。ASから医療機器に関する作業依頼が来ました。資料もあり、構造もすべて組まれていました」
C-21が煙草を深く吸った。
「ですが、奇妙でした。普通は白紙の状態から始めるのに、これは……原本が別にあったという話を聞いたんです」
「原本?」
「ええ。誰かがすでに書いたものがあったのですが、ASが気に入らなかったようです」
ユンジェが口を挟んだ。
「それで?」
「それで、私に書き直すよう指示が来ました。どんな内容だったのかは知りません。ですが……」
C-21がソヨンを見た。
「研究員の名前が資料に残っていました。イ・ソジュンと」
ユンジェは、ようやく輪郭が見え始めた。
イ・ソジュンが作成したリポートを、ASは好まなかった。
そしてC-21が書き直した。
その次の段階で……俺がいたのだ。
「その論文がどこに使われたか、知っていますか?」
ソヨンが尋ねた。
「知りません。私たちはただ書くだけです。どこへ流れ、誰のために使われるのかは、ASだけが知っています」
「確かめる方法はありませんか?」
C-21が首を振った。
「ファイルは提出すれば消えます。保存もされません。ASのシステムがそうなっています」
「では……」
「ですが、私が作成した草案は私のパソコンに残っているかもしれません」C-21が慎重に言った。
「消せと言われましたが、私は消さない主義なんです。万が一のために」
B-07が近づいてきた。
「何をしているんですか? 締め切りまであと十三時間ですよ」
「ちょっと待ってください」C-21が自分のノートパソコンを開き、古いフォルダを漁った。
「ありました。二〇一九年三月」
百ページに及ぶ文書。
タイトルは『医療機器の安全性評価』。
ソヨンの視線が画面に釘付けになった。
見覚えのある文章たち。兄が書いていた文体とは少し違っていた。
「これは……兄が作成したものではなさそうですね」
「当然です。私が書いたのですから」
C-21が答えた。
「原本は見ていません。当時、ASから『このような方向で書け』という指示だけが届きました」
「どんな方向でしたか?」
C-21がファイルの一番上を指した。
[ASの核心指示事項]
・肯定的評価への転換
・「使用不可」→「条件付きで使用可能」
・(以下、省略)
ユン재... ユンジェはそのメモを見て思い出した。
自分が書いた文章たち。『該当研究は学術적... 学術的価値を充足』。『参考資料として使用可能』。
「これが……」ユンジェが呟いた。
「俺が検討したものだったのかもしれません」
しばし沈黙が流れた後、D-33という男が初めて口を開いた。
「チョン・ウジンという名……聞いたことがある気がします」
ユンジェが顔を上げた。
「どこで?」
「以前、ここにいたという話だけ聞きました。確かではありませんが。名前だけ残っていたんです」
「いつ頃ですか?」
「二〇一九年頃? その人が本当にいたのかさえ……」D-33が言葉を濁した。
「どうなったのですか?」
D-33が煙草をくわえた。
「分かりません。ASの提案を拒絶すれば……まあ、そんな噂はありますから」
それ以上は語らなかった。
B-07の視線が時計へと移った。
「本当に、もう戻らなければ」
人々が一人ずつ席に戻り、キーボードの音が再び響き始めた。
ソヨンが立ち上がろうとすると、C-21が静かに言った。
「気をつけてください」
「……え?」
「A-12が紹介したのでしょう?」C-21が煙草の煙を吐き出した。
「あの男が門を開けるのには、すべて理由があります。俺たちもそうやって来ました」
ユンジェは名刺を思い出した。
A-12が渡した名刺。電話番号だけが記されたもの。
「どういう意味ですか?」
「あの男は門番です。誰がどこへ行くか決める人間」
C-21がユンジェの目を見つめながら言葉を続けた。
「そして、門を開ければ、後ろで誰かがそれを見守っていると聞きました」
外に出ると、日はすでに傾いていた。
ユンジェは周囲を再び見渡した。
平凡な住宅街。
平凡なオフィステル。
だが、この場所で七十二時間ごとに偽の論文が作られていた。
「お兄ちゃん、ここに来るかもしれなかったんだね……」ソヨンが無意識のうちに呟いた。
「ですが、拒絶した」
「そして……」
ソヨンはそれ以上、言葉を継げなかった。
ユンジェはスマートフォンを取り出した。
チョン・ウジンという名前を検索したが、何も出てこなかった。
「俺の勘では、チョン・ウジンも拒絶したというのは事実のようです」
「探さなければなりません」
「どうやって? 痕跡さえないのに」
ユンジェはビルを再び見上げた。
五〇三号室の窓に明かりが灯っており、その中で誰かは今も締め切りに向かって走っていた。
そしてどこかで、
A-12がこのすべてを見守っているような気がした。
ユンジェのスマートフォンが鳴った。
メッセージだった。
『第一段階はどうでしたか? ― A-12』
ユンジェは画面を見つめたが、返信はしなかった。
スマートフォンをポケットに入れようとすると、ソヨンが尋ねた。
「返信しないんですか?」
「かける言葉がありません」
「あの人が私たちを見守っているということなのに」
「分かっています」
ユンジェが五〇三号室を見上げながら言었다... 見上げながら言った。
「ですが、止まることはできません。そして、まずは確かめてみる必要があります」
「何をですか?」
「C-21が書いたあの論文。俺が本当に検討したのかどうかを」
ソヨンは兄の記録を思い出した。
『追加検証が必要』。その一文を誰かが消した。そして別の文章に変えた。
もしユンジェがその張本人だとしたら……。
「行きましょう」ソヨンが言った。
二人は歩みを進めた。
背後で、五〇三号室の窓の明かりを背にしたまま……。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
エリートの皮を剥がせば、そこには生活のためにペンを売る「ライター」たちがいました。
兄・ソジュンが守り抜いた「使用不可」という警告が、どのようにして「使用可能」へと書き換えられたのか。その残酷な工程が明らかになります。
そして、ユン재... ユンジェの目の前に突きつけられた、自分が犯した罪の証拠。
物語はついに、ユンジェの過去とソジュンの最期が交差する核心部へと突入します。
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