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論文工場 3870 ~元検事ハン・ユンジェは、偽造論文で頂点に立った3,870人の特権階級を狩る~ 【韓国NAVERミステリー1位記録】  作者: ソルビョル


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第22話. 使用された文章

【韓国NAVERミステリー部門1位獲得の話題作!】

累計ユニークユーザー100名突破!応援ありがとうございます。


「3870は、単なる兄の研究番号ではなかった……」


医療機器、新薬、建築資材、そして産業廃棄物まで。

あらゆる分野の報告書に刻まれた、ハン・ユンジェの「言語的指紋」。

ソヨンが暴き出したのは、想像を絶する巨大な「論文工場」のシステムでした。


共犯者から追跡者へ。

二人の奇묘(きみょう)な共闘が始まる第22話、幕を開けます。

ソヨンは画面の前で指を止めた。


[3870-09]


医療機器の臨床試験報告書。

そしてその下に、承認許可書の写し。

参照文書欄には、はっきりと記されていた。


『外部検討意見 ― ハン・ユンジェ』


ソヨンはゆっくりと日付を確認した。


- 兄が警告を記した日: 2019年3月12日

- ユンジェの検討意見が添付された日: 2019年3月18日

- 許可が承認された日: 2019年3月25日


そして――。

2020年1月15日。

『医療事故報告書』


ソヨンの手が再び震えだした。

彼女は最初、兄の研究記録だけを探そうとしていた。

医療機器、新薬の治験ちけん、生命科学に関連する資料。兄が研究員として働いていた分野だ。


だが、3870という番号を追っていくうちに、一つの類似したパターンを発見した。

そしてその範囲が、予想よりも遥かに広いことに気づいたのだ。


- 3870-03: 建築資材の安全性評価

- 3870-11: 化学物質の環境影響評価

- 3870-17: 産業廃棄物の処理基準


兄が関与できるはずのない分野。

それなのに、参照文書欄には常に同じ名があった。


「ハン・ユンジェ」


ソヨンは次第に悟った。

3870は単なる兄の研究番号ではなかったことを……。

もっと大きなシステムの断片だったのだ。

そして、ハン・ユンジェという男は、そのシステムに関与した人間の一人に過ぎなかった。


ソヨンは各ケースの結果を辿った。

何の問題もなく通過したものもあった。

だが、いくつかのケースでは――。


事故。副作用。被害。

兄が阻止しようとしたように、誰かが止めようとしたはずのもの。


ソヨンはスマートフォンを手にした。

今回は迷わなかった。電話がつながった。


「会わなければならないようです」

ソヨンの声は冷静だった。


「……いつですか」

「今、可能ですか?」


ユンジェはしばし沈黙した。

「どこへ向かえばいいですか」

「私がいる場所へ来てください。お見せしたいものがあります」


【午後二時、ソヨンの自宅書斎】


ユンジェが到着した時、ソヨンはすでに資料を整理し終えていた。

テーブルの上に広げられた書類。日付順に、ケースごとに、正確に分類されていた。


「座ってください」

ソヨンが言った。

ユンジェはゆっくりと腰を下ろした。

そしてその書類を目にした瞬間、彼女が何を見せようとしているのかを察した。


「まずは、兄の話から始めます」

ソヨンが最初のファイル一式をユンジェの前へ押し出した。


「3870-09。心臓補助装置の臨床試験」

ユンジェはその番号を記憶していた。

「兄は医療機器の研究員でした。これは兄が直接検討したケースです」


ソヨンが一箇所を指差した。


『追加検証が必要。長期的な安全性データの不足。現段階での承認勧告は困難』


「そして、あなたは……」

次の文書が置かれた。


『短期的な結果に基づく判断は可能。追加検討は不要。外部参照資料として使用適格』


ユンジェの視線が文書から離れなかった。

「この機器は承認されました」

ソヨンが言った。「2019年3月25日」

彼女は最後の書類を差し出した。「そして八ヶ月後……」


ユンジェはその数字を直視できなかった。

死亡者三名。重症副作用十七件。該当機器の全量回収。


「3870-07。新薬の臨床試験」

ソヨンが次のファイルを開いた。

「これも兄が直接関与したケースです」


- 兄の文章: 『副作用事例の追加観察が必要。二次試験のデータを補完した後に再検討すべき』

- ユンジェの文章: 『現時点のデータ基準で進行可能。追加の遅延は不要』

- 結果: 市販から六ヶ月後に副作用の報告が急増。販売中止および損害賠償。


ソヨンはしばし呼吸を整え、次のファイルを取り出した。

「ですが」

彼女がユンジェを見つめた。

「ここからは、少し様子が違います」


「3870-03。建築資材の安全性評価」

ソヨンが言った。「これは兄が直接書いたものではありません」


ユンジェが彼女を見つめ返した。

「兄は医療分野の研究員でしたから。建築資材は……関与できる分野ではありませんでした」


彼女は文書を指差した。

「最初は私も、兄のケースだけを探そうとしました。医療機器、新薬、治験……」

ソヨンは他のファイルを広げた。

「ですが、3870という番号を追い続けていくうちに、全く別の分野でも同じ番号が出てくることに気づいたのです」


3870-11(化学物質)、3870-17(産業廃棄物)、3870-21(食品添加物)。

「兄が絶対に関与できない事案です」


ソヨンが一枚の書面を指した。

「そしてここには、あなたの名前はありませんでした」


ユンジェはその文書を読んだ。

『基準値を充足。使用可能』

『外部検討意見 ― イ・ジェヒョン』


「イ・ジェヒョン、パク・スジン、チョン・ミンホ……」

ソヨンが他の文書を並べた。


「検討者の名前は違いました。ですが、文章のパターンがそっくりなのです」

「文末の主語を省略し、『〜と判断される』や『〜という有効性を確認』といった名詞形語尾を繰り返して責任を分散させる筆致。これは、検事様特有の癖ですよね」


彼女はユンジェを見据えた。

「あなただけではなかった。3870は、あなた一人が書いていたわけではなかったのです」


ユンジェはその文書群を見つめた。

見慣れた文章。自分が書いたものと同じパターン。しかし、自分の名ではないもの。


「どれほど多くの人間が……」

彼は呟いた。


「二十三ケースです」

ソヨンが答えた。「3870-01から23まで。私が見つけたケースだけで、これほどあります」


彼女はファイルを整理しながら言った。

「あなたの名のものもあれば、他人の名のものもあります。ですが、結果は同じでした。誰かの警告は消し去られ、『使用可能』という文章だけが残った」


静寂が流れた後、ユンジェはゆっくりと顔を上げた。


「俺は……」

彼は口を開いた。「俺が作成したのは、七件です」

ソヨンが見つめると、ユンジェが答えた。

「3870-05, 07, 09, 12, 15, 18, 21」


「A-12が資料を送ってきました。『これを参照して意見を書いてくれ』と」


「七件だけですか?」


「最初は、いくつかだけ手伝うつもりでした」

ユンジェが答えた。「父の入院費のために始めたことでしたから」

彼はソヨンを見た。「ですが、A-12に会った後……より深く入り込むことになってしまった」


「残りのケースは?」


「分かりません」

ユンジェは正直に答えた。「他の誰かが書いたのでしょう。俺と同じように、A-12から資料を受け取った人間が」


ソヨンはゆっくりと頷いた。「なら、あなただけではなかったということですね」


「……ええ」

「論文工場は、もっと大きなシステムだったのです」

ユンジェは答えることができなかった。


「俺が書いた七件だけでも……」

彼が言った。「確かめたいのです。どこに使われ、どんな結果を生んだのか」


ソヨンはしばし彼を見つめた。「一人でするつもりですか?」

「……え?」

「あなたが書いた七件だけを確認するのか、と聞いています」

ユンジェは答えられなかった。


ソヨンが席を立ち、コーヒーを二杯持ってきた。

「私は兄のケースを見つけるだけで一年かかりました」

彼女が言った。「その後の二年は、3870全体を追跡するのに費やしたのです。あなたが書いた七件だけを確かめても、何も止めることはできません。システム全体を見なければならない。誰が作り、どう動いているのかを」


「……なぜ、俺を助けるのですか?」

「助けるのではありません」

ソヨンはきっぱりと言った。「確かめるのです」


彼女はノートパソコンを自分の方へ向けた。

「兄が止めようとしたもの。そして、あなたたちが開けてしまったもの。それぞれがどんな結果を招いたのかを、確認するのです」


ユンジェは長い間、沈黙した。

そしてゆっくりと頷いた。「……ありがとうございます」


「感謝されることではありません。あなたは3870の一部であり、私はその全体を見ようとしているだけです。そして、彼らに報いを受けさせなければならない」


彼女はリストを広げた。「始めましょうか」


ユンジェも自分のノートパソコンを開いた。「俺が書いたケースから……」


「いいえ」

ソヨンが言った。「3870-01から順番に見ましょう。誰が書いたものであれ、どこに使われたものであれ」


窓の外では日が傾き始めていた。

二人はそれぞれの画面を見つめ、一つずつ確認を始めた。


ケース番号。使用された場所。その結果。

何の問題もなく通過したものもあれば、小さな欠陥があったもの、そして取り返しのつかない結果を招いていたものもあった。


夜九時を過ぎた頃、ソヨンが先にノートパソコンを閉じた。

「今日はここまでにしましょうか」


ユンジェも頷いた。「……明日も来てもいいですか」

「当然です。まだ半分も見終わっていませんから」


ユンジェは席を立った。「イ・ソヨンさん」

「はい」

「なぜ、俺を……」

彼は言葉を止めた。なぜ恨まないのかと聞こうとして、思いとどまった。


ソヨンが先に答えた。「あなたも知らなかったのでしょう? どこに使われ、どんな結果を生むのかを」

「ですが、俺は……」

「今は知ってしまったのですから」


ソヨンが扉を開けた。「それで十分です。今はまだ」


ユンジェが去った後、

ソヨンは再び席に座った。


兄のメモ帳を取り出す。


『俺が付け加えた一文が、誰かを救うこともあるかもしれない』


ソヨンはその一文をゆっくりと読んだ。


「今、確かめているよ。

お兄ちゃんの文章が誰を救えたのかを」


そして静かに付け加えた。


「そして、誰がそれを邪魔したのかもね」


窓の外には、星が浮かんでいた。

二十三のケース。


その中には防げたはずの事故があり、

防げなかった理由があった。


イ・ソヨンとハン・ユンジェは、

一つずつその理由を探り始める。


そして気づく。


3870は、単なる番号ではないということを。

「論文工場」は今もなお、作動し続けているということを。

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