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論文工場 3870 ~元検事ハン・ユンジェは、偽造論文で頂点に立った3,870人の特権階級を狩る~ 【韓国NAVERミステリー1位記録】  作者: ソルビョル


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第19話. 戻らぬ記録

「彼は決定しない。ただ、流れを作っている」

亡き兄、イ・ソジュンの足跡を追い続けて三年間。

妹のソヨンがついに突き止めたのは、すべての重要記録に刻まれた「ハン・ユンジェ」という名でした。


一方、組織の影で自らの文章が「基準」として利用されていくことに震えるユンジェ。

そんな彼の元に届いた、一通の電話。


「ハン・ユンジェ検事、あなたの番です」

過去から届いたその声が、閉じられた扉を再びこじ開けます。

イ・ソヨンは同じ画面を三度も見返していた。


時間。

アクセスした人物。

閲覧された記録。


もはや数字は目に入らなかった。

兄の名が最後に残っていた瞬間。


(イ・ソジュン……)


その先には何もなかった。

消されたわけでも、隠されたわけでもない。

最初から存在しなかったかのように、空白だけが広がっていた。


ソヨンは椅子に深く腰掛けた。

「三年」

人々はその歳月を、悲しみを整理する時間だと言った。

だが、彼女にとっての三年間は、単に泣くための時間ではなかった。


確かめるための時間だった。兄は自ら命を絶ったのではないということ。

兄はミスなど犯さなかったということ。


そして――。

兄が遺した記録が、誰かの手によって利用されているという事実を。


ソヨンは他のファイルを開き始めた。


事件も異なり、関わった人間も違う。

だというのに、不思議なほど結論に至る文章は、常に似たような位置に配置されていた。


一番上。要約の部分。最初に読む者が最も先に目にする一文。

そして、その下には常に同じ名が記されていた。


『ハン・ユンジェ』


ソヨンはメモ帳に短く記した。

『彼は決定しない。ただ、流れを作っている』


その時、兄が遺した言葉が鮮明に蘇った。

「問題を作った人間より、扉を開けた人間の方が長く残る気がするんだ」

当時は理解できなかったが、今は違った。


ソヨンはノートパソコンを閉じ、スマートフォンを手に取った。

今度は、迷いはなかった。


同じ時刻。

ユンジェはカフェの片隅に座っていた。


ノートパソコンは閉じられ、スマートフォンだけを握りしめていた。


何の通知もなかった。

この静寂が、かえって不安を増幅させていた。


しばらくして、一通のメールが届いた。


[裁判所記録 閲覧案内]

送信者を見た瞬間、ユンジェは息を止めた。


━━━━━━━━━━━━

閲覧事由:外部要請

参照記録:ジョン・ユンソク外二件

理由:既存の判断と一致

━━━━━━━━━━━━


(既存の判断……)

その言葉の意味を、誰よりもユンジェ自身が熟知していた。


まだ誰も彼を呼び出してはいない。

だというのに、既にどこかでは彼の名が「基準」として扱われ始めていた。


スマートフォンが短く鳴った。今度は見知らぬ番号だった。

ユンジェはしばし躊躇した後、電話に出た。


「……もしもし」

相手はすぐには言葉を発さなかった。


短い吐息の後、見知らぬ女の声が聞こえた。

「ハン・ユンジェ検事」


見知らぬ声。しかし、恐ろしいほど明瞭に脳裏に突き刺さった。

ユンジェは答えなかった。


「正しい相手を見つけたのかどうか、確認したくて」

しばしの沈黙。


「ジョン・ユンソク事件」彼女が言った。「そして、3870-09」


その数字が受話器から漏れ聞こえた瞬間、ユンジェは自分が洗浄したはずのあらゆる文章が、巨大な波となって部屋の中に押し寄せてくる幻覚に襲われた。


「今すぐ説明してくれとは言いません」

彼女は淡々と言葉を続けた。

「私は、なぜその一文が常に同じ位置にあるのかを知りたいだけですから」


ユンジェはゆっくりと息を吸い込んだ。

「……どなたですか?」


受話器の向こうで、慌ただしく紙をめくる音が聞こえた。

そして女が言った。

「イ・ソヨンです」


ユンジェの手に力がこもった。

「イ・ソジュンさんの……」

「妹です」彼女は静かに付け加えた。


「今度はあなたの番ですよ、ハン・ユンジェ検事」


ツッ――。通話が切れた。


ユンジェはスマートフォンを見つめた。

まだ一言も発していない。

だというのに、既にまた一つ扉が開いてしまったことを――。

そして今度は、決して閉じられることはないだろうということを――。

彼は予感していた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


亡き兄、イ・ソジュンが遺した「扉を開けた人間」という謎めいた言葉。

ソヨンはその言葉の正体がハン・ユンジェであることを突き止め、ついに彼を追い詰めました。


洗浄したはずの過去の記録が、巨大な波となってユンジェを飲み込もうとしています。

逃げ場を失ったユンジェと、真実を求めるソヨン。

二人の邂逅が、物語を予想もしない方向へと加速させます。


続きが気になった方は、ぜひ【評価】や【ブックマーク】で応援をお願いします!

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