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第3話 みーちゃんの毛づくろい
朝の庭。葵はみーちゃんの毛づくろいをしている。
「にゃんちゃん、毛並みいいねぇ」
みーちゃんは目を細めて気持ちよさそう。
そこへ、祖母がやってくる。
「あおい、今日も店番よろしくね。私はちょっと出かけてくる」
「はい、おばあちゃん。気をつけて」
菊乃は小さな風呂敷包みを持って出ていく。葵は知っている——祖母が時々、街の古い神社や路地を巡っていることを。
店が開くと、いつものお客さんたち。
昼過ぎ、初めての客が来る。背の高い男で、洋装の背広を着ている。
「羊羹を一箱」
声が低く、どこか冷たい。葵は丁寧に包むが、男の視線が妙に鋭い。
男が去った後、葵は少しだけ眉を寄せる。
夕方、路地で瓦斯灯が点灯し始める。
葵は店を閉め、みーちゃんを抱いて庭に立つ。
「……また、来たの?」
みーちゃんが急に毛を逆立て、唸る。
葵の表情が、ほんの一瞬、無になる。
「悪い子は、許さないわ」
だが、次の瞬間、いつもの笑顔に戻る。
「ふふっ、びっくりしたね。もう大丈夫よ」
といってみーちゃんをぎゅっと優しく抱きしめた。




