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連続ホラー小説 大正あおい日和  作者: 泉水遊馬
桜餅と闇の臭い
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第2話 井戸端の噂

挿絵(By みてみん)



朝の井戸端会議が、今日も始まる。

葵は水を汲みながら、近所のおばちゃんたちと立ち話。

「最近、路地裏で変な影を見たって人がいるのよ」

おばちゃんの一人が言う。葵は笑顔のまま答える。

「気のせいじゃないかしら? 瓦斯灯の影が揺れてるだけかも」

内心で、少しだけ警戒する。

母の手紙に

「東京の空気が重くなっている気がする」

とあったのを思い出す。

店に戻ると、祖母が羊羹を並べている。

「おばあちゃん、今日の羊羹は特別に甘さを抑えたの?」

「うん。お客さんが甘いのが苦手な子もいるからね」

菊乃の手は、昔の記憶を刻むように動く。葵は知っている。

祖母が若い頃、陰陽道の秘術を極めたことを。だが、今はただの和菓子屋の婆さんだ。

午後、近所の女学生・小雪がやってくる。モガ姿で、髪を短く切っている。

「あおいさん、聞いて! カフェで蓄音機の新しいレコード買ったの!」

「素敵ね。どんな曲?」

「シャンソンよ! 聞いてみて」

小雪は小さな蓄音機を持ち込み、針を落とす。

優雅なメロディーが店内に広がる。

葵は微笑むが、ふと違和感を覚える。

音の奥に、何か歪んだ響きが混じっている気がした。

夕方、子供たちがまた来る。今日は団子をリクエスト。

「あおいちゃん、みたらし団子!」

「はいはい、待っててね」

葵は串に団子を刺し、タレをかける。

子供たちの笑顔を見ていると、心が温かくなる。

夜、葵は一人で庭の掃除をする。

みーちゃんが足元でじゃれる。

「……今日は静かね」

だが、路地の奥から、かすかな唸り声が聞こえた気がした。

葵の瞳が、一瞬だけ鋭くなる。

「いつまで隠れていられるかしら。」

葵はそうつぶやいた。



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