表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/14

第4話 訪問者と、気づかれ始めた異常

村に、見慣れない馬車がやって来たのは、昼過ぎのことだった。


「……珍しいな」


村人たちが、ざわつく。


この村に商人すら滅多に来ない。

ましてや、王都仕様の馬車など初めてだ。


馬車から降りてきたのは、灰色のローブをまとった青年だった。

年は、俺より少し上くらいだろうか。


「失礼。こちらに、鑑定士の方がいると聞きまして」


村長が戸惑いながら俺を見る。


「……レインのことだが」


「そうですか」


青年は俺に向き直り、丁寧に頭を下げた。


「王国調査官補佐、シオンと申します」


(調査官……?)


嫌な予感しかしない。


「最近、この周辺で作物の収穫量が急増しているという報告がありまして。念のための確認です」


――早すぎる。


まだ数日しか経っていないのに。


(情報網、やば……)


「ただの偶然ですよ」


俺は即答した。


「雨も良かったですし」


「なるほど」


シオンは微笑んだが、目は全く笑っていない。


「念のため、畑を拝見しても?」


断れる雰囲気じゃない。


「……どうぞ」


畑に着くと、彼は黙って作物を観察し始めた。


土を触り、水を舐め、空気まで確かめる。


(本職だな……)


しばらくして、彼は呟いた。


「……不自然です」


「え?」


「この土地、本来は貧弱なはずです。

なのに、今は上級農園並みの状態になっている」


俺は内心で青ざめた。


(もうバレてる……)


「鑑定士の方、調べさせてもらっても?」


「……何をですか?」


「能力です」


はっきり言いやがった。


「一般的な鑑定では、ここまでの変化は起きません」


沈黙が落ちる。


村人たちが不安そうに俺を見る。


(ここで否定しすぎると怪しい……)


「……俺の鑑定は、少し変わってるだけです」


「“少し”では済まないでしょう」


シオンは苦笑した。


「ですが、敵意はありません。むしろ――」


彼は声を落とす。


「王国は、あなたを欲しがる」


「……は?」


「このまま放置すれば、他国に狙われます」


俺は頭を抱えたくなった。


(平穏、どこ行った……)


その夜。


小屋に戻ると、扉の前に手紙が置いてあった。


『王城より正式な招待状を準備中』

『身辺に注意を』


署名:シオン


「……もう逃げたい」


本気で思った。



一方、街道。


勇者アルトたちは、ボロボロだった。


「回復薬……もうない」


リーナが空瓶を振る。


「補給地も潰されてる」


ガルドが吐き捨てる。


「……最悪だな」


その時、アルトの腕の傷が黒く変色し始めた。


「毒……?」


「解毒薬がない!」


リーナが叫ぶ。


焦る三人。


かつてなら、レインが即座に言っていた。


「その傷、放っておくと危険です」

「右の袋に解毒草があります」


だが今は、いない。


「……俺たち、間違えたのか?」


アルトの呟きに、誰も答えなかった。



村に戻る。


俺は苗木の前に立っていた。


「なあ……頼むから、これ以上目立たないでくれよ」


当然、返事はない。


だが鑑定結果は、また更新されていた。


《成長段階:第二層》

《影響範囲:拡大中》

《周辺補正:常時付与》


「……拡大中?」


村だけじゃ済まない。


(これ、絶対ヤバいやつだ)


スローライフ計画は、

ついに王国にロックオンされた。


そして同時に、

勇者パーティは、確実に転落し始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ