表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/18

第3話 追放の代償と、芽吹く異変

朝、目を覚ますと、まず最初に苗木のことが頭に浮かんだ。


(……昨日の鑑定、間違いじゃないよな)


簡単な朝食を済ませると、俺は畑へ向かう。


霧のかかった畑の奥で、例の苗木は静かに佇んでいた。


「……ん?」


近づいた瞬間、違和感に気づく。


葉の色が、昨日よりも濃い。


わずかだが、確実に変化している。


「一晩で……?」


俺は膝をつき、土に触れた。


まだ温かい。


(……動いてる)


魔力の流れが、ゆっくりと苗木へ集まっている。


俺は小さく息を吸い、鑑定を発動した。


《成長率:超高》

《潜在価値:世界規模》

《環境条件:一部達成》


「一部……?」


つまり、すでに条件の一つは満たされたということだ。


(俺か? ……いや、まさか)


昨日、俺は特別なことはしていない。

水をやり、雑草を抜いただけだ。


それだけで変化が起きるなら――


(この木、相当やばいな)


その日の昼、村では小さな騒ぎが起きていた。


「見たか!? 畑の麦!」


「昨日より伸びてるぞ!」


俺は呼ばれて向かう。


確かに、作物の背丈が明らかに高い。


昨日まで元気がなかったはずなのに。


「……鑑定」


《成長補正:付与中》

《影響源:不明》


(不明って……)


こんなの初めてだ。


(まさか、苗木の影響か?)


もしそうなら、この村全体が“強化エリア”になりつつある。


「レイン、あんた何かしたのか?」


村長に聞かれる。


「……いえ。水やりくらいです」


嘘ではない。


だが、本当でもない。


「そうか……」


村長は首を傾げつつも、それ以上追及しなかった。



一方その頃。


王都近郊の街道を、勇者アルトたちは進んでいた。


「……おかしいな」


アルトは地図を睨みながら呟く。


「この辺り、もっと魔物が弱いはずだろ?」


「数が多すぎる」


ガルドが剣を拭きながら言う。


「前なら、レインが警告してきた場所だ」


その名前に、場の空気が一瞬重くなった。


「……あいつの話か」


リーナが不機嫌そうに言う。


「いなくても、問題ないでしょ」


だが、その声には不安が混じっている。


実際、ここ数日でトラブルは急増していた。


・安全なはずの街道での奇襲

・補給拠点の壊滅

・予想外の強敵の出現


「情報がズレてる」


アルトは歯を食いしばる。


「今まで、全部レインの鑑定頼りだったんだな……」


言ってから、後悔した。


「今さらだろ」


ガルドが吐き捨てる。


「追い出したのは俺たちだ」


その夜、彼らは野営地で魔物に襲われた。


数は少ない。

だが、異常に統率が取れている。


「囲まれるぞ!」


アルトが叫ぶ。


戦いは、辛勝だった。


全員が傷を負い、回復薬も尽きかけている。


「……こんなはずじゃ」


リーナが震える声で呟く。


「前は、こんなの楽勝だったのに」


アルトは、焚き火を見つめた。


(レイン……)


追放した鑑定士の顔が、脳裏をよぎる。


あいつは、いつも静かに言っていた。


「この先、危ないです」

「回り道した方がいいです」

「ここは、避けましょう」


全部、正しかった。



再び、辺境の村。


夕暮れの畑で、俺は苗木を見上げていた。


幹は、ほんの少し太くなっている。


「……早すぎるだろ」


鑑定結果が、また変わっていた。


《成長率:超高》

《潜在価値:世界樹級(未覚醒)》

《環境条件:進行中》


「……世界樹級?」


思わず笑ってしまう。


(俺、どこに来たんだよ……)


スローライフ計画は、

三日目にしてすでに破綻しかけていた。


だがまだ、この時の俺は知らなかった。


この小さな変化が、

世界全体を巻き込む始まりになることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ