第2話 静かな村で、静かじゃない鑑定結果
村長バルドに案内され、俺は村を一通り歩いて回った。
家はどれも古く、壁にはひびが入り、屋根の一部が崩れている家も少なくない。
道は舗装されておらず、雨が降ればぬかるみになるだろう。
「……思ってたより、厳しいな」
思わず本音が漏れる。
「まあな」
村長は苦笑した。
「若いもんは、みんな街に出ちまう。
残るのは、年寄りと子どもばかりだ」
それはつまり――
労働力不足で、未来がない村ということだ。
(よく、今まで潰れなかったな……)
「作物も、あまり育たないんですか?」
「ああ。土が痩せてる。
肥料も買えんしな」
俺はしゃがみ込み、土を手ですくった。
見た目は普通だ。
だが、なぜか微かに温かい。
(……?)
違和感を覚え、俺は小声で呟いた。
「鑑定」
《土壌適性:極高》
《魔力循環率:異常値》
《現状評価:未活用》
「…………」
俺は、無言で土を戻した。
(ちょっと待て)
極高? 異常値?
こんな土地なら、本来は王都の農園クラスだ。
「どうしました?」
「い、いえ……なんでも」
今は言わない方がいい。
下手に騒げば、余計な問題を呼ぶ。
次に、古い井戸を覗いた。
《水質純度:最高級》
《回復補正:微》
(回復補正……?)
飲み水に回復効果がつく井戸なんて、聞いたことがない。
さらに倉庫の古い農具。
《素材強度:Aランク相当》
(なんでだよ……)
普通の村のはずなのに、
全部が妙に“当たり”すぎる。
まるで――
(最初から、仕組まれてたみたいだ)
嫌な予感が、背中を這う。
午後、例の苗木の前に来た。
やはり、目が離せない。
「この木、本当に抜く予定なんですか?」
「そうだねえ。場所も取るし」
老婆は肩をすくめた。
俺はもう一度、鑑定した。
《成長率:測定不能》
《潜在価値:世界規模》
《環境条件:未達》
やはり変わらない。
(環境条件……か)
つまり、必要な“何か”が足りない。
水か。土か。魔力か。
――それとも、人か。
「……俺が、世話してもいいですか?」
「好きにしな」
軽い返事だった。
その夜、俺は小屋で紙にメモを書いていた。
・土壌:異常
・水質:異常
・苗木:規格外
・村人:全員素直
「……揃いすぎだろ」
偶然にしては、できすぎている。
(ここ、本当に“辺境の貧村”か?)
スローライフのつもりで来た場所が、
実は“宝の山”だった可能性。
考えれば考えるほど、頭が痛くなる。
「……まあ、いいか」
俺はベッドに倒れ込んだ。
面倒なことは考えない。
静かに暮らす。
畑を耕す。
余計なことはしない。
そう決めたはずなのに――
俺の鑑定だけが、
それを全力で否定してくる。
「……絶対、平穏にならないな。これ」
小さく呟いて、目を閉じた。




