表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/11

第1話 役立たず鑑定士は追放された

「――レイン。今日限りで、君はこのパーティから外れてもらう」


勇者アルトのその言葉に、焚き火のはぜる音だけが妙に大きく響いた。

俺は一瞬、何を言われたのか理解できず、手にしていた鑑定用の水晶を見下ろしたまま固まる。


「……理由を、聞いてもいいか?」


そう尋ねると、剣士のガルドが鼻で笑った。


「理由? 決まってるだろ。お前は“役に立たない”」


その言葉に、魔法使いのリーナも小さくうなずく。


「鑑定結果は曖昧だし、数値も出ない。結局、戦闘では何もしてないじゃない」


俺は反論しかけて、やめた。

今まで何度も説明してきたからだ。


俺の鑑定は、今の強さじゃなく、これからどう成長するかを見るものだ。

剣が伸びるのか、魔法が極まるのか、それとも全く別の道を歩むのか――。


だが、それは即戦力を求める彼らには理解されなかった。


「魔王はもう倒した。これからは報酬の分配と名声の時代だ」


勇者アルトはそう言って、視線を逸らす。


「未来がどうとか、可能性がどうとか……正直、今さら必要ない」


――ああ、そうか。


俺はその瞬間、すべてを悟った。

俺は最初から、便利な道具として同行させられていただけなのだ。


「分かった」


俺は立ち上がり、背負っていた小さな鞄を手に取る。


「今まで世話になった」


それ以上、言うことはなかった。


金はほとんど渡されなかった。

「鑑定士の分け前としては妥当だろ」とガルドは言ったが、反論する気も起きなかった。


夜の森を一人で歩きながら、俺は自嘲気味に笑う。


(外れ職、か……)


鑑定士は昔からそう呼ばれてきた。

戦えない、派手さがない、成果が分かりづらい。


それでも俺は信じていた。

誰かの未来を見抜く力は、きっと役に立つと。


だが、現実はこうだ。


「これから、どうするかな……」


地図を広げると、近くにあるのは辺境の小さな村だけ。

名前も聞いたことがない。


(まあ、いいか)


少なくとも、もう誰かに才能を否定されることはない。


数日後、たどり着いたその村は、想像以上に寂れていた。

畑は痩せ、木々は枯れかけ、人々の表情も暗い。


「旅の人かい?」


声をかけてきた老人に、俺はうなずく。


「少し、働かせてもらえませんか。鑑定しかできませんが」


老人は困ったように笑った。


「鑑定、ねえ……まあ、いいさ。どうせ何もない村だ」


そう言われて案内された畑の隅。

そこに、一本の小さな苗木が植えられていた。


「もう育たない木だよ。抜くのも面倒でね」


俺は、何気なく鑑定を使った。


――瞬間、視界が歪む。


《成長率:測定不能》

《潜在価値:世界規模》

《未来分岐:多数》


「……は?」


思わず声が漏れた。


(これ、ただの木じゃない)


心臓が、嫌なほど早く打ち始める。


勇者パーティで何百回と鑑定してきたが、

こんな表示は、見たことがなかった。


「……面白いじゃないか」


俺は、久しぶりに笑った。


これが俺の「静かなスローライフ計画」の始まりであり、同時に最強国家誕生の引き金だった。

初めましてアサリです。

これからは毎日19時投稿をしていくつもりなので是非見てもらえると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ