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はじまり
夜明け前、灰色の空の下。
風すら止まった廃墟の街に、白い影が降り立った。
焦げたアスファルトが音もなく割れ、少女の裸足が灰を踏む。
ワンピースは汚れず、髪だけがゆっくりと揺れた。
沈黙の中で、壊れたビルのガラスが彼女を映す。
映った像には影がない。
代わりに、足もとから細い光の粒が浮かび上がり、
星座のように夜気に滲んでいく。
「次の世界は……どのくらいもつかしら?」
少女は笑いでも嘆きでもない声で呟いた。
指先をひと振り。
空間が波打ち、空気が反転する。
そこに現れたのは、形を持たぬ黒い輪郭。
眼も口もなく、ただ“滅び”の概念だけを宿したもの――魔王の原型。
少女は満足そうに頷き、静かに囁いた。
「あとは、よろしくね」




