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銃の知識ゼロの世界で弾丸補充スキルを授かった冒険者、案の定Bランクパーティにクビにされる~銃を手に入れてから狙撃無双で英雄と呼ばれる件~  作者: ma-no
三章 パーティ活動

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092 製作の共同作業


 七層での仕事2日目。今日もシモンとユーチェはメイドの作ったお弁当を持って狩りへ出掛ける。プックはもう見送りすらしてくれずに自分の仕事だ。

 今日のシモンは少しビクビク。昨日、散々ダークエルフからヨイショされまくったから警戒してるよ。


 しかし、今日は何か様子がおかしいみたいだ。


「こっちは見てますけど、近付いて来ないどすね」


 ユーチェの言う通り、ダークエルフはシモンたちを遠巻きに見るだけで誰も近付いて来ないのだ。


「なんだろ……逆に不気味……」

「あっ! アレちゃいます? 昨日、騎士さんが来てたから、王様に話が行ったんちゃいます??」

「あぁ~。止めてくれたんだ。それは助かるな~」


 そう。昨日は朝からずっとシモンをつけていた暗部の者が、メインデルト王に報告済み。だから冒険者ギルドの騒ぎに騎士団が駆け付けてくれたのだ。

 つまり、シモンの近くには暗部が張り付いているということ。そのことに気付いていないシモンとユーチェは「平和だね~」と、のほほんと仕事をするのであった。



 それから1週間。狩りは普通のパーティの倍以上稼げているので、シモンとユーチェはお気楽なモノ。しかし、ここ2、3日はプックがイライラしてることが多い。


「何か上手く行ってないのか?」

「せやねん。連射がな~……それに箱もどんな形にしたらええんかとな~」

「あ~。ウィンチェスター弾よりデカイもんな。バックショット弾みたいに一からの作業になってたのか」

「せやねんな~。プーシー7号の場合は弾が散らばるから、それほど精密に考える必要なかったんやけどな~」

「また単発から作ったらどうだ? いつもそうしてただろ??」

「ああっ! な~んかやり忘れたことがあると思ったら、それやないか~」


 シモンと話すことで、プックの苛立ちは解決。


「もう~。シモンはんがどんなの作るかしつこく聞くから忘れとったやないの~」

「俺のせいにしないでくれない?」


 ただし、プックは人のせいにするから、シモンに苛立ちは移っていたけど……



 それから4日……


「どや! プーシー9号の試作機や!!」


 早くもプックは完成させたけど、いつも通りユーチェとシモンの反応はよくない。


「これ、プーシー5号が大きくなっただけどすよね?」

「シーッ! そんな言い方したらプックが怒るだろ!」


 だって、見た目はアサルトライフルと変わらないもん。ユーチェは口が軽いから本質を言っちゃったので、シモンは口を塞いで黙らせた。


「その通りやからええで」


 でも、プックは珍しく大人対応。自分でも不本意な作品だからだ。


プーシー2号(ライフル)をそのまま大きくしただけやさかいにな。弾も一発だけや。これで撃ってもらって、改良版を考えて行こうと思うねん」

「なるほどな。撃ってみるよ」


 プックの意見に賛同したシモンは、庭の射撃場に移動する。ちなみにこの射撃場は、プックがメイドに図面を預け、工事できる人を雇ってもらって作らせた物だ。もちろん費用はパーティ資金から出ている。


「んじゃ、行くぞ……」


 シモンが照準を合わせて引き金を引くと、ズドンッと大きな銃声。それと……


「いって~~~!!」


 顔を歪めて仰け反るシモンの姿。


「凄い反動やろ? そのせいで上手く作れんくてな~」

「それ、先に言ってくれ! 肩が飛んでったかと思ったわ!!」

「あ……それはえろうすんまへんな~。プッ」

「わかって撃たせただろ! 耳も痛いんだよ!!」


 これまた珍しいシモンのマジギレ。注意事項を述べなかったのも悪いが、プックのしたり顔がムカつくんだもの。

 ひとまず消音アイテムはオンにしたら、シモンは撃ち方を模索する。


「もっと強く押し当てたらいけるか……つう~……持ち手が他にもあったほうが力が入るかも? 後ろ辺りに」

「ほうほう……てことは、置いて撃つほうが良さそうやな」

「だな。たぶんだけど、ウィンチェスター弾より深く土にめり込んでいるから、もっと遠くに飛ぶと思う。近距離なら、ゴーレムでも貫通するかもな」

「なるほどなるほど。ちょっとこいつに付け足しながら、改良版の参考にしようや。時間が掛かるけど待っといてな~」


 この弾丸の名前は、50BMG弾。とある世界で、対物ライフルやスナイパーライフルに使われる弾丸だ。

 50BMG弾といえば戦車を想定して作られた弾丸。実際には軽車両を貫通する程度の威力だが、それでも強力すぎてプックの手に余る。なので改良する度にシモンが試射に付き合い、新しい銃の完成を目指すのであった。


「ウチも手伝えることありません?」

「う~ん……撃ってみるか?」

「痛いのはちょっと……」


 シモンとプックが仲良く話し合っているからユーチェも何かしようと思ったけど、試射は痛そうだから断ったので仲間に入って行けないのであったとさ。



 それからのプーシーユーの活動は、狩り時々銃の試射。シモンの意見をプックが反映して形が微調整されて行く。

 そんな日々が1週間を過ぎた頃、狩りで樹海に入ったユーチェとシモンは違和感を覚えていた。


「なんかおかしくないどすか?」

「やっぱりそうだよな? 2、3日前から変だ」

「あ、そんなに前からやったんどすか……」


 気付いたのはシモンのほうがかなり先。ただ、シモンもハッキリとした答えが持てなかったから言わなかったみたいだ。


「俺たちが初めてこの森に入った日より、確実に魔獣は王都側に近付いている。たまたまなのかもしれないけど」


 そう。魔獣の出現位置が王都に近付いていたのだ。


「そうなんどすか? ウチには風というか邪気というか……それがこっちに流れて来てるような……」


 でも、ユーチェの考えは違うみたい。


「邪気って?」

「なんかモヤモヤ~ってのがどすね。気持ち悪いんどす」

「ふ~ん……風使いの特性みたいなモノかな? ま、今日はすでにノルマ達成したし、早く帰って冒険者ギルドで聞いてみよう」

「はいっ」


 何やら釈然としない説明であったが、ユーチェのジョブは珍しい物なので信じるシモン。それがユーチェは嬉しくってシモンに抱きつこうとしたけど、ヒョイッと避けられたのであった。


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