090 王都に潜伏
ダークエルフのメインデルト王から娘の安売りみたいな婚活をされたので、シモンが固まっていたからプックとユーチェが断ってくれたけど……
「なんであーし、シモンはんと寝なアカンのやろ……」
「お前たちが結婚してるとか言うからだろ~」
断り方が悪すぎたので、全員大きなベッドがひとつしかない部屋に押し込まれてしまった。
「ええやないどすか。ゆくゆくは六層に凱旋して大々的な結婚式するんやから」
「それや! ユーチェが変なこと言うから、あーしも巻き込まれたんや!!」
「なんで無理して噓つくんやろな~。シモンさんの伴侶は1人でええのに」
「うるさいから俺越しにケンカしないでくれない?」
シモン、憧れのハーレムは、仲の悪いドワーフとエルフに挟まれてしまったからまったく喜べない。そもそもシモンのタイプは2人を足して2で割ったグラマーな女性なので、一切手を出さずに寝落ちするのであった……
「これはこれでムカつくな……」
「うん……どんだげウチらに興味ないんや~」
そのせいで、珍しく2人の意見が一致するのであったとさ。
翌日のシモンは、腕にプックとユーチェの頭が乗っていたから身動き取れず。さすがにここまでやられては、タイプじゃなくてもある部分が反応していた。朝だからとその部分に言い聞かせていたけど。
その2人はなかなか起きないので、シモンはついにプックの巨乳に手を出してやろうと思ったけど、プックの目がバチーンッと開いたから下手な口笛吹いてた。
それで何かしようとしていたとバレて、脇腹を軽く小突かれた。昨夜のシモンはスヤスヤ寝ていたから、やはり自分は魅力があるのだとプックも照れたらしい。
しかし、パワーファイターの小突きは、紙装甲のシモンからしたらただの暴力。痛みで飛び起き、ついでにユーチェも驚いて目覚めた。
ユーチェからは疑われるよりも「なんで手を出さないんどすか~」とスネられていたけど、シモンは我関せず。王宮の食事をいただき、ダークエルフの王都観光に出た。
「ダークエルフも森の民だと思っていたけど、わりと普通の町並みなんだな」
「ホンマやな。エルフみたいにもっと草花があると思ってたわ」
王都は高く分厚い外壁に囲まれ、城や家は全て石造り。エルフの王都は木造の家ばかりだったから、シモンとプックは残念感がある。
「ダークエルフはその昔、もっと深い森の中で生活していたらしいどす。でも、邪神が現れてから魔獣が増えて、森を捨てざるを得なかったと女王様が言ってましたよ」
「そりゃそんなところでは暮らせないか。そういえば、高いところから南側を見たら、見渡す限りの森だったな。あそこから追い出されたってことか~」
「おそらく。王都は他の町と違って、できるだけ故郷を感じられる場所に作ったのかもしれまへんね」
ユーチェから雑学を聞かせてもらい、ダークエルフの暮らしを見ながらブラブラ歩き、面白そうなところがあればちょっと見学。ランチには名物料理らしきお店に入ってみた。
「肉だな……」
「肉やな……」
「おふたりさん。エルフに幻想抱き過ぎやで? お肉だって魚だって食べますがな~」
エルフが肉食だったから、今度こそはと思ったシモンとプック。しかしダークエルフも肉がメインに来たからガッカリ感はプラスだ。
「そういえばこんなところまで連れて来られたけど、これからどうしますん?」
お腹いっぱいになり、まったりタイムになったらプックはシモンに質問を投げ掛けた。
「たぶんだけど、勇者パーティは迷宮街にまた戻って来ると思う。だから元々、しばらくは適当な町で様子見する予定だったんだ」
「てことは、王様の誘いは渡りに船やったんや」
「だな。ここに冒険者の仕事があるなら、鍛冶場のある家を借りて滞在しよう」
このあと冒険者ギルドに足を運び、狩りの仕事が見付かったので、王都滞在は本決定となるプーシーユーであった。
その日の夜、メインデルト王に家を借りることを報告したら、またあれよあれよ。3日後には鍛冶場付きの屋敷にプーシーユーは押し込まれた。
「またメイド付き……」
「監視されとるな……」
「女王様は全部出してくれたのに、ダークエルフの王様はケチどすな~。ムグッ!」
「「シーッ!!」」
シモンとプックはメインデルト王の意図に気付いていたが、ユーチェが口を滑らせたので手で塞いで黙らせる。
2人としては家賃がタダだけでも大助かり。というか、名前しか貸していないのにエルフのコルネーリア女王みたいに感謝されまくるのは疲れるから避けたいのだ。
ダークエルフのメイドは耳をピクピクしていたから聞こえたっぽい。なのでシモンとプックは、「これだけで充分だから王様にチクらないで~」と泣き付いたんだとか。
「んじゃ、いってくるな」
「いってきま~す」
「いってらっしゃ~い」
翌日、プーシーユーは七層で初の活動。シモンとユーチェは樹海へ狩りに。プックは屋敷に残って鍛冶仕事だ。
シモンたちは真っ直ぐ王都の南門に向かい、人の出入りが少ない貴族専用の門にてメインデルト王の書状を見せる。その時、最初は怪しまれていたけど、シモンが名前を出すと握手を求められてた。
王都の外に出ると、同じように狩りに向かうダークエルフの列に混ざらざるを得ないので、2人はめっちゃ浮いてる。王都はダークエルフが9割以上を占めているからだ。
「ウフフ。シモンさん、めっちゃ人気どすね~」
「これ、俺の名前、どこまで広がってるんだろ……」
ここでも名前を出したらVIP対応。ダークエルフは「あの勇者パーティを追い払ったシモンがいるぞ~!」と騒ぎになり、大人数で歩くことになったシモンとユーチェであった……




