087 六層の迷宮ボス戦
プーシーユーの迷宮攻略は、超順調。地下4階まではシモンを温存しても、通路から飛び出た数分後にはモンスターからの被弾も無く倒せちゃうからだ。
地下5階からは逆にプックとユーチェを温存して、シモンのアサルトライフルで蹂躙。通路を出た瞬間に全てのモンスターの頭を撃ち抜くから戦闘にもならない。
これはさすがにプックたちが暇すぎるらしいので、1体は必ず残すようにする。
その2人の戦い方は、基本的に蜂の巣。プックのサブマシンガンで巨大なモンスターの足を鈍らせて、ユーチェのアサルトライフルで弱点を射貫き、大ダメージを与える作戦だ。
シモンは「弾がもったいない」と思っているけど、2人は「これが普通だよね~?」と思ってるんだとか。
そんな倒し方なので、地下5階も楽々クリアー。安全地帯でいつもより長く休んだら、翌日に六層の迷宮ボスと対決だ。
「なんやここ? めっちゃ広いな」
「天井も見えへんな~。まるで外みたいどす」
ボス部屋は五層と大きく違う。立派な扉を潜ったあとは、開放感のある広々した空間が広がっていたのでプックとユーチェは緊張感なく喋っている。
「昨日、散々説明しただろう。グリフォンが出るって。上から攻撃して来る、冒険者泣かせのボスだとも」
迷宮ボスは、ライオンの体に鷹の顔と翼をを持つグリフォン。普通のグリフォンでも2メートル以上ある体長なのに、5倍も大きな体となっている、グリフォンキングなのだ。
ちなみに冒険者ギルドの査定では、グリフォンキングはA級モンスターに位置しており、その強さから冒険者が命を落とすことが多々あるので、冒険者パーティがここで足止めされるケースも多いそうだ。
「とか言ってたら来たな。作戦開始だ」
「「ラジャーや~」」
「キエエェェー!!」
シモンが軽く注意していたら、大きな翼で羽ばたくグリフォンキングの登場。シモンはアサルトライフルで狙いを定めながら前に出る。
プックとユーチェは壁を背にしたままそこで待機。シモンが発砲してグリフォンキングに着弾した瞬間に、2人は壁伝いに右に走り出した。
「こっちだ!」
「キエエェェー!」
2人とは違い、シモンは走っては撃ち、撃ってはジグザグ走る。もちろんグリフォンキングはシモンを追い回し、前脚で薙ぎ払おうとしたり、風の刃を放って攻撃を続ける。
その攻撃をシモンは巧みにかわし、グリフォンキングが通り過ぎて旋回したところを狙って発砲。こんなに不利な戦い方なのに、いまのところ全て命中だ。
アサルトライフルの残弾が残り3発になったところで、銃声が響いた。プックが回転式拳銃の消音アイテムのスイッチを切って撃ったのだ。
その音を合図に、シモンはグリフォンキングの旋回と同時にダッシュ。ショットガンを肩に担いで銃口を後方に向けて、前を向いたまま適当に放つ。
「シモンはん! グリフォンはまだ遠いでっせ!」
「ウチの弾も当たってるどすえ!」
シモンが部屋の隅に向かって走っていると、プックの状況説明とユーチェの援護射撃。その声を信じて、シモンは振り返りもせずに一目散に走り、壁と鋼鉄製のシールドで囲まれた場所に滑り込んだ。
「ふぅ~。囮作戦、成功っと」
「「お疲れさ~ん」」
そう。シモンが1人でグリフォンキングを相手取っていた理由は囮。この間にプックとユーチェはボス部屋の隅に固定シールド等を設置して、安全地帯を作っていたのだ。
「んじゃ、あとは五層と一緒な。プック、先に撃ってくれ。俺たちは箱替える」
「よっしゃ! プーシー8号が火を吹く……」
「それはグリフォンが地上に下りた時だって!!」
ここからは、ミノタウロスキングと戦った時と同じ作戦。プックのサブマシンガンとシモンたちのアサルトライフルの交代制だけど、プックはガトリングガンを早く使いたいからって先走りそうになるのであった。
迷宮ボス戦、第2フェーズは、プックのサブマシンガン乱射からスタート。その間にシモンとユーチェはアサルトライフルの弾倉を満タンの物に替えて弾数を合わせる。
プックの弾が尽きるのに合わせて、シモンの合図でユーチェの発砲。グリフォンキングが避けた方向にシモンが合わせて弾が頭に着弾する。
これならば、グリフォンキングの接近は難しい。グリフォンキングは横に飛んだり旋回したりと、少しずつしか距離を詰められないからだ。
「風魔法が来る! しゃがめ!!」
「「はいっ!」」
ならば、グリフォンキングも遠距離攻撃。シモンたちは一斉に固定シールドに隠れて風の刃の着弾を待つ。
「よしっ! ユーチェ撃て!!」
「はいっ!」
風魔法がガンッと固定シールドに当たったら、ローテーションの復活。ユーチェ、シモンと撃ち、残弾がゼロになったらプックのサブマシンガンの出番だ。
ただ、グリフォンキングも馬鹿ではない。風の刃を2回放ったり、風の刃に隠れるように突撃する。2回放つ程度ならローテーションは乱れないが、突撃はプーシーユーにも焦りが見える。
「ヤバッ!? シールド押さえろ~~~!!」
「うりゃ~!!」
「重っ!?」
固定シールドから顔を出した瞬間には、グリフォンキングがそこまで迫っていたからだ。そんな巨体が降って来ては、シールドを杭で固定していても心許ない。
全員で支えてなんとか耐える。プックが一番役に立っている瞬間でもある。
「うおおぉぉ!! プックも8号撃て!!」
「もう撃っとるわ! うりゃああぁぁ!!」
固定シールドから顔を出したら、そこにはグリフォンキング。シモンとプックはすぐにさま連射でグリフォンキングを追い払おうとする。
「シモンさん! 5号、箱替えました!」
ただし、ユーチェは残して。どちらも弾切れになるのは困るから、作戦通りだ。
シモンのアサルトライフル連射を頭に喰らい、プックのガトリングガンの高速連射を体に喰らいまくったグリフォンキングは奇声をあげながら後退る。
さらにこの銃弾の雨を嫌ったのか、風の刃を放つと同時に上空に逃げて行った。
「「よっしゃ~!」」
「やったどすね!」
最大の危機を乗り切ったプーシーユーは、大声を出して喜ぶのであった……




