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銃の知識ゼロの世界で弾丸補充スキルを授かった冒険者、案の定Bランクパーティにクビにされる~銃を手に入れてから狙撃無双で英雄と呼ばれる件~  作者: ma-no
三章 パーティ活動

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085 続・青き群雄


 奈落十層にある城塞都市……


 大通りを息を切らして走るオオカミ耳の女性の姿があった。


 その女性は人混みをするりと抜け、減速せずに角を曲がり、こじんまりした一軒家に飛び込むと、リビングの扉を勢いよく開けた。


「みんな! 大変! シモンって人が冒険者新聞に載ってるよ!!」


 女性は握っていた冒険者新聞をバーンッと広げると、リビングでくつろいでいた男性と3人の女性は驚くことなく振り返った。


「「「「知ってる~。アハハハハ」」」」


 さらに、全員冒険者新聞を広げて笑うので、女性はなんとも言えない顔でいつもの席に着いた。


「もう~。なんでみんな私より先に知ってるのよ~」

「いや~。僕も朝、冒険者ギルドに顔を出したら、シモンシモンって声が聞こえたからね。まさかとは思って10部も買っちゃった」

「アールトが一番引き摺ってたもんね~」


 最後に喋ったのは、目付きが少しキツイ小柄の女性、カティンカ。男をアールトと呼んだと言うことは、この集団は青き群雄。ここは青き群雄が滞在している借家だ。

 しばしカティンカがアールトをからかっていたら、オオカミ耳の女性、ゾーイは本題に戻す。


「それにしても、六層から勇者パーティを追い払ったと書いているけど、これって本当にみんなの知ってるシモンさんなの?」

「間違いないよ。凄腕の弓使いとなってるし」

「疑うワケじゃないんだけど、ただの弓使いが勇者パーティに敵うとは思えないんだけど……『シモンの矢は千里を射貫く』って、さすがにウソじゃない??」

「そっか。ゾーイはシモンさんの戦っているところ見たことなかったんだったな。シモンさんは……」

「あ……始まっちゃった……」


 ちょっとした質問が失言。アールトのシモン自慢が始まってしまったのでゾーイはすでにお腹いっぱいだ。弓矢を外したことがないなんて、耳にタコなんだもの。


「そ、それにしてもよ? 千里なんて、弓使いの上級ジョブでも届かないんじゃ……」

「そこはエルフの女王様が言ってるから信じられるよ。いい人だったでしょ?」

「そうだけど……女王様はシモンさんと会ってないと書いてるし……」

「たぶん、シモンさんに協力していると言えない事情があるんだと思う。勇者パーティの酷い噂は散々あるんだから、この方法しかなかったんだよ。下手に言うと報復があるかもしれないし」


 アールトの話は理に(かな)っているが、ゾーイはやはり信じ切れないみたいだ。


「でも、女王様の目に映らないほどの遠くから攻撃したなんて……」

「それは~……これのせいだと思う」

「これって? あ、みんな持ってるんだ……」


 アールトがポケットから弾丸を取り出すと、ゾーイ以外の全員が微笑みながら見せ付けた。


「これの使い方がついにわかったんだと思う。今まで黙っていたけど、シモンさんの本当のジョブは、狙撃手って誰も知らないジョブなんだ」

「誰も知らないなんて、レア中のレアじゃない!? なんでそんな人をクビにして、私なんか……」

「それはその時のベストの選択だったからだ。あのまま六層へ行ったら、たぶんシモンさんは迷宮ボス戦で死んでいた。シモンさんは僕たちを逃がすためならなんでもやりそうだから……」


 アールトが物悲しそうな顔をするので、ゾーイは心配になる。


「もしもシモンさんが追い付いて来たら……どうするの?」


 そう。勇者パーティと戦える人間なんて凄い戦力だから、ゾーイは解雇されるのかと頭に浮かんだのだ。


「その時は、新しい仲間と一緒にこんなに強くなったと自慢する。だからゾーイは何も心配する必要ないんだよ」

「そうよ。ゾーイはもう、青き群雄になくてはならないメンバーよ。自信持ちなさい」

「みんな……」


 アールトとカティンカに続き、他のメンバーもゾーイがいないと困る的な発言をするので、ゾーイは薄らと涙を浮かべるのであった。



「それにしてもよ。シモンは勇者パーティにケンカ売るなんて何してんのよ」


 ゾーイが落ち着いた頃に、カティンカは新聞を捲りながら(いきどお)りの表情を見せた。


「ウフフ。心配よね~?」

「ち、ちがっ……」

「カティンカは心配する時は怒る」

「だから違うって言ってるでしょ~」


 セシルとダフネがからかうので、カティンカは顔が真っ赤。なので反撃だ。


「セシルだってダフネだって、いますぐ飛んで行きたいんじゃな~い? シモンのこと、一番守ってたんだから。勇者パーティに怪我させられたかもよ?」

「勇者パーティ、呪う……」

「コロス……」

「そんなに怖いこと考えるぐらいなら、飛んで行きなさいよ」


 でも、微妙に失敗。プリーストのセシルの言葉じゃないし、大盾戦士のダフネは殺意が漏れ過ぎ。さすがにカティンカもブルッと震えた。


「まぁまぁ。シモンさんは六層にいるのかすでに七層にいるのかわからないけど、僕たちのやることはひとつだけだ」

「そうね。ここに来る前に邪神を倒してやりましょう」

「邪神がいなくなれば、シモンさんが無理してここまで来なくて済むしね」

「いつでも会えるようになる」

「私も頑張る!」


 こうしてシモンの話からアールトがまとめると、カティンカ、セシル、ダフネ、ゾーイと気合いを入れ直し、蒼き群雄は世界のために戦い続けるのであった……



 その2ヶ月ぐらいあと……


「「「「「プッ……プーシーユー……アハハハハハハ」」」」」


 シモンが不本意に思っているパーティ名が蒼き群雄の耳に届き、笑い転げる事態になったとさ。


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