083 六層の王都
プーシユーに不名誉な二つ名が付いていたが、弾丸補充スキルのレベル上げはボチボチ成功。大量にアントを殺したことでレベルがふたつ上がり、1日の補充数が200個に増えていた。
なのでこれ以降のシモンは、迷宮ではできるだけショットガンを使い、ユーチェにあとを任せる作戦で日銭を稼いでいる。
プックはというと、次は何を作ろうかと考え中。設計図を何枚も書いてはいるけど、しっくり来る物がないみたいだ。
だからシモンがユーチェ用のアサルトライフ改良版を作るように指示を出していたけど、サブマシンガン改から作ってた。両手に持って撃てばカッコイイかも?って理由で……
この頃には発注した弾倉は全て届き、孤児院の子供が補充する作業が確立されていたので、シモンたちは延々弾込めから解放された。
使ったら帰りに孤児院に届け、翌朝か余裕があれば2日後に取りに行く。銃の整備はプックに任せてもいいが、迷宮内では1人にやらせると時間が掛かるので、シモンとユーチェも練習がてら毎日やっているから慣れたモノだ。
入口の迷宮街を拠点にしてから1ヶ月と数日。アサルトライフ等の改良版も完成した頃に、女王の使いというエルフが訪ねて来た。
その日はちょうどシモンたちの休日だったので、エルフのメイドが予定を喋っていたと受け取っていた。
女王の使いの話は、プーシーユー全員で聞く。ちょうど暇していたみたい。そうして女王の使いが帰って行くと、シモンたちは話し合う。
「そろそろ七層に向かおうか?」
女王の使いの話とは、勇者パーティのこと。少し前に八層に移り、最近は六層にもめっきり訪れなくなっていたから報告してくれたのだ。
「あ、そうだ。プックってどうする? いまなら五層に戻っても勇者パーティに狙われないと思うけど」
「なんやのん。プーシーシリーズが完成したら、あーしはお払い箱でっか? 所詮、あーしの体が目的やったんやな」
「いや、確認しただけだ。変な言い方しないでくれない?」
よかれと思って聞いたのに、プックは被害者感を出すのでシモンも困っちゃう。その話を聞ていたユーチェは、「2人旅?」「やっぱりそういう関係だったの!?」と、嬉しそうにしたり驚いたりしてた。
「勇者パーティが現れないとは聞いたけど、いつ瞬間移動して来るかわからないから、出口の迷宮街はすぐに離れようと思う。着いてから準備と休みの2日で、迷宮攻略って感じでどうだ?」
「それでええで」
「ウチも~。七層はどんなところなんやろ~?」
プーシユー、階層移動決定。シモンたちはさっそく旅立つ準備を始め、孤児院にも感謝を伝えに足を運ぶのであった。
それから数日後、プーシユーは入口の迷宮街を立った。移動は悩んだ結果、ちょっといい馬車で移動。
シモン的には護衛依頼を受けながら進もうかと思ったらしいが、メイドが馬車代も御者代も出してくれると言うので、プックとユーチェに「楽できてええやん?」と押し切られたんだとか。
移動中は盗賊や魔獣にプーシユーが気を付けて進み、村や町で体を休める。これも全てメイドがお金を出してくれたので至れり尽くせり。メイドがずっとついて来てるのは見張られているみたいで気持ち悪いらしいけど。
ただし、ひとつだけ寄り道しないといけない場所がある。その場所は入口の迷宮街から馬車で4日掛かり、出口の迷宮街との中間に位置する場所だ。
「おお~。緑豊かで綺麗な町だな~」
「綺麗やけど、あーし的にはもっと石の建物があるほうが落ち着くわ~」
その場所とは、エルフの女王が鎮座する王都。シモンもお世話になったから別れの挨拶はしようと思っていたので反対はしなかったのだ。
シモンとプックは自分の故郷を思い浮かべて窓から外を見ていると、ユーチェが話に入る。
「2人の故郷って、そんなに違うんや。他の階層の王都もこんなもんやと思ってたどす~」
ユーチェはここで育ったから、見慣れたモノ。しかも、血筋がいい家の生まれで家も大きいので、シモンとプックはいまさら「お嬢様だったの?」とゴニョゴニョやってた。
プーシユーを乗せた馬車は王都内をゆっくり走り、そのままお城へ直行。シモンとプックは宿を取ろうと考えていたから、拉致されたとも言う。
豪華な木造のお城の真ん前で降ろされたシモンとプックは、その荘厳な佇まいに口をあんぐり開けて見ていたら、ユーチェに手を引かれて連れ込まれた。
シモンがシャイだから出迎えは少人数にしたらしいが、豪華な廊下を歩くだけでド緊張。プックと一緒に「こえ~こえ~」と言いながら進む。
そのままプーシユーが連れて来られた場所は、城の中庭。中庭とは思えないほど木が生い茂り、まるで森の中にいる感覚にシモンたちは陥った。
そうしてそのまま進むと、光が降り注ぐ開けた場所が見え、その中央には枝で編まれた椅子に座る美女、コルネーリア女王がいたから、シモンは「この世のモノとは思えない」と立ちくらみしていた。
「シモン、プック。久し振りでありんす。ユーチェも頑張っているらしいのう」
プーシーユーが近付くと、コルネーリア女王は微笑みながら声を掛けた。その美貌にやられたシモンは呆けていたので、プックに尻を叩かれた。リーダーなのだからシャキッとせいってことらしい。
「お久し振りです。それと、様々な援助、ありがとうございます」
「そう畏まる必要ないでありんす。妾の民に死者が出なかったのは、シモンたちのおかげだから礼をしただけでありんす。まだまだし足りないぐらいでありんすよ」
「そ、そんな。大丈夫です。プックは遠慮を知らないんで……」
「シモンは~ん? なんであーしのせいにするかな~??」
コルネーリア女王との面会は、シモンに罪を擦り付けられたプックがツッコンだので笑いが起こり、やっと緊張が解れて、和やかな会食に変わるのであった。




