045 六層に到着
無事、迷宮踏破を成し遂げたシモンとプックは、喜びはそこそこでさっそく門番の男にご挨拶。ただ、冒険者カードは見せずに手紙を差し出したので、門番からめちゃくちゃ疑った目で見られている。
「五層のギルマス案件……間違いは無さそうだな……」
「というワケだ。通っていいか?」
「致し方ない……六層にようこそ」
「ああ。ありがとう」
門番はまだ疑った目をしていたけど、仕事だからいちおう歓迎の言葉を送っていた。
その顔が嫌そうな顔をしていたからプックは「感じわるっ」とか言って歩いていたけど、どうも町の様子がおかしいので、そちらに話題が移った。
「ぜんぜん人が歩いとらんな~」
そう。迷宮街といえば、職を求めて人々が各地から集まる町なのに、ガランとしたゴーストタウンになっているからだ。
「勇者警報でも出て、みんな疎開したんじゃね?」
「勇者警報って……勇者はスタンピード並みかいな」
「町が壊されない分、まだマシ……なのかな~?」
「どうやろ? 殺せない分、もっと質が悪いかも?」
「殺したらダメとは言われてないけど……」
「女神様が怒るかもしれない言うてたやないか」
見る物もほとんどないので勇者パーティの悪口を言いながら歩いていたら、第一町人発見。シモンだけが人族のおじさんに近付いて、宿屋が集まる場所を聞いてそちらに向かう。
「今日はちょっといい宿に泊まろうか?」
「そりゃええな~。温泉付きなら尚良しや」
「迷宮街にはそんな宿ないぞ。あと、別々に入ろうか……いや、こんなに人がいないなら、宿じたいを変えたほうがいいか……」
「さっきからなんでんのん。そんなにあーしと一緒の宿は嫌なんかいな?」
「そういうことじゃなくて、俺たちは迷宮で死んだことにしたいんだ。なのに目立ったらマズイだろ? 本当なら、ここもすぐに立ちたいぐらいだけど、もう夜になるからな~」
「シモンはんは徹底してまんな~。そんなことせんでも、2人でクリアーできるなんて思いまへんて」
シモンは用意周到でプックは楽観的。しかしシモンの話は無視はできないので、プックも渋々だが了承してくれた。
そうして何件か宿屋の外観を見ていたら、ちょうど大通りを挟んだ対面にちょっといい宿屋が2軒あったので、ここに別々で泊まることに決定した。
「金はこれだけあればメシを頼んでも余裕だろう。あと、1号を渡しておく。宿からは出るなよ? 酒は収納バックに入ってるヤツを飲め。それと……」
「わかった。わかったって。ホンマ、うるさいわ~」
「誰か来てもすぐ開けるなよ~」
「オカンか!」
心配症のシモンに見送られて宿屋に入ったプックは、手持ちのお金と相談して、二番目にいい部屋で大通り側を選択。男性従業員にはお金の心配よりも「勇者パーティがいつ来るかわからないから早く立つように」と心配されていた。
プックはまた心配されたからイラッと来たけど、適当に相手して部屋に案内してもらった。
毎日野宿をしていたからいまにもベッドに飛び込みたいプックであったが、お風呂にお湯を溜めて、服を脱ぎ捨ててから。だらしない格好でしばし待ち、待ちきれなくて湯に浸かりながらいっぱいになるのを待つ。
肩まで浸かるとあまりにも気持ちがいいので、そのまま寝落ち。溺れ掛けて、目が覚めていた。
綺麗サッパリになったプックは備え付けのバスローブを羽織ると、窓の傍にあるソファー席に着いて手持ちのお酒をガブガブやっていた。
「あの野郎……あーしには外に出るなと言っておいて、1人でどこに行くんや……」
すると、向かいの宿から出て来たシモンを発見。着替えているところを見ると、お風呂に入ってから出て来たのだろう。
プックはそのことに怒っていたけど、まったりタイムに入っていたからかもう動く気が起きない。ヤケ酒が進んでるよ。
そうしていたらノックの音が響き、プックはいちおう回転式拳銃を握ってドアに向かった。ルームサービスだということがわかると中に招き入れたけど、シモンに言われていたからか警戒は解かない。
従業員が出て行くと、久し振りの手料理にうっとり。いいお酒にも舌鼓を打っていたが、シモンと一緒に飲みたかったと頭に浮かんだ。同時に、1人で遊びに行ったシモンに怒りが湧いていた。
お腹もいっぱい。酒も入っていい気持ちのプックは食事のワゴンを外に出して、ドアの施錠をしたら夢の中へ。久し振りのベッドで泥のように眠るのであった。
翌朝、ドアをドンドンと叩く音で目覚めたプック。何事かと枕の下に隠していた回転式拳銃を握ってドアに近付いた。
それは従業員さん。朝ごはんもお願いしていたのに、プックの返事がなかったから叩く音が大きくなったのだ。
プックは寝すぎたと謝罪してから従業員からワゴンを受け取り、美味しい朝食。ゆっくりと食べていたけど、向かいの宿からシモンが出て来た。
プックはどうしようかと悩み、シモンに遅れると伝えて、シモンもオーケーと手のジェスチャーだけで返してどこかに歩いて行った。
それからおよそ30分後にプックが外に出たら、シモンが大通りの向こう側に立っていた。シモンは指で向かう方向を指示し、道幅が狭くなったところでプックは小走りで隣に移動した。
「待たせてすんまへんな~」
「疲れてるんだから仕方ないって。本当はもう一泊ぐらいさせてやりたいけど、ごめんな。勇者が追い付いてしまう」
シモンがあまりにも優しいから、プックもちょっと顔が赤くなる。しかし、違う理由も頭に浮かんだ。
「昨夜はお楽しみやったから、罪悪感でもあるん?」
「……はい??」
「宿から出たの見ててんで~? 怒らへんから正直に言おうや。娼館? 娼館に行って来たんやろ??」
「行くか! 買い出しと情報収集だよ!!」
「その逆ギレが怪しいねんけど~??」
プック、絶好調。シモンをからかいまくって……というか、1人で遊びに行っていたことをグチグチと責めまくるのであったとさ。




