043 勝利の後
「うおおぉぉ~~~!」
「うわああぁぁ~~~!」
ミノタウロスキングが地響きを立てて仰向きに倒れると、シモンとプックは顔を見合わせて雄叫び。Bランクパーティでも苦戦する迷宮ボスをたった2人で倒せたことが自分たちでも信じられないみたいだ。
その後、勢い余って抱き合ってみたけど、プックのヘルメットがシモンのアゴに入って倒れたので、お互い我に返った。
「つつつ……」
「えろうすんまへん……なんじゃこりゃ~~~!!」
プックは謝ってみたモノの、シモンの隣に落ちている物が目に入って大声を上げた。
「あ、魔石か。驚かせるなよ」
「驚けや! めっちゃデカイやないか! こんなんあーし、見たことないで!?」
「俺、ここのボス、1回倒したことあるし。四層もけっこうデカかったぞ?」
「一緒に驚いてや~」
シモンはこう見えて、Bランクパーティに所属して二層から旅した身。それなりの修羅場を潜って来たから、プックと一緒に驚くことはない。
「それより移動を急ぐぞ。扉が閉まってしまう」
「あ、そやったな……チョイ待ち。プーシー3号の箱、落としてしまってん」
迷宮ボスを倒したらしばらく階層移動ができる扉が開くことは、プックも知っていること。まだ余裕はあるから、シモンも付き合って弾倉を探す。
「うわ……ドロドロや……」
しかし弾倉は、ミノタウロスキングの炎のブレスを浴びてしまったらしく、溶けて形が変形していた。
「ま、もったいないけど、命があっただけましだろ」
「せやな。でも、喰らっていたと思ったら、ゾッとするわ~」
「蒼き群雄の盾役、あの炎の中でも耐えてたぞ?」
「冒険者って、大変な仕事やねんな~」
「いまさら??」
プックは鍛冶師。シモンと出会うまでは迷宮に入るなんて露ほども思っていなかったので、本当にいまさら冒険者を尊敬するのであった。
弾倉はもう使い物にならないけど、プックは記念に収納バックに仕舞い込む。それから早足で奥にある開いたままの扉を潜ると、下り階段がある部屋に入った。
ここでしばし休憩。2人はドサッと座って、水をガブガブ飲む。
「まだ閉まりまへんな~。こんなに長い時間開いてるなら、通り放題ちゃいますん?」
プックが素朴な疑問を口にすると、シモンは頭を横に振った。
「そんな簡単にはいかない。大勢を護衛するには、もっと多い護衛が必要になる」
「あ、そか。罠にモンスターと厳しい道程やもんな。素人に構ってられへんか」
「そうだ。ひとパーティに1人でもしんどいらしいって。商人を護衛する時は、3パーティで5、6人を連れて行くって聞いたな。めちゃくちゃ高い護衛料が掛かるらしい」
「どうりで階層移動するのは、商人か冒険者だけなんや」
雑談しながら疲れが取れたら、銃を軽く整備。プックとしてはサブマシンガンが心配だから一から整備したいが、シモンに止められた。
「ここは小休憩しかしてはいけないって、冒険者のルールなんだ。例外は、死にそうなヤツがいるパーティだけな。そういうパーティのために場所を開けておくんだ」
「ああ~。迷宮ボス、強いもんな。怪我人だらけのパーティがやって来たら、見てられへんわ」
「そういうことだ。回復薬も取られるし」
「そゆこと??」
プックは納得し掛けたけど、シモンの言葉には首を傾げた。強制的に人助けさせられることを拒みたいように聞こえたもん。
プックは「相変わらずケチやな~」とか言っていたけど、シモンは無視して地図を広げる。
「わりと近い場所に安全地帯があるから、そこで休もう。行けるか?」
「もちろんや。怪我ひとつしてへんもん。迷宮に入ってから一度も……こんなんでええんかな~?」
「いいんだよ。薬代浮くし」
「そりゃそうやけどな~」
冒険者は危険な職業。普通は怪我だらけで迷宮を攻略して薬代も嵩むのだから、プックだけじゃなくシモンまで「だいぶ常識から掛け離れてるな」と思いながら重たい腰を上げるのであった。
シモンたちが階段を下りると、また迷宮攻略の開始。シモンは半自動式拳銃でモンスターを倒しているので、プック的には何か気になるが、疲れは溜まっているから安全地帯まで我慢。
安全地帯に着いて食事を食べ始めた頃に、その疑問を聞いてみる。
「なんかモンスター弱なかった? 地下6階ってことは、もっと強くなるんちゃうん?」
「ああ~……ここは地下6階でもあるし、そうでもないんだ」
「はい? なに言ってますん??」
「う~ん……明日驚くのと、いま信じられないの、どっちがいい? 個人的には、明日驚くほうが面白いと思うんだけどな~」
シモンが含みのある言い方をするので、プックはジト目だ。
「シモンはんが楽しみたいだけなら、先に聞きたいわ~」
「いや、俺じゃなくて、プックが楽しめるかと思って」
「あーしが?」
「うん。騙されたと思って、聞かないほうがいいんじゃないかな~?」
「ふ~ん……そんなにオモロイことがあるなら、聞かんとくわ。そのかわり、オモロなかったら殴るで?」
「殴られるぐらいならいま言う……」
「もう聞きませ~ん。はよ食って整備して寝ようや。明日が楽しみやな~」
ちょっとからかおうと思ったことが仇に。シモンはプックのいまのレベルが気になって、この日はなかなか寝付けなかったんだとか。




