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銃の知識ゼロの世界で弾丸補充スキルを授かった冒険者、案の定Bランクパーティにクビにされる~銃を手に入れてから狙撃無双で英雄と呼ばれる件~  作者: ma-no
一章 出会い

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034 五層との別れ


 シモンが旅立つことをイレーナに伝えた翌日は、2人は急いで身支度。シモンは借家の契約を解除して、片付けなんかの違約金も渋々払う。それが終わったら旅に必要な物の買い出しだ。

 プックは持ち出す荷物が多いので、借家で鍛冶道具やシモンの荷物もまとめる係。シモンの洗濯物は捨てようかどうか悩んでる。プラス、家族への手紙も書いていた。


 シモンが戻ると、新しく買い足した、物が大量に入るリュック型の収納バッグにプックがまとめた荷物を押し込み、それらを持って借家を出た。

 借家のカギを返したら2人で冒険者ギルドに顔を出し、手紙を預ける。どちらも家族宛てだけど、勇者パーティに睨まれているとは書けないのか「元気でやっている」というような当たり(さわ)りのない文章みたいだ。


 ギルド嬢に手紙代を払ったら、シモンの行き付けの酒場にギルマスが訪ねる旨を伝えられた。今日はブッチできそうにない。

 そのことをプックにからかわれて歩いていたら、酒場に到着。イレーナとは昨日別れの挨拶をしていたので、こちらにも「昨日の涙を返せ」とからかわれていた。


「てか、まだ働いてるのか? 早く町を出ろよ」

「まだ3日あるんでしょ? だからあなたを見送ってから出ようと思って」

「それは嬉しいけど……絶対、明日出ろよ? 疎開先では、勇者パーティが五層から離れるまで家から出るなよ?」

「も~う、心配し過ぎ。領主様がお金を出してくれるから、みんなちょっとした旅行気分よ?」

「マジで勇者パーティ、ヤバイから!」


 シモンが心配していても、イレーナはケラケラ笑っているので伝わっているかどうかわからない。徐々に思い出話に変わり話に花を咲かせていたら、ギルマスがやって来たからストップだ。


「なんか用か?」

「お前な~。最後まで俺のこと邪険にするなよ~」


 イレーナとプックが「社会不適合者」ってヒソヒソ喋っているので、シモンは言い訳。ギルマスには蒼き群雄を辞めた時に、実力を疑われまくったから好きになれないんだとか。


「いや、ほら? お前って、王様からも疑われていたから……」

「もうその話はいい。用件を言えよ」

「ああ。勇者パーティを後退させて時間を作った功績で、領主様から報奨金が出た。あとは俺からのはなむけだ」


 ギルマスは大金の入った革袋と書類をテーブルに乗せた。


「こんなに貰っていいのか?」

「そりゃいつ殺されるかわからないからな。領主様もかわいそうに思ったんだろ」

「報奨金じゃなくて見舞い金だろ。チッ……この書類は?」

「お前は俺の密偵ってことにしておいた。どうせ六層に行くつもりだろ? そっちの門番に見せたら、お前が通ったことは無かったことにしてくれる。町とか冒険者ギルドに入ったとしてもな。六層の地図もサービスだ」

「おお~。助かる~。でも、バレてたのか」

「銀行部門で騒いでたら、嫌でも耳に入るっつうの」


 これもギルマスは箝口令を敷いてくれたので、珍しくシモンも感謝。これまた珍しくギルマスも誘って、五層最後の夜を酒を飲みながら楽しく過ごすのであった……



「イレーナ……本当に世話になったな」

「ええ……元気でね。つまらないいざこざでは、絶対に死んじゃダメだからね」

「ああ。必ず生きて蒼き群雄に会う」


 翌日は、涙の別れ。イレーナはシモンを抱き締めたあとは、プックにも抱きついた。


「危ないことはしちゃダメよ? もしもの時は、この人を(おとり)にして逃げちゃって」

「あはは。シモンはんなら、体を張ってあーしのこと逃がしてくれるやろ」

「そうね……あと、彼のことお願いね。末永く……」

「ちょっ、イレーナはん、あーしはそんな感情、持ち合わせてへんって~」

「フフフ。どうでしょうね」


 このやり取りはシモンに聞こえていなかったので、プックが困っているとしかわからない。実際問題プックはシモンのことを、ちょっといいとしか思っていないので、イレーナの言葉は勇み足だ。

 その渦中のシモンは、マスターに「娘を泣かせたな?」と力いっぱい握手されていたけど、そろそろお別れだ。


「はい。お弁当。いってらっしゃい」

「ああ。行ってくる。勇者が真っ当になって邪神を倒して俺も殺されなかったら、顔を見せに来るよ」

「あはは。そこは蒼き群雄と一緒に両方倒すと言いなさいよ」

「フッ……イレーナには勝てないな。両方ブッ倒してやる!!」

「「「「「あははははは」」」」」


 シモンが息巻いて拳を突き上げると、見送りに来てくれた人たちから笑いが起こった。


「じゃあ、またな!」

「ほな、さいなら~」

「「「「「いってらっしゃ~い」」」」」


 こうしてシモンとプックは、イレーナたちに見送られて迷宮攻略に向かうのであった……





 四層の南部にある町、サイスト……


「「「「「ギャハハハハ」」」」」


 そこでは勇者パーティが傍若無人にケモ耳の女性を侍らせていた。


 ここは勇者パーティがあっという間に去ってくれたから被害は少なかったのだが、シモンの嘘で割りを喰ってかわいそうなことに。

 女性を疎開させた町に急に現れたのだから、町長は女性に頭を下げて、極力被害を減らせるようにお願いしてこのようになったのだ。


 その勇者パーティは最近ご無沙汰だったのか、三日三晩の酒池肉林を行い、その合間に銃の試し撃ちをしていた。


「ぜんぜん的に当たらないな~」

「銃って、けっこう難しかったんだな」


 勇者パーティも、元は一般的な大学生や社会人。試し撃ちは木の的に向けて撃ち、上手くなったら動く的に変えようとしていた。


「チッ……もう無くなった」

「勇者様が外し過ぎなんだよ」

「勇者様言うな。元はフリーターだぞ~?」

「噓つけ。闇バイトしてただろ」

「「「「「ギャハハハハ」」」」」


 しかし、弾切れに。それでも異世界転生して浮かれているから、それも面白いらしい。


「しゃあねぇ。そろそろ弾を仕入れに行くか」

「だな。弾を手に入れたら……ムフフ」

「ちょうどいい獣がいるもんな~」

「ケモ耳だけどな……一緒か」

「ちげぇねぇ」

「「「「「ギャハハハハ」」」」」


 弾が無ければ人間狩りもできない。勇者パーティは楽しみを増やすために、数日掛けてシモンに教えてもらった迷宮に向かう。

 シモンから迷宮の地図も貰っていたから、破竹の勢いで踏破。隠し階段をすぐに見付け、さらに下へ向かう隠し階段を探していた……


「あの野郎……俺たちのことを騙しやがったな……」


 だがしかし、聞いていた話と違う。どこを探しても隠し階段なんてなかったから勇者パーティは激怒する。


「ブッ殺してやる! 野郎ども、五層に戻るぞ!!」

「「「「おお!!」」」」


 こうして勇者パーティは怒りのままに来た道を戻り、シモンと会ってから10日後に五層に戻ったのであった……


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